潰される顔
アリスに鬼電をした後メールを送り部屋を出る。
向かう所は売店だ。
タバコももう少なく、ぶらぶら外に出て行く。
太陽が沈みかけている所を見ると夕方のようだ。
西側に沈んでいる所を見ると地球の自転とほぼ同じのようだ。
脱線しすぎなマーシャの説明のお陰で何処に売店があるのか分からず、兵舎の付近にあるだろうと思い歩いて行く。
暫く近づくとケモミミや、ドワーフの様な立派な上半身から繰り出される貧弱な下半身を携えた人や、足が脚になっている馬と人の間の子も居たり、脚が足になっている人が馬に化けようと失敗した人も居た。
もちろん人間もだ。
「すみません、売店って何処に有りますか?」
図体なら負けない体だ、恐れずに物を言う。
「売店か?...何を買うんだ?」
どこから声を出しているか分からない馬人間が答えた。
「タバコを買おうと」
「付いて来い」
手招きをされ兵舎に近づくと此処で待っていろと言われた。
暫く待つと馬人間が出てきて袋一杯に刻まれた葉っぱを持ってくる。
「ほら、やるよ」
自分で巻くのが普通だと思い受け取ろうとし近づくと顔に拳が飛んできた。
目測3メートルの馬人間から放たれる拳は、改造された警備員の反射神経を凌駕する速度で顔に唸りを上げ迫る。
笑顔で受けている顔に思い切り入り顎を砕かれ鼻をも潰していく。
強化された体を物ともせず後ろに吹き飛ばされ強かに砂の上を転げる。
転げ回り気絶をすると思ったが、強化された体は気絶を許さず、激痛の信号を脳へと送る。
「ひぃひゃひ!ひひゃいよ!」
四つん這いで起き上がり下を向くとおびただしい量の血が鼻から流れる。
ドッドッドッドと地面を噛む蹄の音が鳴り、鳴る方向を見向きもせずに両手両足に力を入れ四メートルほど跳ねる。
『Emergency!Emergency!友軍からの攻撃です!裂傷多数、口内の歯が砕けております、至急メディカルステーションに行ってください、MPに連絡しますか?』
「お?まだそんなに動けんのか?」
わらわらと人が集まって来て皆喧々囂々と叫ぶ。
「殺れ!殺せ!」
「喧嘩か!胴元は何処だ!」
「やっちゃえバルグ!」
痛え!痛えよ!糞!
ブレインがアラームを荒げ、人も喚き、馬人間も嘶いている。
「ほひゃ!ひょっひょひゃって!」
転げるように動き跳躍し輪の外に飛び出し走って逃げた。
大粒のナミダが溢れ転げるように兵舎を後にした。
警備員の建物に戻り、溢れる血もそのままに部屋に飛び込む。
「へひゃ!へひひゃひゅひぇんひゃーっひぇひょほ?」
『鎮痛剤を投与しています、鎮痛剤を投与しています、鎮痛剤を投与しています』
痛みが和らぐが、鈍痛が収まらずブレインにずっと打って貰っていた。
ただ事ではない事を察知したアリスは部屋から出てきて少し青ざめ何処かに電話を掛ける。
「直ぐに医療班が来ます!それまで耐えてください!」
「ひひゃいひょ!ひっやひひょ!」