大佐へ
時刻はもう夕方、到着が、昼前だったからそろそろ帰りたい時刻だ。
『勝谷、今何処にいる?』
『現在モスクの上でディーノ達を待っている所だ』
『モスクって...バチが当たっても知らんぞ』
『俺は仏教だ、でそっちは何処に?』
『今城壁から外に出た所だ、お前のことは手配はまだされていない、すぐにでも出れるぞ』
『了解』
『気をつけてな、アウト』
俺はモスクから飛び降り、地を駆け城壁に着いた。
相も変わらず列を抜き兵士に挨拶をする。
無言で手形を見せると兵士が退いたのでそのまま外に出る。
『外に出た、合流する』
『了解』
「待たせた」
「おう、全然良いぜ、どうだ?もう怒ってねえか?」
「ああ、スッキリした」
そう言いながら後ろに乗り込もうとすると既に両サイドベルガとベルタナに座られており、仕方なく車の上に登りキューポラを開け、乗り込む。
車の上に乗った時にグラグラと車が揺れたので、ベルガが少し悲鳴を上げた。
「うっし! 乗ったぞ、出せ」
そう言うと車がゆっくり発進した。
暫く走るとヘッドライトが点灯し、俺はキューポラから立ち上がり目を暗視モードに切り替え外を眺める。
「なんか見えるか?」
窓を開けタバコを吸っているディーノが聞いてくる。
「ちょいちょいゴブリンが見えるが、仕方ねえのかこれ?」
「しゃあねぇよ、基地の周囲は俺達が狩っても良いが、このあたりはまだこの街の管轄だ」
「兄ちゃんアタシにも見せてくれ!」
「ベルタナっ!止めなさい、お仕事のじゃまになりますよ!」
「いや、良いよ来な」
そう言ってベルタナの手を取りキューポラ所に立たせしっかり立っていることを伝える。
「よっし!じゃあ、後は頼む俺は休憩するわ」
そう言って俺はハーネスをベルタナに付け中に戻り窓を開けタバコに火を着けた。
それを物珍しそうにベルガが見る。
「ガキが居ようが居まいがタバコは止めねえぞ?」
外に出ていたので吸えなかったタバコを胸いっぱい吸い込む。
「いえ、違いますよ....」
「何だよ?...家の床を殴ったのが悪かったのか?」
そう言うとビクリとベルガ震えアリスが怒る。
「斎藤様凄むのは止めて下さい」
俺も普通の人から見ると十分化物か。
「悪かった、それは謝る、これからは仲間に成るんだ、悪いことをした」
そうして俺は頭を下げた。
「いえ、あのままスラムに居ても、私たちは身売りをするのは決まっていたので、私達としては、ありがたいです」
そう言ってお見合いのようにベルガが頭を下げる。
ふむ、未亡人も悪くないか...光源氏計画も遂行できるしな。
若干トチ狂った考えをしながらベルガと話していると段々と涙が出てきた。
ベルガ達は戦争被害者だった。
俺達が着た頃に徴兵が有ったらしい。
その時に、ベルガの旦那さんは、金を稼いでくると言ってもともと猟師だったようで、斥候部隊に志願したようだ。
旦那さんは強かったようで、袋いっぱいの敵の耳を持っていた。
その耳で報奨金を貰っていたようだが、ぱったりと手紙も報奨金も貰えなくなり、毎日城に向かったそうだ。
そして、旦那さんの友人が傷痍軍人として街に帰ってくる。
そこで、旦那さんの弦の切れた弓を渡され初めて死んだことが分かったようだ。
その傷痍軍人は、精神的に参ってたのだろう。旦那とベルガ、ベルタナの事を謝って次の日には首を吊っていた。
お金もなくなり、住む所を追い出された後は、スラムで生活し、病気にも掛かり金がないから病院にも行けない、どうするか?と言った所でベルタナが、俺達の金を奪う事を決意し、俺達を襲ったようだ。
ベルタナ曰く、アリスは見える所に金貨をぶら下げていたからアタシが取らなくても他のやつに取られていたとかなんとか。
そうして暫くすると、FOBが見えてくる。
「っしゃあ!やっと着いた、勝谷、泣き顔見られたら俺までバカにされるからさっさと泣き止め」
「だっでよお!だんなざんがなぐなっで、ぞのゆうじんもなぐがっだんだろ?だずげないど!おで!おでば!」
そういって、俺は泣きながら心のなかで未亡人や、光源氏計画を捨てた。
門に着き、中に入る。
びっしゃびしゃに顔を濡らした状態で車から降りるとカミラが歩いてくる。
「おい! 喧嘩して負けたのか!? 貸出用の腕壊してないだろうな!」
もう一端の整備員だ、まず俺のボコボコの顔ではなく、腕を見る。
「お前オーバードライブ入れたのか!? 壊れたらどう済んだ! 整備してくるから外すぞ」
そう言って両腕をもぎ取られカミラがディーノも一緒に引っ張って行った。
「勝谷君....この人達は?」
すこし眉を引き付かせているマーシャも居た。
「で、この方々を連れて行くと...褒められた行動ではないね」
そう言って場所を司令室に移し話す。
「いや、本当に申し訳ないと思っています....はい」
そうして、暫く話ているとメディカルセンターに行っていたベルガとベルタナが来た。
「ベルガの病気は薬を飲んだら直ぐに治るやつだ、ベルタナは、健康状態良好だった...保険証無いから勝谷、後で、請求書送るから耳揃えてきっちり返せよ?」
そう言って、ミラーが部屋から出ていった。
「まあ連れてきたのは仕方ないか、どうする?給仕として、ここで働く?それとも、勝谷に着いて行って給仕する?」
マーシャが、ベルガに聞くと着いていくと即答した。
「分かった、勝谷君の階級を上げるよ、階級は、大佐で良いかな?ああ、驚かなくて良いよ、無線に切り替えるね、アリスも聞いてくれ」
『よし、良いかな、君には現地で兵士を補給したり、DWASのPMCを何人か連れて行ってもらう事が上で決まった、それは良いね? あと、大佐になると、銃器をこの世界の人々に使わせる事もできるけど、絶対に考えて渡してね、何度か部下に撃たれた人も居るんだ、それと、君は知っていると思うけど、向こうで住人に対しても懐柔活動を行なって欲しい、アメリカのグリーンベレーみたいなことだよ、最後に、これは忠告だけど、国の軍隊を雇うなら絶対に気をつけてね、此処みたいに雑兵の塊になっちゃうからね』
そう言って一気に話し無線を切った。
「じゃあ分かったね?僕はまだ仕事があるから、さぁさぁ出ていった」
そう言って僕らを追い出した。
外に出ると、アリスが言う。
「部屋は一時的に私達の部屋で生活してもらう事になったようです、空いている部屋が1つ有るのでそこに簡易ベッドを敷いてもらう事になりました」
「へ?物置は?」
部屋に戻ると、部屋の前に簡易ベッドと綺麗にパッケージされた服が置かれており、それを拾う。
ブレイン、開けてくれ。
『了解』
すると扉のロックが降り、扉が開く。
中に入ると、ベルガとベルタナが感嘆の声を上げた。
中を進み、リビングを抜け物置だった所に立つと扉が開く。
「物置と言って本当に入らなかった時は面白かったですよ」
「うるせえ、この部屋でいいか?」
中は綺麗に何もなく、本当に綺麗だった。
「このような部屋を本当にお借りしても?」
ベルガが心配そうに聞いてくる。
「良いぞ、俺はさっき合ったベッドで寝ているから何か合ったら聞いてくれ」
そう言って便所の使い方や、風呂の使い方、キッチンの使い方を説明した。
何時も常備しているレーションを開け俺は机に座る。
「アリスは、ベルガとベルタナに施設を説明してきてくれ、俺はもう疲れた、寝る」
そう言い俺は飯を食べ風呂に入りベッドに寝転ぶ。
「何が正解だったんだろうな...」
そう言いながら俺は眠りについた。




