第七十二話 れっどどらごん
「そのドラゴンの子供を売ってちょうだい」
私とカミーナは、急ぎサーカス団のところへと戻り、団長にドラゴンの子供の出自について、根掘り葉掘り聞いてみた。
しかし、彼らは一向に口を割らない。
しかも、営業妨害ですか、なんて言い出したので冒頭の言葉が飛び出した。
「さすがにこの国の姫様とて、これだけの額は出せますまい」
そういって、団長が、かなりの額を吹っ掛けてきた。
額的には私のお小遣いの、十年分くらいに相当する。
さすがに、それは高すぎるのでは、なんてカミーナも援護してくれるが、団長は一歩も譲らない。
売るつもりが元々ないのかもしれない。
テントの端の方では子ドラゴンがゲージに入れられて、こちらの方を心配そうに見ている。
私は、その子ドラゴンに笑いかけた。
「わかったわ。その額支払うわ」
えっ! なんてサーカス団の連中が驚いている。隣のカミーナもだ。
「ドラゴンなんてどうやって育てるんですか! しかも、あれだけの大金。さすがに財務大臣も国庫支出を認めてくれとは思えません」
カミーナが、心配そうに横から言葉をはさんだ。
「大丈夫よ。つてならあるわ。・・・あなたたち、少しお待ちなさい、今からお金を工面してくるから!」
ぽかーんとしているサーカス団の連中を残し、私たちはとりあえず、ゼクスのところへと向かった。
やはり、こういった商いに関することなら、ゼクスに泣きつくのが手っ取り早い。
事情を話すと、なるほど、とは言ってくれたが、額については、ポケットマネーでほいと出すわけにはいかないと言われた。
じゃ、じゃあ、どうすれば?
そんな私の心の声が届いたのか、ゼクスが取引を持ちかけてきた。
「ですが、前にマオール様からソニヤ姫へとプレゼントされたペンダント。あれを私にいただければ、今、おっしゃった額を工面致します」
う、うう。
魔王様からもらった、せっかくのプレゼントだけど。
・・・だけど、だけど子ドラゴンを、助け出したい!
私は、決心すると首を縦にふった。
・・・そして、私たちは急ぎサーカスのテントに戻ってきた。
「ここにあなたが、おっしゃった額を用意いたしました。これで、文句はないでしょ」
ゼクスに用意してもらった金貨の山を見てサーカス団の面々も、驚いた顔をしている。
団長は、私の顔を油断なく見て、頷いた。
「じゃあ、ドラゴンの子供は、いただいていきますよ。おいで。もう大丈夫よ!」
私は、檻から出されこちらをじっと見ている、レッドドラゴンの子供に近づいた。すると、ドラゴンが、目を細めて足にまとわりつく。
お、かわいいじゃないか。
そんなことを思っていると、突然、テントの外から血相を変えた団員と思わしき男が駆け込んできた。
「た、大変です団長! そ、外にあれが!」
どうした! 何て言って団長が外に飛び出たので私たちも外にでる。
そこには、体長が、二十メートルは越えようかという巨大な体躯を誇る、赤いゴツゴツした皮膚のドラゴンが、翼を広げてこちらをへいげいしていた。
「小さき者共よ。我の子を盗んだ罪万死に値する」
私たちは、いきなり死刑判決を受けました。




