第六話 きんじられたであい
あれからもう一ヶ月が過ぎた。
今は王都の城に引きこもっている。
俺が襲われた城は、国境沿いの城だったらしく、あそこが王都ではなかったらしい。
だから、城下町がやけにこじんまりとしており、庭園が広々としていたんだな、と納得した。
俺たちが城内に火を放ったために、城になだれ込んでいた魔王軍たちもだいぶ混乱してしまい、親父たちの騎士団が防備を整える時間が稼げたらしい。
父からの手紙でえらく誉められていた。
そして、今は戦線が膠着状態に陥っているらしい。
シロット王子は相変わらず人質らしいが、風の便りで元気だと知った。
がんばってくれ。
俺はそう心の中で祈りながら、クッキーを一つ頬張った。
うまい。
最近、城から抜け出すコツを覚えたので、変装して、ちょくちょくと買い出しにでて、お菓子なんかを調達している。
やっぱり、自由な時間も作らないとな!
しかし、自分のこのドレス姿はなんとかならんかなー、とスカートのすそを掴みながら思う。
いつもこんな風に着飾っていると、さすがに疲れる。
まぁ、毎日のように社交の会議に出ているから仕方がないんだが。
さて、そろそろ時間か。
俺は重い腰をあげて、部屋を出て馬車に乗り込む。
今日は父である国王が、一次帰還する日だ。
俺は儀礼上、王都の城門にて、出迎えなければならない。
めんどうだな。
城門にてしばらく待っていると、白馬に乗った親父が現れた。
あれが、国王か。
実はゲームではCGがなかったので、実物(?)を見るのはこれがはじめてだ。
国王は立派な白い髭をたくわえている偉丈夫だ。
こんなごつい親父からソニヤ姫のような娘が生まれるのは、さすがゲーム、としか言いようがない。
親父が馬から降りてこちらに歩いてきたので、声をかける。
「陛下。ご無事にお戻りくださったこと、心よりお喜び申し上げます」
「うむ。ソニヤこそ、ご苦労であった。そなたの働きあってこそ、今回の防衛がうまくいった。わしとしては、お主のような英明な娘がおって、鼻が高いぞ!」
後ろの騎士団の連中が歓声をあげる。
とりあえず、俺たちは、同じ馬車に乗って城に向かった。
道中適当に最近の話をする。
元々、この父娘は、あまり一緒に生活をしていないらしい。
まぁ、共通の話題が少ないのは、俺としてはたいへん助かる。
子供の頃の話とかふられても困るしな。
たわいもなくおしゃべりをしていて、ふと、馬車の外の沿道を見た。
国王の帰還ということで、パレードを一目みようと住民たちが、おしあいへしあいしているが、俺の目には、その中のたった一人にしか、目がいかなかった。
なぜやつがここにいる!
あの黒髪。長身。
そして、ムダにイケメンな風貌に、鋭い眼光。
そこには、エロゲー『鬼畜陵辱姫』の主人公。魔王その人が馬車を見つめて立っていた。