表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/87

第四話 だっしゅつしまーす

「シロット殿下は、リードがお上手ですね」


俺は小声で王子の耳元にささやきかけた。

人生はじめてのダンスをうまく踊れるか心配していた俺だが、王子がうまいことリードしてくれており、醜態をさらさずにすんでいる。

一応、俺にも武術の心得があるが、やはり、身体が違うので、上手く動かしがたい。

それでも、ソニヤ姫の身体は、柔軟なので、動くのに支障はない。


しかしこの王子、ダンスはうまいな。

だが、ゲーム中での戦闘はからきし素人だった。

当たり前と言えば当たり前か。


「ふー、少し疲れましたので、少々、下がらせていただきます」


俺は計画を始動するために王子にお別れを告げる。

昨晩一日考えて、思い出せるだけの描写を全て、思い出して立案した計画だ。

ゲーム内での描写を利用して、脱出に使う。

乾坤一擲の作戦だ。


「では、私もご一緒「あ、もうしわけございません。こちらの控えの間は男子禁制でございますので、ホールにてお待ちいただければ幸いに存じます」


そういって、俺は控えの間に下がった。

ドレスを脱ぐや、トイレと偽って小部屋へと隠れた。

そして事前に用意しておいたメイド服に着替えた。これで遠目にはソニヤ姫だとは気づかれないだろう。


そして、小部屋を出て、ダンスホールを抜ける。


まぁ、途中で仮に見つけられても、ゲストを驚かせるためのサプライズだ、とでも言ってごまかそう。

また、カミーナあたりに白い目で見られそうだが。


しばらくすると、ソニヤ姫が見当たらない、ということで、少々騒ぎになった。

俺は、顔を臥せながら、ワイン庫で空き瓶を片付けたりしてやり過ごした。


空き瓶を取りにホールへと戻る。

そろそろばれるかな、と思った矢先、ホールの入り口に兵士が駆け込んできた。


「ま、魔王軍の襲撃です! 皆様、この城は長くはもちません! お逃げください!」


皆、我先にと地下道の脱出路へと殺到する。

衛兵たちは、一部はVIPを護衛し、一部は城の護りへと向かった。

その中で、ソニヤ姫に仕える、カミーナたち召し使いの一団は、危険を省みずホールに残って、ソニヤ姫を探していた。


「私はここです、カミーナ」


俺は、名乗り出た。


「ソ、ソニヤ様! 探しましたよ! しかも、その格好は・・・。そ、それよりも魔王軍です! ここは危険です、早く地下道へ」


「いえ、地下道は、すでに魔王軍におさえられています。そちらにはむかいません」


「で、ではどうするのです!」


カミーナの顔に困惑が広がる。


「衛兵たちに、魔王軍を城内に引き入れた後、各所に火を放つように指示をなさい!」


「え!?」


「そして、その混乱に乗じて、南の城門を強行突破して、林に逃げ込みます。うまくすれば、近隣の城まで逃げられます!」


そう。これしかない。

ゲーム内で一部の敵兵士と召し使いが南の林へと逃走した、という記述があった。

俺(魔王)は捨て置けと部下に命じて、姫とお楽しみを繰り広げるわけだが、俺の今の格好は召し使いと同じ。


ゲームで成功した脱出行に、俺も混ぜてもらうことにした。


魔王軍や内通者も、まさかこんな形で姫が逃げ出すとは思っていないだろう。


衛兵(ガード)たちよ! ここが、あなたたちの忠誠を示す好機です! 私に従いなさい!」


俺は力の限り、兵士たちを鼓舞した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ