第三十九話 がくしさまのおしごと
「論文ですか?」
「はい。論文です」
私の質問にゼクスが即答する。
ゼクスと二人、王立大学校の校舎内を歩いている。
この前、新校舎竣工に立ち会った関係で、何か大学校関係でイベントがある度に呼ばれるようになってしまった。
やはり、セレモニーには、華が必要らしい。その気持ちはわからんでもない。
「しかしなぜ、その論文を私たちも書く、ということになったのでしょうか?」
「僕たち、というよりは広く一般に、ですね。ただ、文字を書ける層は、貴族層に偏っていますので、僕たちが口コミで広げた方が執筆者はあつまるかと」
なんていうことはない、王立大学校創立何十周年かを記念して、論文集と言う名の同人誌を作るから、その原稿募集に一役かってくれ、というものだった。
「それくらいならばお安いご用です!」
そういって、安請け合いしたは良いが、回りは皆忙しくて、執筆をお願いできるような状況ではない。
不覚!
仕方がないので、自分で原稿を書くことにした。
うーん、一体、何を書くべきか。
とりあえず、私に無理難題? を吹っ掛けてきたゼクスに相談してみる。
「なんでもいいのですよ。歴史の紹介でも良いですし、詩でも良いですし。お好きなものをお書きください。あ、僕は旅行記なんかが好きかな」
何も、お前の趣味を聞いてはいない。
しかし、そうか。なんでもいいのか。
自室に戻った私は原稿とにらめっこをする。
何か随筆でも書こうかと思っていたら、男どもに色々と襲われた過去のことを思い出した。
なんだか、ムカッ腹が立ってきたので、そも、人権とは何かについて書いてやろうかと思った。
私のようなか弱い女の子の人権こそ、最大限に守る必要がある、神が与えたもうた責務である、と。
なぜならば、一人の女の子の損失は全人類の損失だからである、うんぬん。
さすがに、神様関係をバカにした箇所があると、後で教会から目をつけられて、火炙りとかにされる可能性もゼロでないので、慎重に書く。
あとは、自分の仕事を減らすために、議会や、裁判所などの設置の必要性について、三権分立とともに書いておく。
利益は私に、仕事は外に。
ふー、なんだか、書きたいことを書いてスッキリした。
しかし、改めて読み直してみると、私の原稿、小学生の感想文みたいだな。
ちょっと幼い感じだ。
ちょっと恥ずかしいからペンネームを使おう。うん。
名前は、そうだな・・・。
私は前世? での名前で署名した。一応これでも学士様が書いた論文だぞ。ショボい大学だがな!
ひとしきり書きなぐったのでお腹が空いた。
隠しておいたチーズをおつまみに、ワインを飲んだ。
ちょっと文化的な活動をした気分になった。




