第三話 はくばのおうじさま?
「ソニヤ姫、お久しぶりです」
俺の前で、線が細い若い男が跪き、手の甲にキスをしてきた。
あー、なんか変な気分だな。
若い男が顔をあげ、目が合う。
しかし、この男あれだ。
ゲームで、俺(魔王)に最後まで抵抗していた男だったんだな。
泣き叫びながら、剣を振り回して姫を救おうとした健気な男。
まぁ、ゲーム中では、一瞬のうちに魔王様に駆逐されてしまったがな。
てっきり、衛兵か何かだと勘違いしていたが、隣国の王子様だったのか。
やっぱりゲーム内のどうでもいいNPCは、あまり良い設定はもらえないよな。
むしろ、顔立ちは、魔王の方が良い。
主人公の分身だから、イケメンに設定されているのだ。
それに引き換えると、この王子は、あっさりと殺される役どころなので、適当な顔立ちだ。
かわいそうに。
「シロット殿下。お久しゅうございます」
カミーナが念のためといって、昨日、関係者について一通り教えてくれた。
俺としては大助かりだった。
NPCたちの名前なんてぜんぜん知らねーよ。
「ソニヤ姫こそ、相変わらずお美しい」
さわやかな笑顔でシロット王子は笑いかけてきた。
俺は、微笑を浮かべながら、旅の苦労をねぎらった。
「今宵、ささやかな宴を用意させていただいております。明日の婚約記念パーティーでは、私たちは忙しく働くことになろうかと思いますので、今日は、一晩ごゆっくりしていただきたいと存じます」
明日は、まさに、生きるか死ぬかの瀬戸際だ。
今日くらいは、ゆっくりして英気を養わないと。
しかし、この王子。俺の胸ばかり見ているな。
女の身になって気付いたが、相手の視線は、結構わかるもんだな。
あまり、良い気分ではないが。
・・・さて、王子とは、宴の時間まではお別れして湯浴みの時間だ。
カミーナの手を借りて、衣服を脱いで、自分の身体を隅々まで点検する。
まさに、CGどおりの肢体だ。
着やせするタイプで、脱ぐとすごいんです! を地でいくプロポーション。
ロリ顔巨乳。
まさに、男に媚びるための外見だ。
ゲームで襲う分には楽しいが、襲われる分には悲惨だ。
そこでふと思ったんだが、例の顔をやってみるか。
カミーナに声をかけ、考え事をしたいので、一人にして欲しい旨を伝え、風呂場の鏡の前に一人立つ。
そして、おもむろに、両手にピースサインをして、あへ顔をしてみた。
・・・
まさにCGどおりだ。。。
いやだ。
絶対に避ける。。。
その思いを強固にして、肩まで風呂に浸かった。
その後、夕食の宴にて、王子様一行を歓待した。
愛想笑いを浮かべながら、食事をする。お肉が柔らかくうまい。良い肉使ってんな。
「姫、あなたへの詩を用意して参りました。ぜひとも、今日の夜に、あなたへと披露する二人だけのお時間をいただければ」
俺の方をみながら王子が語りかけてくる。
ちょくちょくドレスの胸の谷間を見ているので下心がばればれだ。
「申し訳ございません。今日は気分が優れないので、下がらせていただきます」
冷徹に俺は言い放った。