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第二話 ふぁーすと あたっく ふぁーすと きる

「今日の予定は?」


「はい。午前中は、職能組合(ギルド)の新店舗落成式への出席。午後は王立御苑での公爵様主催の立食パーティーへの参加となっております」


「そういえば、お父様はどちらかしら」


「? 陛下は騎士団とともに、国境への視察に赴かれておりますが?」


何を聞いているのだという顔で、使用人のカミーナ(フリフリのメイド服を着込んでいる)が呆れたような口調で教えてくれる。


俺としてはゲーム内でのソニヤ姫の口調を真似るので一杯一杯だ。

あまりうまく情報が聞けないことは、この際あきらめる。


そういえば、ゲーム内で城を襲ったときに、そんな設定が説明されていたのを思い出した。


騎士団がいないがために、城の防備が薄く、簡単に城が落ちたのだ。

そして、ソニヤ姫は哀れ、虜囚の身に。

ん? もしかして、襲撃ってもうすぐじゃないか?


たしか、もう一つイベントがあったはずだが。。。


そんな喉元に何かが引っかかった気持ちでいると、廊下の向こうから小太りの初老の小男が走ってきた。

その顔に見覚えがあった。


この国の宰相だ。

ゲームでは魔王である主人公(俺)をこの国に手引きした張本人だ。


ちなみに、こいつ専用のイベントもあり、魔王がいない隙にソニヤ姫にちょっかいをかけ、陵辱CGをプレイヤーにくれるという、美味しい役どころだ。

だが、俺はすでにこいつが自由に動き回っていると危険だということを認識している。


「宰相を牢屋に! こやつは、私を昨日押し倒したわ!」


近くの衛兵たちが、ぎょっとしている。

無理もない。


「ひ、姫様! 何をおっしゃるのです!」


宰相が、顔を真っ赤にして、声をひきつらせている。


俺は努めて低い声で告げた。


「申し開きは父上が帰ってきた後、法廷にて聞こう。引っ立てよ!」


「はっ!」


無罪を訴えている宰相を衛兵たちが連れていった。

やはり、宰相と言えども、王族の威光にはかなわないみたいだ。


まぁ、もし、本当にこの世界が、ゲームと違うパラレルワールドで、無罪だったのならば、まぁ、俺(ソニヤ姫)の胸くらい揉ませてやるか。


俺はとりあえず宰相を、冤罪で無力化させることに成功したので、ほっと胸をなでおろした。

やはり、戦闘は先手必勝(ファーストアタックファーストキル)だな。


さて、次に考えないといけないのは魔王軍の襲撃タイミングだが、ゲームではたしか、夜半過ぎに地下道を通って侵入したはずだ。

そして、内部と外部の軍勢とが呼応して、一瞬で城を落としたのだ。


まぁ、エロゲーで遊ぶのに最初に、細かい設定なんてどうでもいいからな!


だが、守る立場としてはいかに逃げるかを考えないといけない。


今のうちに逃げるか?


だが、立場上いきなり消えるのも不自然だ。

そして、もしかしたら、宰相以外にも内通者がいる可能性もある。


少人数でお忍びで逃げていて、つかまったら、その時点でアウトだ。


そう考えると逃げる算段は、ぎりぎりまで隠さないといけない。

混乱している状況でのみ活路が開かれる、と思う。


・・・あ、思い出した。

襲撃時には、姫様たちはダンスパーティー後で、みんな酔いつぶれていたはずだ。

たぶん、宰相からの情報だったんだろうな。


「カミーナ? そういえば、私の婚約を記念したダンスパーティーはいつだったかしら?」


えっ? と非情に困惑した顔を浮かべたカミーナが俺を一瞥した。

そんな目はよせ。


「ソニヤ様、大丈夫ですか? 明日の夜でございますよ。姫様が主役なのですから、もっとしっかりなさってください!」


カミーナがため息をついている。


だが、俺には素晴らしい情報だ。

そうか。明日がXデーか。


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