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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

弱かったオレはもう消えた

作者: TITAN

 時間が空いてしまいました。

 ごめんなさい......。最近謝ってばっかです。

 ボンッ!

 

 「うわぁっ!!」


 魔法の製作中に魔法が爆発した。うーん......合ってると思うんだけどなぁ......。


 「おーい、クロス。もーそろそろ時間だぞー」

 「え!? あっ本当だ! 大変だ――」


 ボボボボン!!


 「うわあああああああ......!!」


▼▼▼


 「............うん?」


 ここは......。保健室か。


 「起きたならさっさと出ていけ」

 「......はい」


 ボクは保健室から出て廊下を歩いた。


 ボクの名前はクロス。クロス·ソメル。十七歳。ここ魔術師(ウィザード)育成学校魔法科の二年生で――Eクラスだ。

 魔術師育成学校っていうのはその名の通り魔術師を育成する学校。一学年はA-EクラスまであってEクラスは一番下。しかも魔術師になる資格を教師から直接指導してもらえるのはA、B、Cの三つだ。

 

 つまり、ボクは魔術師になれないと言っても過言ではない。だから魔法で単位を取るしかない。

 

 魔術師は体内の魔力で魔術を使うけれど、魔力が無くなってしまうと危ない。そのために生まれたのが魔法。魔法は人の手から生み出されて、人の手により使われる。魔法は正しい手順通りにやると誰でも造ることが出来る上、瓶や道具に詰めるとき自分で別の物を付加させると付加価値が付く。それを学校に献上することで単位がもらえる。


 魔法科っていうのは単にD、Eクラスを指す蔑称(べっしょう)だ。


 それで――もらえるんだけれど......。学校に献上しないともらえない。簡単にいうと魔法の作成ですら満足に出来ないボクは単位がもらえない――。


 考えながら歩いていると、ボクのクラス、Eクラスの教室に着いていた。魔術師育成学校......Tycoon(タイクーン)はすべての施設に魔法が使われている。ボクは魔術を使った。


 【解錠(オープン)


 魔法を破れるのは魔術だけだ。人の力なんか通用するわけがない。さっきの魔術は基本中の基本で使えない人はいない。基本魔術は三桁をこす未来は来ないと言われている。それに対し中級、上級、それに我流魔術っていう限られた人のみ使える魔術はすでに百万を越えているそうだ。......ボクには関係のない話だけどね。


 ドアが開くと、クラスメイトがいっせいに怪訝な顔をして振り向く。そしてその顔をは直ぐに――笑顔になった。


 「クロス! 大丈夫か?」

 「心配したのよ」

 「気にすんなって! いいことあるさ!」

 「次があるからねー!」

 「......無事か」


 言ったのは上から親友のロック、美人のアリア、頭の回転が早いユーマ、いつも元気な女の子ミューナ、無口だけど力強いガンマ......だ。そしてボクを含めた六人でEクラス全員だ。担任はいるけれど――きっと期待はされていないだろう。


 Eクラス(こんなばしょ)にいる時点で分かる通り、みんな落ちこぼれだ。魔術師にはなれないだろう。Dクラスに上がればちょっとはましになるかもしれないけど......Dクラスは今、定員一杯で上がることは出来ない。つまり無理だ。何かいきなり強い力でも他人に与えられない限り。


 「それで? 今回は何の魔法を製作してたの?」

 「えーっと......回復魔法」


 みんなが大声をあげた。


 「クロス......それ小学生、いやそれ以下でも出来るぞ......」

 「わ、分かってるよぉ!」

 「はいはい、確かにお前の腕じゃあなぁ」

 「......難しいな」


 うぅ......。みんなでボクをバカにして......でも、回復魔法すら製作出来ないのが悪い。小学生の魔法の授業で最初に造るのがこれだ。むしろこれを爆発させるのって、ボクの才能じゃない? 魔術名は爆発(ボム)で――。そんな妄想をしていたらクラスメイト全員に心配された。


 「クロスはぁー一度帰って休んだ方がーいーと思うよー?」

 「......そう、させてもらうよ」


▼▼▼


 校門を出て帰る。周りには空を飛んで移動している人がいる。確かあれは上級魔術の一つで【飛行(フライ)】......だったっけ? 


 「ボクもあんなの使ってみたいなぁ......」

 『じゃあ、いる?』


 ......うん? 今なにか聞こえたような――。見回しても誰もいない。なんだ、気のせいか......。


 『気のせいじゃないよ』

 「うわっ!」

 『ふふん。わかってくれた?』

 「君は、誰?」

 『うーん、ちょっと説明出来ないな。でも、そこを曲がって、真っ直ぐ進んだところにわたしはいるよ』

 

 ......ここを? ここを曲がると、暗いく人通りが少なくなる。それに、不良もいるし......。


 『別に来なくたって良いよ。でも、来てくれたら――いいこと教えてあげる』

 「いいこと? そんなものいいから、ボクを魔術師に出来る?」

 『そのつもりだったんだけどな』


 ッ! その言葉を聞いてボクは走り出す。どこの誰かも、性別も、何もかもわからない人に向かって。


▼▼▼


 ......。


 「おーい! どこー!?」

 

 辺りは静寂が流れている。やっぱりさっきのは幻聴だったんだろうか。ははっ......。何してるんだよボク。ボクみたいな人を魔術師に出来るわけないだろう。

 もう帰ろう。


 振り返ったときに人に当たってしまった。


 「あ、すいませ――!」

 「どこ見てんだよ! ......ふーん。財布」


 恐そうな、いや恐いお兄さんたちは、手を出した。


 「......どうぞ」

 「聞き分けがいーねーボク!」


 その人はニヤリと笑ったかと思えば握りこぶしを作った。......え?

 

 「フンッ!」

 「あぐっ」

 「いいね! ユウト!」


 うう。何で? 何で殴られなくちゃいけないの。ボクは財布を出したのに。そのあともボクは私刑(リンチ)された。初めは見てるだけだった人も参加した。


 数分後には、ボクは地面にうつ伏せになっていて、恐い人たちはいなくなっていた。

 そもそも何でボクはこんなところに......。そうだ、変な声が聞こえて、それで。ということは変な声は幻聴じゃなくてボクをここにおびき寄せるためだったんだ。それでお金を......。


 「......何で、だよ。魔術が使えないからこんな仕打ちを受けるのか? やっぱり神様なんていないんだ。いてもボクなんか見てくれないんだ。畜生......」


 ふらふらと歩いてゴミ置き場まできた。そのなかにあった、金属の棒を取り出す。

 これで思いっきり殴れば、死ねるだろうか。


 「ははっ、ははは、あはははは!!」


 駆け出す。どうせ死ぬなら、あいつらを殺そう。そうだ、学園も壊そう! あはははは! 

 はっ、はあっ。いた、いた!


 金属の棒を持っている手に力を込める。

 思いっきり走って、跳ぶ。


 後ろの奴が、ボクの存在に気がついた。関係ない。腕を降り下ろす。


 後ろの奴の頭に当たった。そのまま倒れる。


 「おい!? ヨッシー!? お前っ何するんだ!」

 「......は? さっきのお返しだよ」


 そいつも殴り付けた。ちょっとかわされちゃったけれど肩に当たった。肩を押さえてのたうち回っている姿は、見ていて飽きなかった。


 「はははは!!」


 魔術を使う暇も与えずに、物理的に攻撃する。これが一番だ! 楽しい。六人いたのに今三人倒した。辺りは血なまぐさかったけれど、気にしない。ボクの体にはたくさんの返り血がついていて、人が見たら変に思うだろう。でも、ここは人通りが少ないんだ。気にする奴はいない。


 「野郎!」


 ボクの財布を奪った奴だ。


 「タオスタオスタオスタオスタオスタオス! あははははははは!!」

 「狂ってやがる......。【強化(リインフォース)】!」


 強化(リインフォース)......それもしかして我流魔術? そうか、でもいいや。殴りまくるだけだ。


 「うおおおおお!」

 「ッ!」


 痛い。しかも金属で殴っているのに効いてる感じがしない。これが強化か。


 相手がボクを殴る。右手のストレートが頭やお腹にヒットしてかなり痛い。

 ボクが相手を殴る。でも、相手には効いていないのか速く動く。そしてまたボクを殴る。


 そのうち、ボクの体力が消えかかっていた。

 

 「うあああああ!!」

 「死ねッ!!」


 相手が渾身の一撃の体勢をとる。不味い! 防御の構えは取れない。そもそも知らない。

 相手の拳が迫る。


 『はい、ストップ~』

 「あ」

 「え?」


 ドタッ......。

 ユウト(だったはず)が倒れる。


 『こんにちは。っともういいか』

 「初めまして、わたしがさっき君に思念(テレパシー)を送ったんだよ」

 「思念(テレパシー)?」

 「わたしの能力......魔術」


 後ろから残りの二人が攻撃しようと迫ってきた。


 「うーん、ちょっと寝てて」


 またもやさっきと同じように二人が倒れる。どうなっているんだ。


 「ちょっと落ち着ける場所行こ。【飛行(フライ)】」

 「うわっ......」


 ふわーっと飛んで着いたのは......家?


 「時間が無いけど、それなりに説明するね」

 「う、うん」

 「わたしはイズモ。あなたに、我流魔術を与えることが出来る。条件はあるけどね」

 「条件......って我流魔術!?」

 「うん」


 え、本当に? でもボクは......。


 「ボクには、魔術の才能無いよ?」

 「あら、あるじゃない。爆発させる才能が。それに、才能がない訳じゃないわよ。ただちょっと......制御出来てないだけ。体内に貯められる魔力の量が足りてないわね」

 「体内に......」

 「うん? ......違うわ。魔力の量が他人に比べてかなりでかいわ! ちょっとこれ飲んでみて!」


 差し出されたのは瓶だ。なんだこれ。


 「それは、魔力を完全補充する液体」

 「ふーん」


 飲んでみると意外に量は少なく、無味無臭だった。

 最後の一滴を飲むと、なんだか元気になった気がした。今なら何でも出来そうだ......。


 「今、あなたは我流魔術を手に入れたわ」

 「えっ!?」

 「知らない人から貰ったものを簡単に飲まないようにって言われなかった?」

 「......言われた」


 いや、そんなことはどうでもいい。我流魔術だって?

 なら、Aクラスに行くことも出来るのか。魔術師にだってなれる!


 「そんな小さいことでいいの?」

 「え?」

 「今まで見下してきた人たちと一緒に魔術師を目指すの?」

 「......」

 「ねえ......。復讐、しようよ」

 「......うん」


 彼女の声はボクの心に染み込んできた。


 「いい? あなたの我流魔術は【爆発(ボム)】。(てのひら)で触れた物を爆発させることが出来る。と言っても、触れて五分以内ね」

 「爆発(ボム)......!」

 「それじゃあ、復讐頑張って」

 「え? ......うん」

 「それと、ボクってやめたら?」

 

 ボクを......。よし。


 「分かったよ、イズモ。オレ、復讐する」

 「その調子」


 そう言って彼女は消えた。オレは心の奥に弱かった自分を閉じ込めた。これで心置き無くやれる。


▼▼▼


 「ハハハハハハハ!!」


 イズモが消えて数分後――オレは、Tycoonでテロを起こしていた。

 ます、校門を破壊(ばくは)し、敵意を見せる。それから、止めにきた警備員二人と教師三人も爆破。後はAクラスに行き爆破。B、Cも。

 爆発が爆発を呼び大爆発。たった数分のうちに、地獄絵図と化した。

 楽しい。楽しい、楽しい、楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい!! この辺りに飛び散った鮮やかで紅い血はオレを祝福してくれているようだ。


▼▼▼


 「もう、そろそろ終わりか――」

 「クロス!」

 「あ?」


 振り向くと、ロックがいた。


 「ロック......。悪いけどやめる気は無いよ」

 「何でこんなことを......」

 「何で? じゃあロックはオレが黙って見下されてろってこと?」

 「そうじゃないが......でも!」

 「五月蝿(うるさ)い!! 【爆破(ボム)】!」

 「【岩化(ロック)】」


 ボン! 

 何!? オレの爆発は効かなかったようだ。


 「我流魔術......か?」

 「ああ、イズモが与えてくれたんだ。お前が暴走したのはわたしのせいだから止めてくれって」

 

 そんなはずはない。だって復讐しろといったのはイズモだ。おかしいな、イズモはオレの復讐を手伝ってくれたんじゃなかったのか? 

 それなら何で、ロックにも我流魔術を与えたんだ? イズモに聞こう、それがいい。


 「イズモは今、Eクラスにいるぜ」

 「そうか......」

 「だが、会わせるわけにはいかない。怯えてたからな」

 「は? 何言ってるんだお前? ......退けよ」

 「イヤだ。お前を止めなきゃいけない」


 ......。話が通じないな。

 

 「なら、もういいや。キエロ」

 「お前がな」


 オレたちの会話はそこで終わった。会話だけでなく、友情さえ終わったのかもしれない。


▼▼▼


 わたし、イズモは【監視(ウォッチング)】で、二人の様子を視ていたけれど、感想は一杯あった。

 楽しいなー。バカだなー。ちょっと力を、自分たちには制御しきれない力をもつと人間こうなるのかー。実験は成功かな。

 ......うん? 爆発音が止んだ。終わったかな?


▼▼▼


 「うあっ......」

 

 オレは全身全霊の力を持って、奴を(ころ)した。でも、相討ちか......。

 左半身の感覚がない。そうだろう。無いんだから。薄れゆく意識で見た物は、変わり果てた親友だった人(ロック)だ。彼は人の形をしていなかった。四肢は飛ばされ、皮膚は火傷が酷い。自分もあまり変わらないがな。そして声も聞こえた。今日初めて聞いた声だ。けれど、心を動かしてくれた声でもある。


 「ご苦労様。実験は成功だよ! もう、()んでいいよ」


 ――そんなこと言われなくたって、自分で分かる。永くはない、持ってあと数分だろう。

 どうしてこうなったんだっけか。引き返す場所は幾らでもあったはずなのに。


 大切な物は失ってから初めて気づく......か。失ってからじゃ遅いのにな。


 ――もう、駄目だ。これが死、なのか......。弱かったオレはもう消えたはずなのに、死ぬのは怖いらしい。

 それじゃあ、神様......次は、人並みでいいから......っ。人並みの、人生を――送らせて、くれ――――。

 イズモについては、○○君たちのセカイの最終話に出ています。最終話だけでも十分分かりますので良かったらどうぞ。


 もし誤字、脱字があれば教えて下さい。

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[一言] 面白かったッス 出来れば次回作もファンタジーがいいですね~ 俺はファンタジー系好きなんで…
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