第三章
横須賀
「あれれ~。日曜日だっちゅうのに、ブラックシャークいねえじゃん。」
「ホントだ。残念賞。せっかく望遠レンズ買ってきたのになぁ。」
「どこ行っちまったんだ。」
「そりゃあもちろん、海の中だろよ。」
「海自の護衛艦の写真が撮れるポイント知ってる?」
「それ教えて欲しいな。」
「じゃ、行ってみる?」
「見るべ、見るべ。」
ブラックシャークは、横須賀を発って5日経過していた。
「艦長、まもなく作戦海域です。」
「天候は、どうかね。」
「南西の風、微風、1050ヘクトパスカルです。」
「日焼け止めが必要だな。」
「はい。艦長。」
「わかった。すぐ行く。」
ブラックシャーク司令室
「コーヒーをお持ちしました。艦長。」
「ありがとう。電文は。」
「ポイント・エコー3101、ノーベンバー542。予定の訓練。YKB。」
「少佐。命令。シーコム3。」
「イエッサー。シーコムレベルスリー。」
「戦闘体制。繰り返す、戦闘体制。」
「深度30。ソナー。」
「ソナー。異常なし。」
「進路、NN90!」
「NN90。よし。」
「曹長!」
「はい。艦長!ここに。」
「シールチームを起こして来い。」
「イ、イエッサー。」
防衛省 幕僚長車内
「小林君、官邸があの体だから、西麻布にリークして来い。」
「そうですね。わかりました。」
「西麻布の星条旗新聞の交差点で降ろしてください。」
「もしもし、マイクかい。」
「ヘーイ、コバヤシ。久しぶりですネ。また、総理大臣でも代わったのかい?」
「それ、アメリカンジョークかい。近くに寄ったので、ビールでも飲まないか。」
「昼間からビールなんてゴージャスだな。」
「まあ、付き合えよ。」
「それで、確実なことは、何も判っていないんだ。要するに、華南国の領事館が珍しい動きをしてるってことだけなんだよ。」
「わかった、こっちも調べてみよう。CIAもオスプレイの件で、警戒レベルを上げたからな。」
星条旗新聞社
「ということで、華南国の動きを日本の警察が察知したわけです。その情報が、防衛省に伝わって。ミスターコバヤシが、我々にリークしたってことです。」
「それで、マイク。詳しい情報は、引き出せたのかね。」
「ブラウン局長。要するに、日本は、何も掴んでいないということですよ。我々の情報を欲しがっているわけです。」
「・・・。我々が、日本に情報を渡したことは、一度もない。そんなこと、防衛省の連中もわかってるはずだ。ということは、だ、・・・。つまり、日本人の手に負えないから我々CIAに、悪人を始末してもらいたいということだろう。」
「ブラウン局長。おっしゃるとおりですね。」
「我々も、部隊を連れて四国に飛びますか?」
「マイク、ちょっと待て。念のため、ペンタゴンの指示を仰いでからにしよう。」
ペンタゴン 対日本センター
「東京のブラウンから、ちょっとした情報が入っています。」
「ちょっとした情報か・・・。また、総理大臣でも代わったのかい?」
「ボス。いつもジョークが、冴えていますね。」
「東京は、何を言ってきたんだね。」
「読み上げます。在日華南国領事館神戸支局に配属されている華南国陸軍の呂旬男少佐が、オスプレイの飛行ルート上に50名の部隊を展開している。武装していると思われ、オスプレイに対して鉄嘴ミサイル攻撃のおそれもあり。ということです。」
「そりゃまた、大変だ、ホワイトハウスに電話だ。」
東京
「ミスターコバヤシ。あなたの情報が役に立ったよ。オスプレイの飛行ルートを変更したんだ。」
「四国で、何があったんだい。」
「NoNo!四国は、行っていないよ。俺たちは、何もしていない。」
「おそらく、ペンタゴンが、何か新しい情報を得たんだろう。」
「そうかい、それは、よかったな。マイク。じゃあ、今度は、君が、ビールをおごる番だぜ。」
「OK!OK!コバヤシ、俺たちは、フレンドだ、また何かあれば、遠慮なく言ってくれ。」