序章
華南共和国の海軍工務省では、オスプレイと同様のVSTOL機を同時期に開発し配備を進めようとしていた。
オスプレイは、胴体と主翼が固定され、主翼の先端に位置するエンジンが、115度稼動する設計である。
一方、華南国海軍開発のVSTOL機は、胴体と主翼はジョイントで接合されており、ここが、稼動する仕組みとなっている。
オスプレイのように主翼の先端のエンジンだけ稼動する設計と異なる。
これによって、主翼にあたる気流に乱れが生じなくなり、パイロットの操作性が格段に向上し、同時に安全性も確保された。
オスプレイは、エンジンの推進方向と、主翼の向きがシンクロしていなかったが、華南国版オスプレイは、エンジンの推進方向と主翼の向きがシンクロしている。
これに加え、主翼を水平に保ったまま、一般の輸送機のように離着陸を可能にするために脚を長く設計してある。
これには、希少金属による強靭性が無ければ、実現されなかった技術である。
華南国は、このVSTOLを「海燕」と名づけ、ヨーロッパ・アフリカ諸国に販売を仕掛けているのであった。
海燕の離陸は、実に優雅に見える。
35度上向きに翼を仰ぎ、300mの滑走をもって空に浮かぶ。
それは、白鳥が舞う姿にも思える。
日本では、CH-47「チヌーク」が、約50機、いまだに、現役で活躍している。
アメリカの目論見は、この年老いたチヌークをオスプレイに更新させようというものであった。
同時に、韓国にある70機を入れ替え、開発費の償却を考えているのであった。
かつて、多くの軍事評論家は、オスプレイの輸送能力に着目し絶賛した。
日本の防衛省も、米国による配備を認め、むしろ歓迎ムードを誘導してきた。
が、しかし、その長所は、同時に、短所であった。
仮にチヌーク5機の輸送力に相当するならば、オスプレイ1機の撃墜は、チヌーク5機分に相当する。
チヌーク5機撃墜するためには、少なくとも5発の地対空ミサイルが必要なのだが、オスプレイについては、1発のミサイルで対応できるという、ステルス機能も無く、マッハの推進力も無い、迎撃する側にとって、非常に効率的なバーゲン品なのだ。
過去にも、「鉄の棺桶」と呼ばれたコンバットウエポンは、数多存在したことを忘れてはならない。
日本国内では、その事故率について、問題視しているが、オスプレイの真の価値とは、輸送機として戦場で役に立つかどうかである。
実際の戦場で、最悪の被撃墜率を記録することになろうことを、予想する者は少なかった。
華南国海軍工務省は、この弱点を見抜いていた。
音波シンクロセンサーを搭載し、熱波を同時にスキャンすることで、ほぼ100%の迎撃性能を持つ携帯型の地対空ミサイルを得ていたのだ。
日本製の一眼レフカメラのレンズ、電子部品など、中古の部品を流用し完成させたものである。
日本製の一眼レフカメラは、華南国国内で、一般に市販されている。
これらは、無限に供給され続けるため、途絶える心配が無いのだ。
その名を鉄嘴ミサイルと呼ばれた。