3-10 粘着神
お待たせしました。パソコンようやく復活です!
「チイィイイイイ!」
舌打ちしてしまい己の行為を嫌悪する。
神が人間を恐れていることを体現してしまった。
高速で迫りくる男は神を殺せる存在なのだと認識してしまった。
あれは異様だ。
過ぎた異様だ。
理解を超えてしまったものに対する恐れを生まれて始めて認識し、一歩、足を退いてしまった。
それでも、
「届くものかよ!人間風情がっ!」
ダンクは踏みとどまった。
ここで退くなど、己が誇りが許さない。
ダンクは空間障壁を創り出し、なおかつ空間爆弾による攻撃をするが、コウに対する攻撃は全てルウラのファクターが作用し、届かない。そしてバンカーの切っ先が障壁にめり込んだ瞬間。杭打ち機から火薬が炸裂し、薬莢が排出される。インテグラが破壊の力とともに撃ちだされる。
「喰い貫け!」
赤き波濤がダンクに殺到。撃ち出されたインテグラがコウのファクターを受け、巨大な赤杭となりダンクを飲み込まんと襲いかかる。
ダンクが赤杭に飲み込まれたかに見えた。
「やった!」
ルウラが歓喜の声をあげたが、上空から狂気の笑い声。
「そんなことで死ぬわけがないだろう!駄目だ!まだ駄目だ!こんなことでは僕の命には届かない!何が神無月ルウラだ!人間みんな皆殺しにして、もう一度僕の元に戻させてやるよ。オクトバーァァァァアアアアア!」
まだ届かない。
ダンクは着地し、あの全力攻撃をルウラにたたきつけようとする。
その時、一つの懸念がダンクの中に引っかかった。
コウはどこだ?
空間跳躍の瞬間、視界がなくなるのはどうしようもない欠点だ。
そして今、最も神の命を脅かす可能性があるあの男。
ダンクは言いようもない不愉快さに襲われる。
この空間は自分とオクトバーだけの、二人の空間だったはずだ。
二人で殺し合い、お互いの認識をし、理解を深めあう。
その空間のはずなのにそこに紛れ込んだ異物。
それがたまらなく不愉快だ。
「どこだ!暁コウウウゥゥウウウ!」
全面に空間障壁を張り、コウの突撃に備えた。
あいつがいては、女神との語らいは無粋なものになり下がる。
そしてコウは現れた。
ダンクの直下、地面を突き破って。
コウは攻撃が空振りになった瞬間、地面を喰らい、大地に潜行した。そしてルウラがファクターを使い、コウが動き回るに必要なだけの地下空洞を造り上げた。後はハヅキの観測の元、指示された場所へ突撃すればいい。
神と地を喰い貫き、人の身を突っ込ませればいい。
インテグラがコウのファクターを受け赤く輝き、ダンクの胸を貫通した。
天に向けられた切っ先にダンクは串刺しにされ、宙に力なく手足を投げ出していた。
「ようやく人の名前を呼んだな。カミサマ」
天を貫くかのような一撃は確実にダンクの命を奪う一撃だった。
「足元がお留守なんだよ。あんたの空間支配は。空間爆弾による破壊を行っても決してあんたのいる地面はえぐれなかった。空間障壁を張った時も、だ。地面がえぐれている様子はない。これはあんたが地中からの攻撃にまるで気を向けていないと言っているようなものだ」
ダンクは血を吐きだした。
温かな赤がコウの頬に滴り落ちる。
「馬鹿……な…………こんな、人間に、オクトバーの力添えがあったとはいえ……力を半端に持った人間ごときに……」
「違うな。この状況を創り出したのも、あんたの腕が吹き飛んだのも、あんたの弱点を見つけたのも、全てはハヅキという人間だ!お前は人間に負けたんだ!そして、この俺の一撃を届けられたのはルウラのお陰だ!ルウラの力を受けた人間の武器がお前の命に届いた!お前はルウラのことを何一つわかっちゃいなかったんだよ!」
「分かったような口をきくな暁コウゥゥゥウウウウウ!」
ダンクが瀕死の状態にもかかわらず、ファクターを使おうと足掻いた。
コウの言葉を全力で否定しようと、本来ならば動けないほどのダメージをおった身体を怒りの力のみで稼働させる。ダンクの右腕は蛇が首をもたげるようにコウに向いた。
コウはその命をなげうった抵抗を叩きつぶすべく、咆哮する。
「俺の日常をぶっ壊してくれた礼だ。ぶっ飛びやがれ!」
バンカーが起動し、轟音とともに薬莢が排出される。
突き刺さったままのダンクを再度、打ちすえ、思い切り吹き飛ばした。
赤き杭が吹き飛ばしざまにダンクの命を喰らい尽くした。
神は地面を数度跳ね、地に四肢を投げ出した。
排出された薬莢が地面に落ち、鋼の音を立てて戦いの終わりを告げる。
ダンクの状態といえば、上半身と下半身が皮一枚で辛うじてくっついているといった有様だ。
明らかに絶命したとわかる状態。
長い静寂の後、コウは緊張が抜け、ようやく戦闘態勢を解く。
それが、致命的だった。
ダンクの上半身が跳ね起きた。
コウとダンクの互いの距離はファクターで一瞬で無意味と化した。
上半身だけでコウに組み付く。
あまりの出来事にこの場にいる誰もが言葉を失った。
「つかまぇたぁ」
耳元で死神がささやいた。