幕間2 ロウアーの意
パソコンが逝ってしまいましたので、こんなタイミングで幕間です。どうやら中に入っていたデータは無事らしく、書き溜めておいた分を引っ張り出すことは出来る模様……
戦場を見渡すことが出来る場所に移動し、ことの推移を見つめる。
多少の不愉快さは感じていたが、ロウアーはそれをおくびにも出さなかった。
自身は神に使える身であり、不満を表に出すことなどあってはならないからだ。
「……いい機会ともいえる」
これからコウと心踊る戦いがはじめると思ったところで、邪魔が入ったことに関しては悪いことばかりでもない。
ここでコウ達が敗れるならばそれでよし、もしコウ達が勝つのであればコウが選ばれた者であるということがはっきりする。
選ばれてしまった、か。
特に彼である必要もなかったのだろう。
誰でもよかった。
それでも選ばれた男は予想以上に面白い男だった。
他を殺してでも生き残るという生命そのもののような男だ。その獰猛さが今、神の1柱を追い詰めている。ますます心が躍り始めている自分に苦笑する。
あの男は女のために戦っている、と言った。
あの男が戦っている理由は自分と同じだ。
違いを挙げるとするならば、あの男は触れ合えるということぐらいか。
あの男ほどの激しさを自分もあの時に持ち合わせていれば、今のような結果にはならなかったのだろうか?
神と天使の絶対的な壁に心折れず、確固たる自分を大地に立て、状況に立ち向かうことが出来ていれば、愛する女性を助けることが出来ただろうか?
そこまで考えて首を振る。
戦況は佳境に入り始めた。
振るわれた碧の刃が目に焼きつく。
ルウラのマテリアルが元になっているということは一目で理解できた。
一層、胸が締め付けられる。
あの剣は種族の垣根を越えた剣だ。
神が人に与え、人が神に届くために振るう。
あんなことは自分と愛した女の間では出来なかった。いや、考え付くことすらなかった。考え付かなかったのであれば、その程度だったということだ。
「アリス」
自然と口から名前がこぼれる。握りしめたこぶしからは血が滲み出してきた。後悔を未だに引きずり、こんなところまで来てしまった。神であった彼女は自分からしてみれば遠い存在であった部分が多分にあったし、彼女もそんな気持ちを見透かしていたのだろう。振り返れば思っているほど近しい間柄でもなかったのかもしれない。
そう思ってももう止まれなかった。
彼女に対しての情は一方通行かもしれないとしても深すぎた。
眼前の戦場を見つめる。
ロウアーはコウが勝つことを願っていた。
ダンクに恨みはない。
あの男であれば、殺しあいたいと思えるからだ。
目的がたとえ陳腐なものであると他者から罵られたとしても、この身にとって、それは人生で一番の殺しだと思う。
なればこそ、好敵手と呼べるほどの関係性を、ギリギリでの殺し合いを、醜悪とも思えるような画策をぶつけることが出来る相手でなければならない。
あの男ならば最適だ。
神を前にしても、倒れず、吼え続けることが出来るあの男ならば。
戦場ではコウがルウラに転送してもらった武装を淀みなく装備していた。
その武装を見て思わず口笛を吹く。
「よくもそんな大味な武装を使う気になれる」
あんな武装を任せた奴は馬鹿か、天才だ。
そういえば、あちらの世界ではみなファクター頼みで武装で何とかしようという意識はあまりなかった。あの武装を使わせる人間にも多少、興味がわいた。
コウが力強く大地を蹴る。
「見せてみろ。暁コウ!」
戦場に咆哮が響いた。
早くパソコン帰ってきてー