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3-9 最後の一撃へ

アップ失敗してたあああ!すいません。一昨日あげたと思ったらあげれていなかったです。

 ハヅキはスコープ越しにコウのファクターが起動していることを確認し、胸をなでおろす。ダンクのファクターの弱点は既にコウとルウラに伝えてある。

 通信機でコウに呼び掛ける。

「動ける?」

『かっこいいところ見せたいからな!動ける!』

 多分に強がりを含んだコウの声に安心してしまいそうになる自分を律する。

 状況はまだ終わっていない。

「愛しているわ」

『俺もだ!』

 そしてルウラに通信を切り替える。

「ルウラ」

 ルウラは無言だった。

 通信は届いているはずだ。

「タダトさんと握手した時のことを思い出しなさい。人間と神が手を取り合うことに貴方は意外に思っていたのでしょうけど、あれほど簡単なことなのよ」

『しかし……私は、どちらも選べなかった。それに私は、コウを戦いに……』

「だったら、命がけで私達を守りなさい!個を守れないものに大を制することなどできはしない。あのバカ神が言っているのは単なる言葉のまやかしよ!」

 それでもルウラは応えなかった。

 後はコウに託すしかない。

 あの男ならきっと何とかするだろう。

 なにせ人類最強で、ハヅキの恋人なのだから。




 コウの渾身の一撃はダンクの空間障壁を打ち破り、ダンクはその場から後退するしかなかった。その現実にダンクは苛立ちを隠せない。半分になった左腕の激痛も人間にこれほどの手傷を負わされたとしっかりと証明してくる。ダンクはかつてないほどの怒りに支配された。

 ファクターの使用を中止したコウはすぐさま煙幕弾をポーチから引っ張り出してばらまく。空間制御の前にはすぐ無意味となってしまうが、それでも少しは時間を稼げる。コウは隙を創り出すと茫然としていたルウラを抱えてダンクの破れかぶれとなった攻撃を必死でかわす。

「何やってんだ!しゃきっとしろよ!」

「コウ……私はもう、何のために戦えばいいのか。私は……どちらも選べなかったんだ。それに私はお前を戦いの泥沼に引きずり込んだ。」

 この期に及んで何を言っているんだ、とコウは悪態をつきたくなった。ダンクとルウラの会話はあんな状態だったコウの耳には届いていない。

「ああ、そうかよ!だったら俺は死んじまうぞ!死にたくないってのによ!」

「え?」

「だってそうだろうが!俺はお前の助けがなかったら死んじまうんだ!あんな奴に俺一人で勝てるかよ!俺の命はお前が握ってんだ!」

「…………」

「それに!お前がいなかったら俺はとっくに死んでんだよ!だから、お前がこのまま死ぬってんなら、死ぬのはいやだけど一緒に死んでやる!ただ、お前の命はいらないぞ!俺が残ってお前が死ぬってのは最悪のパターンだ!」

 コウは立ち止まってルウラを放す。

煙幕は晴れてきている。

ダンクも攻撃を中断していた。

「ハヅキに嫌われる。そうなるんだったら死んだ方がましだ。俺が生き残るにはあいつに勝つ以外に方法がないんだよ。他のことはそれから考えようぜ。生き残って、この世界をなんとかしたら……そうだな。良い賞をやるよ」

 コウはルウラに笑いかける。

「人間守りましたで賞」

 コウの言葉にルウラは笑った。

「はは!な、なんだそれは……はは!コウは私以上にネーミングセンスがないな!そうか!人間守りましたで賞か!あっははは!それは確かにほしい賞だな!」

 煙幕が完全に晴れ、憤怒の表情を浮かべたダンクがこちらを見据える。

「オクトバー。そこをどいて。この男を殺す」

 ダンクの視線が先程のやり取りを思い出させ、ルウラの足をすくませる。しかしコウがルウラの肩を抱き、勇気づけた。

「どく必要はないぞ。ルウラ。お前の名前はオクトバーなんかじゃないからな」

 コウは一息入れ、告げた。

「神無月ルウラ」

「神無月……ルウラ?」

「日本の古い言葉で十月って意味だ。名字を考えてくれと言われたからな。ずっと考えていたんだよ。どうだ?」

 コウが不安げな視線を向けてくる。

 確かに今のネーミングセンスを自覚してしまえば不安になる気持ちはわからないでもない。

 しかしルウラは満足げな笑みを浮かべた。

「ああ、いいな。響きもよいし、名付け親のコウの実直さがあふれている。それに随分と皮肉が効いて素敵だ。嬉しいよ」

 とにかく気に入ったらしく、コウは内心胸をなでおろす。

「そういう訳だ。悪いな。メイ・ダンク。オクトバー・ルウラはもういない。今ここにいる私は神無月ルウラだ」

「言葉遊びを!」

 ダンクが攻撃を開始すると同時に、コウは自身の命名をもう一度告げ、ファクターを起動させる。

「さぁ!神に届くファクターだ!次は命を喰わせてもらう!」

「調子に乗るなよ人間!」

 ダンクの空間爆弾が右から破裂、今まで受けたことのないほどの衝撃だったが、コウには通用しない。血がコウの周囲を守っている。

 ダンクは思わず舌打ちした。

「三分だけならカミサマだって超えられる!」

 コウが背中からインテグラを抜き放つ。

 インテグラが碧に輝き、己の出番に歓喜した。

 コウの血がインテグラを巻き込み、巨大な赤き刃を形成。

 コウのファクターを十全以上に生かしきる疑似マテリアル。

 インテグラが咆哮する。

「喰らい切れ!」

 コウのファクターを受けたインテグラはあっさりと空間障壁を喰い破った。コウはそのまま接近し、インテグラをダンクに叩きつけるが空間転移され、かわされる。

 コウはなおも追いすがる。




 コウに降りかかる攻撃をそらしつつ、ルウラは思案した。ダンクの空間障壁、空間転移がある以上、いかにコウの攻撃が強力でも攻撃が届かない。ましてコウのファクターは残り時間をすでに半分切っている。

 そこにハヅキからの通信が入った。

「ルウラ。私の場所が分かる?分かるのなら私のそばにあるものをコウに転送して」

 ルウラはハヅキの場所をすばやく探り、神の視力をもってルウラの横に置いてあるものを確認し、驚愕した。

 とんでもなく大味で馬鹿げた威力を誇るであろう代物がそこにはあった。

 あの天才はダンクの対策よりもコウの長所を伸ばすことを優先したようだ。

 思わず口端が笑みを作る。

「よくもそんなものを造る!コウ!こっちに来い!」

 ルウラの声を受け、コウは早急に追撃を取りやめルウラのそばに降り立った。

 空間障壁を破るタイムロスでどうしても逃げられる。

 ファクターの事もあり、それほどダメージは負っていないが、このままではただの消耗戦だった。

「受け取れ。恋人からのプレゼントだ」

 コウの目の前に姿を現したのはコウが初陣で振りまわしたストライク・アイゼンを小型化して、杭を取り外したような形をしたものだった。

『コウ。それは察しの通り貴方用の……ストライク・バンカーよ。杭の部分にインテグラをセットして。簡単にできるわ。この子の突破力なら、あの空間障壁を貫ける。あいつの空間支配エリア・マスターの最大の弱点は造り出した空間の内側には空気とあいつ以外入れられないということ。一気に突破して攻撃を届かせることができれば、勝てる』

「ハッ。こういうのはもっと早く渡してくれよ!」

 コウはそういうとインテグラをセットし、ダンクに向き直った。

「行くぜ!粘着神!」

 コウはダンクに疾走。

 杭打ち機と化したインテグラに自身のファクターをありったけ込める。

 これが全力で有効な最後の一撃。

 あの神出鬼没の神を殺すには情報がない攻撃をして反応を鈍らせるしかない。

 コウに残された時間も少ない。

 ストライク・バンカーの撃鉄が音を立てて起こされた。


三分間はリアルタイム意識しています。

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