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3-7 コウVSロウアー

遅れてすいません

 相も変わらず厄介な相手だとコウは歯噛みした。ロウアーの優れた剣術はコウを圧している。圧倒的に劣った経験をひっくり返すにはファクターを使うしかなかったが、コウはここで切り札を使うことはできない。たったの三分しかファクターは使えない。ダンクと相対するのにここで一秒も使う訳にはいかなかった。ダンクはコウを殺すと明言している。全てをダンクに叩きつける必要がある。

何とか距離をとって使い物にならなくなったアグニートを捨て、新しいアグニートに交換する。視線で牽制し合いながら互いに円を描くように激突のタイミングを計る。ここで一つコウは疑問があった。

(ロウアーはなぜファクターを使わない?)

 少なくともファクターを使えば、一気に場を優勢に進められるはずだ。ロウアーがコウのファクターを把握している以上、コウの役割だって向こうは見越しているはずだ。この状況はロウアーが圧倒的有利な状況。

(なぜそれを活かさない?)

 それに何となくロウアーから発生する気配が違う。気が乗っていない。殺気がない。

 推測できることは一つだ。

 コウがそう思案している間にロウアーが踏み込んできた。コウはアグニートを構え、その激突を受け止める。

「時間稼ぎたぁ随分と三下の活動が身について来たな。ロウアー!」

 コウは推測の結論をロウアーに叩きつけ、力任せにロウアーの剣を弾き、後退させる。

 後退したロウアーはそこから動こうとしなかった。それどころか、顔を弛緩させ、やる気なさそうに剣の柄でこめかみをぽりぽりとかき始めた。

「おい」

「え、ああ、うん。言った通りだよ。そういうこと。僕って三下なんだよ。今回のお仕事は時間稼ぎ。本当にやる気が出ない」

 そう言い終わるとロウアーは大きなため息をついた。

「なんて言うかさ。これで気が乗る奴っていうのはかなりアレな性格しているよね?飼い犬根性染みついているっていうかさ。仕事として割り切るにしてもこればかりはちょっと……」

「やる気なさすぎるだろ」

「あー、うん。本当にない。マジでない。これはない。だってさ、命のやり取りってもっと崇高な意思があってしかるべきと思うんだよ。僕は。だからダンク様に君と戦え、と言われた時は内心喜んだものさ。もう戦えないと思っていたからね。君の戦いは惹かれるものがある。だからこそ真っ向からぶつかりあい、しのぎを削ろうと思ったのに……。与えられた仕事は時間稼ぎときた。本当にやる気が出ない」

「お前、本当に宮使えか?大体、命のやり取りに崇高もクソもあるか。あんなものやらないに越したことはない。おぞましい行為だ」

「それに関しては同意する部分もあるけどね。だとしたら、戦いで失われる命というのは一体何だ?おぞましい行為で失われたということは単に残念に喪失されたものだ。命が失われる際は、しかるべき輝きを誰かが装飾しなければならないと僕は考えている」

 役者のように滔々とふざけた価値観を語るロウアーに対してコウは冷静だった。

「…………挑発が随分と下手糞だな」

 コウの言葉にロウアーが怪訝な顔をする。コウは言葉を続ける。

「お前は、何かしらが目的で、俺に近づいている」

 良く聞こえるようにぶつ切りでハッキリと告げる。

「今、思えばおかしなことばかりだ。わざわざ俺と会話したこと自体妙だし、始めて戦ったときだって、一気に俺を始末しようと思えばできたくせにそれをしなかった。何かしらの意図がないとこんな真似はしないだろう?」

「………………」

 ロウアーの顔からは笑みが消え失せていた。

「沈黙か?では、お前をのした後に目的については聞いてやるよ!」

 コウはそう言ってロウアーに突撃した。時間稼ぎにこれ以上付き合うつもりなどない。

 激突。

 剣同士が火花を立てて押し合う。

「君は馬鹿ではなかったのか?」

 冷めた眼でこちらを見るロウアーにコウは激高した。

「今、言うセリフじゃねーだろ!」

 アグニートを左腕で抜き、そのまま鞘をパージ。ロウアーに横なぎの斬撃を繰り出すが、一瞬早くロウアーが後退。空振りに終わる。さっきの激突で使い物にならなくなったアグニートをロウアーに全力で放り投げる。ロウアーが剣で弾いている間に再度、接近し袈裟がけに斬撃を繰り出すが、止められる。

「随分と頑張る!」

「女がいるからだよ!」

 コウの叫びにロウアーは低く、笑った。

「ああ、そうか。女か。たったの一週間であれだけ破滅的だった君をここまでにするとはね。人間は劣った生き物だと思っていたが……なるほど。舞台に上がった一つの種族という者は伊達ではないということか」

 ロウアーの気配が変わった。噴出する烈なる気配にコウは敏感に反応する。繰り出された三段突きは、その気配に反応していなければ串刺しになる所だった。咄嗟にかわすが、最後の突きがコウの肩を貫通する。

「ぐぅっ!」

 後退しつつ、肩を抑える。高速で傷が治る感触は未だに慣れない。激痛はすぐさま鈍痛にかわっていったが、コウはそんなことよりも重要なことがあった。

 今の刺突は明らかに本気だった。

「おいおい、三下らしくないことするじゃないか」

「人間というものをもっと見たくなった。君は僕達のような力をもち、それでも人間だ。僕達のような侵略者に対して君たちはいったいどういう反応をするのか?それがみたい。そして、僕の法でこの世界を維持する。今のはかわしてくれると信じていたよ。好敵手!」

 ロウアーから裂帛の気合がほとばしる。

「本当にお前たちは気に食わないな!」

 コウは身構えた。

その瞬間だった。

コウは自身の体が自分の意思とは関係なく宙に浮かんだことを感じた。


もうちょっとボリューム上げたほうが良かったかな?

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