第2話 竜王町へのお使い
いさむ/ゆうしゃLV2:反抗期継続中
ゆーじ/そうりょLV2:遊び人ではないかとの説もある
ゆうり/まほうつかいLV2:父親とは半年以上まともに口を利いていないらしい
*
(ガタンガタン……)
勇者たち一行は、電車で山梨県の竜王町へと向かっていた。
天龍村長「いいか!君たちの倒すべき敵は、『竜王町』におる!」( ̄△ ̄)
ゆーじ「なんかいきなりテンション高いな村長」
いさむ「やたらと具体的だな……。しかも竜王っていきなりハードル高くないか?ラスボスかよ」
という村長の力説により、友好都市間交流として彼らは竜王町へと行くことになったのだった。
ゆーじ「どうでもいいけど、何でまたヨシツネがいるんだ?」
いさむ「さあ?」
ゆうり「お爺ちゃん、電車長いけど大丈夫?」
ヨシツネ「(コクコク)」( ̄_ ̄)
でもまあ、村の中でじっとしてるよりはマシかと、修学旅行気分で話に乗ったのだった。
ゆーじ「それにしても、着替え持ってきてよかったな」
いさむ「確かに。あの村長ども、ホントにあのわけの分からん格好で乗せるんだもんな」
ゆうり「ホントホント。あんなカッコ、恥ずかしすぎて人前で着れたもんじゃないよね?」
いさむ&ゆーじ「……」( ̄_ ̄)( ̄_ ̄)
ゆうり「……な、何?」
ゆーじ「……いや、お前はあれで良かったんじゃないかな」
いさむ「……うん、そうだな」
ゆうり「ちょっとっ!!」Σ( ̄□ ̄)
*
車掌「次は~竜王~竜王~」
プッシュ~ッ
いさむ「着いたか」
ゆうり「ここが竜王町?」
ゆーじ「やたらモダンな駅だな。まるで安藤忠雄の建築物だ」
パーンパパーン!
変な格好をした竜王町長「お待ちしておりました!勇者ご一行様!」
隣の人「どうぞどうぞこちらに!」
垂れ幕:『歓迎 勇者様ご一行 ようこそ魔王縁の地、竜王へ』
いさむ「何だあの垂れ幕……」
ゆーじ「猛烈に嫌な予感がするな……」
ゆうり「ええ……」
竜王町長「さあ、ついに最後の町へやってまいりましたね勇者様!ここで最後の装備を整えて行ってください」
いさむ「は、はぁ……」
ゆうり「なんかこれ、前にも見たことある風景ね」
いさむ「デジャヴって奴だな……」
女性「お、お爺ちゃん……」
ヨシツネ「…………(プルプルプル)」
ゆうり「……お爺ちゃん?」
女性「皆様、どうもありがとうございます。わざわざお爺ちゃんをここまで送ってきてくれて……」
ゆーじ「ヨシツネの家族がいたんだな、ここ」
ゆうり「どうりでね……ふふ、嬉しそう」
いさむ「そうだな」
*
竜王町長「さあさあ、まずはここ『赤坂台総合公園、通称ドラゴンパーク』ですぞ」
隣の人「このドラゴンパークはですな、ここ竜王町でも最も風光明媚な場所で、恋人同士からファミリーまでどなたでも楽しむ事ができると評判な観光スポットなのです!」
いさむ「は、はぁ……」
隣の人「さらに何と、高さ33メートルの展望塔からは、南に富士山、北に八ヶ岳がよく見えると大人気なのです!近くでは昼食はもちろんの事、デートに最適な場所はここを置いて他にはございません!」
ゆうり「さっきから後ろに着いてきてる、この人たちは一体何なの……?」
ゆーじ「どうやら、みんなマスコミっぽいな……」
竜王町長「さあお待たせいたしました勇者様!最上階にあるこれが伝説の武器、『天空の剣』ですぞ!」
隣の人「さあ、勇者様。どうぞ剣を手にお取り下さい!」
パシャッパシャパシャッ!!!
町の人「ワアーーッ!!!(パチパチパチ)」
いさむ「騙された……」
ゆーじ「そうだよな。あの村長どもがただの旅行なんてさせるはずないよな……」
隣の人「はい、それでは竜王様に止めの一撃をどうぞっ!」
竜王町長「待て、その前に聞く事がある。……勇者よ、我が下僕とならんか?そうすれば、この町の半分をくれてやるぞ?」
いさむ「……いや、この町の半分もらってもな……」
竜王町長「さすが勇者よ、このような口車には乗らんか……ならばこの手で葬ってくれる!」
隣の人「よろしいでしょうか?さて、では改めて止めの一撃をどうぞ!」
ゆーじ「……」
ゆうり「……」
いさむ「……(グサッ)」
パシャッパシャパシャッ!!!
竜王町長「ぐわあーっ!!!バタッ」○|―<
町の人「ワアーーッ!!!(パチパチパチ)」
町長「ささ、おめでとうございます。ついにやりましたね!……明日からは魔王倒し記念パレードが始まりますぞ」
隣の人「今夜はゆっくりとお休み下さい」
一同「ははは……」||l( ̄_ ̄)
*
いさむ「ゆうり……ゆうり……!」
ゆうり「な……何よこんな夜に」
ゆーじ「いいから早く着替えるんだ、ほらっ」
ゆうり「キャッ!Σ( ̄_ ̄)どさくさに紛れて布団めくらないでよ!一体何なの!?」
いさむ「いいか……、ここがチャンスだぞ」
ゆうり「えっ、何が?」
ゆーじ「俺たちはこのまま、帰りの金を持って東京に行く」
ゆうり「ええっ!!……あの闇の大地≪東京≫にっ!?」Σ( ̄□ ̄)
いさむ「シーッ!声がでかい」
ゆーじ「このままここにいたら、村みたいにいいように扱われるのがオチだ」
ゆうり「……で、でも……」
いさむ「無理にとは言わんが、折角山梨まで来たのにこのままあの村に戻るつもりはない」
ゆーじ「東京まではあと少しだ」
ゆうり「そ……う、そうよね。分かったわ!ちょっと待ってて!」Σ( ̄へ ̄)
いさむ&ゆーじ「よっし!」
ウーウウーウーウー!!!
いさむ「この音……嫌な予感が……ッ!」
町長の声「勇者諸君、勇者諸君、君たちの企みは聞こえているぞ!大人しく自室へ戻りたまえっ!」Σ( ̄□ ̄)
ゆーじ「やばいバレたっ!急ぐぞ!」Σ( ̄□ ̄)
いさむ「盗聴器とは……やってくれるぜ!」
ゆうり「最初から逃がすつもりはなかったようね。……よし、いいわ!」Σ( ̄◇ ̄)
いさむ「――行くぞっ!」
ダダダダダッ!!!
――ゆうしゃたちはにげだした!
*
――しかしまわりこまれてしまった!
竜王町長「ふふふ、もう逃げられんぞ勇者よ……」( ̄ー ̄)
いさむ「別に聞きたくもないけど一応聞いておいてやる。……一体何なんだ?これは」
竜王町長「昔から、天龍村と我が竜王町は姉妹都市として……」
ゆーじ「ハイもういい。充分分かりました~」
ゆうり「最初からグルだったってことね……」
いさむ「まあいい。ここを抜ければホームまですぐだ。走るぞ――!」
町長「待ったぁっ!!!……この魔法だけは使いたくなかったが仕方ない」
ゆーじ「……何だ?何か奥の手があるのか?」Σ( ̄□ ̄)
いさむ「うっ……三度何か嫌な予感が……!」
竜王町長はなかまをよんだ!
RRRRRR……
竜王町長「……あ、もしもし?お世話になります、竜王の町長をやっとる者ですが。……あ、えぇえぇ。どうもこちらこそ大変お世話になっております、あ、ハイ……」
ゆーじ「長くなるのか……?」
竜王町長「ええ、そうなんですよー。ですのでぜひお力をお借りしたく……ハイ。今本人を映しますので」
ゆうり「TV電話なんて、……予算あるわねこの町」
声「……勇者?」
いさむ「……母ちゃん!?」Σ( ̄□ ̄)
いさむの母「……勇者。まだ前借りしたお小遣い返してなかったわよね……?」
いさむ「まいりましたぁっ!!!」○) ̄|_(ガクッ
*
女性「本当にありがとうございました……」
ひ孫「おじいちゃんまたね~っ」
ヨシツネ「(コクコク)」
ゆーじ「じーさん、この町に家族が居たんだな……」
いさむ「まあ、ヨシツネが連れてこれただけでも良しとするか……」
ゆうり「そうね……」(T_T)
勇者たちの伝説はつづく……のか?