第1話 起きなさい勇者よ
「将来天龍村に住もうかと思った。……何でかというと、名前がカッコ良さそうだから」
(漫才からコントへと切り替わる時の雰囲気で)
*
……昔、この村には、『空高く龍駆け登る時、全ての魔を払う勇者が現れる』という伝説があった……
母「勇者、起きなさい勇者よ」
勇「……へ?母ちゃん?」
母「起きた?起きたら今日はお城へ行くのよ?」
勇「……朝から何言ってんの?そりゃ入学式だから高校には行くけどさ。……何?お城って」
母「いいから早く仕度しなさい」
勇「?」
*
(学校に登校する)
勇「おお、勇次。おはよ」
勇次「お、勇。はよ」
勇「何か今朝、うちの母ちゃんがヘンなこと言い出してさ……」
勇次「え?お前んとこも?うちもいきなり訳の分からんこと言い始めたんだぜ?」
勇梨「おはよー!また高校も私たち3人だけみたいね」
勇「お、おはよ」
勇次「おー勇梨。そうみたいだな……ってアレ何だ?まさか先生……じゃないよな?」
勇&勇梨「「げげっ!」」Σ( ̄□ ̄)Σ( ̄□ ̄)
変な格好をした先生「ようこそ勇者の諸君。さあ王様がお待ちだ」
一同「「「はぁ?」」」
王様の格好をした村長「良くぞ来た。選ばれし者たちよ」
勇次「うわホントに王様だよ!」Σ( ̄□ ̄)
村長「然様。我が村では、高校生になった子供たちは勇者として、村への貢献が決められておるのじゃ」
勇「……ホントかよ、初めて聞いたぜ」
勇梨「私も……」
村長「ついてきなさい」
(訳の分からぬまま移動させられる)
村長「ほら、ここがルイーダの酒場じゃ」
勇次「内田さんちの食堂じゃねえかよ!」
村長「何言っておる、ほら、ルイーダじゃ」
内田さん「ルイーダデス、ヨロシクネ」
勇梨「おもいっきり不自然なカタコトなんだけど……」
村長「ここでパーティーを組むのじゃ。ほれ、そこに登録されておる冒険者の一覧が載っておる」
内田さん「スキナヒトエランデネ」
いさむ「マジかよ……。なになに?『せんし/ヨシツネ』だって。何か強そーなのがいるぞ。どれだ?」
ヨシツネ「……(プルプルプル)」
いさむ「隣の爺ちゃんじゃねぇかよ!Σ( ̄□ ̄)もう(82)じゃ冒険は無理だろ!LV高すぎだよ!」
勇次「じゃあ他には……?何か『ウメ』とか『サクゾウ』とかしかいねーぞ……?大丈夫かよ……。あ、『ぶとうか/リキ』だって。どれだ?」
リキ「(椅子に座っている)………………」
いさむ「ダメダメダメダメ…………あれはダメ」Σ( ̄□ ̄)
勇梨「何でよ?すごく強そうじゃない、あの人」
いさむ「だってアレ、うちの父ちゃんだもん……」
勇梨&勇次「何っ!」Σ( ̄□ ̄)Σ( ̄□ ̄)
いさむ「確かに少林寺3段だけども!」
村長「……なんじゃ、まだ決まらんのか?」
勇次「まともな奴いねーじゃねぇかよ!」Σ( ̄□ ̄)
村長&先生「(ひそひそ)……」
勇次「なんだよ、怪しいな……」
先生「キミ!王様に対して無礼だぞ!ちょっと来なさい!」
いさむ「あっ、勇次!おい!」
( ……。)
勇梨「何なの急に……?」
勇次「うわああああああああああああぁぁぁっっっ!」
いさむ&勇梨「勇次っ!どうしたっ!?」
そうりょ/ゆーじ「髪の毛刈られた……」○| ̄|_(ガクッ
いさむ「おい!『そうりょ』になってるぞw、ゆーじ」Σ( ̄ー ̄)
ゆーじ「……ちくしょ、あいつらうちの実家が寺だってことに気付いたんだ!」
いさむ「(……なるほど)」
勇梨の母「勇梨ちゃぁ~ん?ちょっと来なさい」
勇梨「(ギクッ)えっ!ママ!何でいるのっ!?」
一同(嫌な予感)……。
勇梨「きゃあああああぁぁぁっ!!!」
ゆーじ「やはりか……」
いさむ「どうした!?」
まほうつかい/ゆうり「む、無理やりマントとミニスカート着させられた……(泣)。『女は誰でも魔法使いなのよ』……て、意味わかんないんだけど……」
いさむ&ゆーじ:Σ( ̄□ ̄)Σ( ̄□ ̄)
「……いや、これはこれでいいんじゃないかな」
「……うん、そうだな」
ゆうり「ちょっとっ!!」
村長「ふぉっふぉっふぉ。どうやら無事仲間を見つけたようじゃな、勇者よ」
一同「あんたが無理やり作ったんだろ!」Σ( ̄□ ̄)
村長「さて、次は冒険に出る前に武器を装備せねばな。武器は装備しなければダメじゃぞ?」
ゆーじ「こういうとこだけ妙に設定が細かいな……」
(武器屋へ移動)
武器屋「へいらっしゃい!」
いさむ「武器屋、てここ町の農具屋じゃねえかよ……」
村長「オヤジ、例のものを頼む」
武器屋「あいよっ!勇者特製の奴だね。ほらよっ!」
いさむ(ゆうしゃのナタを手に入れた)
ゆーじ(ひのきのぼうを手に入れた)
ゆうり(ひのきのつえを手に入れた)
いさむ「ナタかよ……」
ゆーじ「枝か……」
ゆうり「枝……」
村長「よし、立派に武器も揃ったな。それでは冒険に出発じゃ!」
一同「……」
ゆーじ「防具屋は無いのな」
いさむ「俺なんてまだ制服だぞ」
村長「まず君たちが向かってもらうのは、村の北の森じゃ。そこで出没するモンスターを倒してきてほしい」
ゆうり「モンスター?……ってホントにいるわけ?」
ゆーじ「この分だと、誰か着ぐるみでも着て襲ってきそうだな」
いさむ「この大人たちならやりかねんな」
村長「村の外は危険じゃからな。『せんし』を一人連れて行け」
(無言で後ろにいるヨシツネ)
いさむ「ええ~っ!?Σ( ̄□ ̄)戦士ってヨシツネ!?勘弁してよ……」
村長「頼んじゃぞ、ヨシツネ」
ヨシツネ「(無言で頷く)コクコク」
*
いさむ「さて、この辺だろ北の森って」
ゆーじ「森なんて広すぎてわかんねーよな」
ゆうり「ちゃんと看板立ってるわよ『北の森』って」
ヨシツネ「(プルプルプル)……」
一同「……」
ゆーじ「大丈夫かよ……」
いさむ「さて、今度は何が出てくるんだ?」
……ガサガサッ
イノシシがあらわれた。>コマンド?
一同「……」( ̄_ ̄||l)
「……あれ、本物だよね?」
「……ああ、俺一回見た事ある。残念ながら本物だ」
「マジかよ……」
>にげる
一同「うわああああぁあぁあぁっっっ!!!」
ゆうり「ちょっとアンタ!勇者でしょ!?女の子置いて逃げるんじゃないわよ!」
いさむ「うるせぇお前まで都合のいい時だけ勇者扱いするんじゃねぇよっ!」
ゆーじ「ゆうりちゃん俺が!俺がおぶってあげるよ!そうりょだし!(←?)」
ゆうり「ああっ!ヨシツネが!?」Σ( ̄□ ̄)
ヨシツネ「(プルプルプル)……」
いさむ「ああっ!ヨシツネ!」Σ( ̄□ ̄)
いさむ&ゆうり「ゆーじ頼んだ!」「ゆーじ君お願い!」
ゆーじ「何で俺があぁぁぁっ!!!……分かったよっ!!!」
*
いさむ「あ、危ない所だった……」
ゆうり「普通に本物じゃないの……」
ゆーじ「ぜぇっぜぇっぜぇっ……ゴホッゴホッ」
ヨシツネ「(プルプルプル)……」
いさむ「こんなのはゲームのモンハンだけにしてくれよな……」
……ガサガサガサッ
クマがあらわれた。>コマンド?
ゆーじ「……>コマンド?じゃねぇよ」
>ひっしでにげる
一同「勘弁してくれぇぇぇぇぇっっっ!!!」
いさむ「……誰だこんなとこにドングリ撒いた奴はっ!!!」
(帰ってくる一同)
いさむ「元猟師のヨシツネがいなかったらどうなってたか分からないぜ……」
ゆーじ「ああ、懐から猟銃取り出したときはまさかと思ったがな」
ゆうり「私も目を疑ったわよ。……今日は熊鍋ね。もうおなかペコペコ」
ヨシツネ「(にこにこ)……」
いさむ「……ん?」
ゆうり「何、あれ?」
いさむ「……おい、いつからうちの村の役場はラブホになったんだ?」
ゆーじ「……しらね」
ゆうり「何か下に人がたくさんいるけど?……嫌な予感」
村長「ほら!たった今帰ってきました!我が村の勇者一行です!」
観客「わあああぁぁぁっ!」
(観光客に囲まれる勇者一行)
ゆーじ「なんだなんだ?」
いさむ「何だこの騒ぎは?」
村長「さあ皆様、こちらが天龍村名物、天龍の勇者様ご一行ですよ!記念写真は順番に並んでください!はい、押さないで押さないで!」
垂れ幕:『勇者の伝説の地、天龍村へようこそ』
観光客「キャー!ホントに勇者って書いてあるんだ!かわいーっ!」
いさむ「か、かわいい?」
観光客「こっちは魔法使いだって!なんか森ガールみたい!」
ゆうり「も、森ガール?」
観光客「こっちの子はなんかハゲてるーっ!なんかキモーい!」
ゆーじ「何で俺だけ!?」
(ザワザワザワザワ……)
*
いさむ「……おいジジイ、詳しく聞かせてもらおうか」
村長「……ついにバレてしまったか……」○| ̄|_
ゆーじ「あんだけ騒げばな」
村長「実はな、この天龍村には古くからの言い伝えがあるのじゃ」
一同「言い伝え?」
村長「……そう。この天龍村には、古くからの勇者伝説が残されておるのじゃ」
一同「勇者伝説!?」
村長「……昔、この村には、『空高く龍駆け登る時、全ての魔を払う勇者が現れる』という伝説が……」
いさむ「ああ、あの駅前に去年の始めぐらいにできた石碑に書いてある奴?」
ゆーじ「はいはい、一昨年の村興し村議会でなんか決まった後、急に建てられた奴ね」
ゆうり「それまでには一っ言も聞いたことなかったあの伝説ね」
村長「……。オ、オホン、それでじゃな、せっかくそんな伝説があるんじゃから、こりゃあこの村の魅力を訪れる人々にもぜひ知ってもらわんといかんじゃろうと……」
一同「……(疑いの眼差し)」
村長「頼むっ!この村のために力を貸してくれぃっ!(土下座)」○) ̄|_
ゆーじ「そ、そこまでするか……っ!?」
いさむ「あーあ、天龍村なんて名前だけはカッコいいと思ってたんだけどな……」
村長「おっ、それはじゃな、谷から湧き登る白いもやが、まるで天翔る龍のようだったということから天龍村と……」
ゆーじ「何が天翔る龍だよ!あんのは龍みたいにグネグネ曲がった道路だけじゃねーか!」
村長「そこを何とかっ!頼むっ!!(土下座)」○) ̄|_
ゆーじ&ゆうり「村長……」
いさむ「……わかったよ……。村長がそんな軽々しく頭下げるなよ」
村長「あ、そう?( ̄ー ̄)☆じゃあ、明日からは天龍村観光親善大使として、毎日一時間『奉仕』の授業ができるからの、このカリキュラムに従ってじゃな……」
ゆーじ「カ、カリキュラム!?」Σ( ̄□ ̄)
村長「放課後には『勇者ショー』の稽古が始まるからの、あと町への出没はほどほどにの、『かゆい所に手が届きそうで届かない』ぐらいのレア感が重要じゃからな……」
ゆうり「ゆ、勇者ショー!?」Σ( ̄□ ̄)
いさむ「……」
ゆーじ「全部出来レースだったってわけかよ……」
村長「あとはじゃな……」
いさむ「あーわかった。……そういうことか、わかったよ。それならそれでOK」
村長「おーそうか、わかってくれたかの」
いさむ「俺は勇者として旅に出るぞ。こんな村、誰が居てやるかっての」
村長「な、なんじゃとぉっ!?Σ( ̄□ ̄)……いやいや、それは待ってくれ」
いさむ「いや待たねぇ。安心しろ、行く先できちんとこの村のことは宣伝してやるから」
村長「いや待った待った。勇者が居てくれないとこの村の観光が成り立たん」
いさむ「しらねーよそんなの。勝手に勇者饅頭でも何でも売りゃーいいじゃねえか。じゃあな」
ゆーじ&ゆうり「いさむ!」Σ( ̄□ ̄)「いさむ君!」Σ( ̄□ ̄)
村長「やばいぞ勇者が逃げる!Σ( ̄□ ̄)皆の者、捕まえるんじゃ!」
(ウ~ウ~ウ~!!!)
追い詰められる勇者
村長「ふふふ、もう逃げられんぞ勇者よ。……大人しくこの村の観光大使としてマスコットキャラになるが良い!」
いさむ「やだね!」
村長「勇者よ。一体何が不満なのだ?退屈そうな学校の授業からも解放されるし、きちんと村からの手当てとして、お主の小遣いだってUPしてもらうよう交渉してやっても良いぞ?」
いさむ「……ふざけんな」
村長「……何?」
いさむ『あんたらに決められなくても、自分の意思で進む道は決める、それが本当の勇者だ!』
一同「おお~っ!」
村長「勇者よ、見事な台詞じゃ。……分かった。ワシらの負けじゃ」
いさむ「やっと引き下がる気になったかよ」
村長「じゃが!勇者なら勇者らしく、最後にこのボスを倒してからゆけぃ!」
コツコツ……
母ちゃんがあらわれた。>コマンド?
>にげる
>ゆうしゃはにげだした。……だが、まわりこまれてしまった!
母「アンタ、出てくならこの間おこづかいの前借りした分、ちゃんと払ってから行きなさいよ」
いさむ「ぐうううぅぅっっ!それは無理っ!すいませんでしたぁ……っ!」○) ̄|_(バタッ
ゆうしゃたちはぜんめつした……。
村長「おお勇者、死んでしまうとは情けない……」
いさむ「死んでねーよ。……くそ、どいつもこいつも!覚えてろよ、絶対!」
一同「「「……こんな村、出てってやるーっ!!!」」」
勇者たちの伝説はつづく……