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ゾンビで滅んだ異世界を、シヴィライゼーション知識で再建する  作者: マルコ


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第二章 第一話 進化種の脅威と、朝会議

 薄曇りの朝が、村を静かに包んでいた。

 だが、その静けさは昨日までのそれとは違った。


 空気が重い。

 人々の身のこなしが固く、村の中に緊張が漂っている。


(……あの進化種のせいだ)


 ユウタは、冷たい水で顔を洗い、寝不足の頭を無理やり覚醒させた。

 ほとんど眠れなかった。視界の端に、あの“赤い瞳”が何度もちらついた。


「ユウタさん!」


 リュミエラが、早朝から駆け寄ってくる。

 薄い外套を羽織り、疲労の色が浮かんでいるが、その眼差しは強かった。


「皆、集まりました。

 朝の会議を……お願いします」


「ああ、すぐ行く」


 広場には、村の主要な人々が集まっていた。

 農地班のリーダー、木こりの代表、防衛班の兵士、クレア、村長……そしてクロウ。


 全員が強張った表情で、ユウタを待っていた。


「……では、始めます」


 ユウタは深く息を吸った。


「まず最優先事項は、

 進化種への対策 です」


 その言葉に、空気がざわめく。


「……本当に、あれがまた来るのか?」

「昨日は森に戻ったが……」

「夜に動く“上位グール”なんて、聞いたことが……」


 クロウが静かに言った。


「油断するな。

 あの動き……ただのグールではありえん。

 あれは“王都陥落の後期”に現れた、凶悪種の特徴に似ている」


「凶悪種……?」


 リュミエラが顔をしかめた。


「ええ……王都を滅ぼした最終段階の個体。

 魔導兵団が総出で討伐に向かったけれど……

 壊滅した、と聞いています」


 村人が震えた。


「あ、あんな化け物が……この村に……?」


「来ない保証はありません」

 ユウタははっきり言った。


「そして、その“来る可能性”を前提にして行動するべきです」


 沈黙。


 ユウタは、昨日のうちに描いた簡易の地図を広場の地面に広げた。

 村の全体図、周囲の森林、そして“進化種を見た地点”の位置が記されている。


「……まず、大事なことがあります。

 奴は“村の存在に気づいた”可能性が高い。」


 クロウが頷く。


「確かに……あれは“獲物を探す”ような動きだった」


 リュミエラは息を飲んだ。


「では……時間の問題、ということですか?」


「はい。だからこそ——

 今日から、本格的な“内政の第二段階”に入ります。」


 村の人々が固唾を呑んでユウタを見る。


「第二段階……?」


「ええ。

 村を守るためには、

 “食料”と“防衛線”を同時に強化する必要があります。」


 ユウタは指で地図をさした。


「まず、食料。

 昨日の区画分けだけでは不十分です。

 今日から“農業改革”に入ります。」


「農業……改革……?」


 農地班の老人が眉を寄せる。


「ど、どうなるんだい……?

 ワシら、畑をいじる以外は……」


「大丈夫です。

 俺が“やるべき順番”を示します」


 ユウタは指を折りながら説明した。


◆【農業改革:初期ターン(今日やること)】

① 土壌の状態を確認する


・酸性か、粘土質か

・休耕地を設定する

・雑草の除去


② 作物の選定


・麦(主食)

・豆(窒素固定で土を肥やす)

・野菜(短期の収穫用)


「これを交互に回すことで、土が疲れず……

 毎年収穫が可能になります」


「そ、そんな方法が……?」


 村人はざわついた。


◆【防衛改革:初期ターン】

① 南側の見張り塔を増築


・高さを2メートル上げる

・武器置き場を設置


② “誘導柵”の整備


・グールを特定の道に誘導

・近づいたところを集中して迎撃


③ 夜の巡回を三人→六人に増強


・交代時間も短くする

・危険時はすぐに鐘で全体警戒へ


 説明を終えた瞬間、クロウが感嘆したように息を吐いた。


「……一日でそこまで考えていたのか、お前は」


「これでも、まだ序盤です」


 ユウタは真剣に言う。


「村を守るためには、

 “食料の安定”と“防衛の強化”はセット です。

 どちらかが滞れば……生き残れません。」


 クレアが静かに言った。


「……本当に、“文明を作り直してる”みたい……」


(その通りだよ。

 まるでCivの序盤ターンだ)


 ユウタは心の中で呟いた。


◆村長が震える声で言う。


「ユウタ殿……

 我らは……生き残れるのでしょうか……?」


 ユウタは真っすぐ老人を見た。


「……生き残れます。

 ただし、“正しい順番”でやれば、です。」


 村人たちの眼差しが、希望を宿した。


 リュミエラが一歩前へ進む。


「ユウタさん。

 今日、私たちに……何をすればいいか、教えてください。」


 ユウタは深く息を吸う。


「今日のメインは——

 “畑の三圃制の確定”と“防衛線の拡張” です。」


「三圃……せい……?」


「輪作の仕組みです。

 畑を三つに分けて、交互に休ませる。

 これをやらないと、土地は一年で死にます。」


「一年……?」


「そうです。

 何十年も続けたいなら、土地を疲れさせてはいけないんです。」


 農地班の老人が小さく呟いた。


「ワシらが苦労しても……

 土地は報いてくれなかった……

 だが、この方法なら……」


「必ず報いてくれます。

 この村は、必ず再生します。」


 その瞬間——


 村の空気が、音を立てるように変わった。


 ただの恐怖に支配された集団が、

 “未来を信じる集団”へと変わった瞬間だった。


 



 ユウタはリュミエラ、クロウ、クレアを引き連れ、広場の中央へ出る。


「では、今日のタスクを配ります!」


 その声に、村人たちが一斉に動き出した。


 農地班は畑へ。

 防衛班は柵へ。

 水路班は昨日の続きに。

 クレアは病人の看護と労働管理へ。


 村が、一つの“文明”として動き始めた。


(よし……これで第2ターン開始だ)


 ユウタは気を引き締める。


 だがこの日の終わりに、

 “この村で初めての脅威”が姿を現すことを——

 まだ誰も知らなかった。

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