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ゾンビで滅んだ異世界を、シヴィライゼーション知識で再建する  作者: マルコ


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第一章 第七話 夜襲の前兆

 その夜、村は久しぶりに活気を取り戻していた。


 水路に水が流れ、畑の区画も整い、南側には見張り台が完成した。

 疲労はあれど、人々の顔には希望の色があった。


「明日から、もっと良くなるぞ……」

「生きられるかもしれない」

「ユウタさんのおかげだ……!」


 その声を聞きながら、ユウタは少し照れくさい思いで寝床に向かった。


(……こんな日が来るなんてな)


 会社では、誰にも必要とされなかった。

 評価されることもなかった。


 でも、この世界では——

 “自分の知識が、人を救っている”。


 その実感が、胸の奥を熱く満たしていた。



 だが、世界は甘くなかった。


 真夜中。


 ユウタは、ふと目を覚ました。

 外から聞こえる……重い何かが地面を踏む音。


 ドン……

 ドン……

 ドン……


(……何だ?)


 胸騒ぎを覚え、布団から飛び出す。


 寝間着のまま外へ出ると、見張り台にいた若い兵士が青ざめた顔で叫んだ。


「ユ、ユウタさんっ!!

 南側……森の中に……“何か”がいます!!」


 クロウも駆け寄ってくる。

 剣を抜いたその顔は険しい。


「おい! いくつだ!?」


「わ、わかりません……数じゃなくて……

 ただ……あれは……!」


 兵士は唇を震わせながら指を差した。


 森の暗闇。

 月明かりの差す場所に——“影”が立っていた。


 いや、“影”と呼ぶにはあまりに異様。


 人より大きい。

 背中が盛り上がり、肉が腐敗しながらも筋肉が異常に肥大している。

 腕は長く、地面を引きずるように垂れていた。


 そしてその瞳は——

 赤く、獣のように光っていた。


(……進化種)


 直感でそう理解した。

 ゲームでも、一定ターンを経過すると通常のゾンビとは違う“強化個体”が現れる。


 ユウタの背筋に冷たい汗が流れる。


「グォォォォァァァ……」


 それは、通常のグールとは決定的に違う咆哮を上げた。


 地面が震えた。

 村中がざわつき、戸が開く音が連鎖する。


 リュミエラも寝間着のまま駆けつけてきた。


「ユウタさん!!

 あれは……!?」


「……グールじゃない。

 “上位種”だ。

 ただの群れじゃ……止められない」


 クロウも歯を食いしばった。


「まずい……

 まさか、このタイミングで現れるとは……!」


 リュミエラは恐怖に表情を強張らせながらも、ユウタの袖をつかむ。


「ユウタさん……どうすれば!」


 ユウタは、進化種の動きを凝視した。

 その巨体が、森の縁をゆっくりと歩き、匂いを嗅ぐように鼻を鳴らしている。


 村の位置を探っている——

 そんな動きだった。


(……ターンが進んだんだ。

 水路を作って、村が動き始めたことで……

 “世界が反応した”んだ)


 背筋に悪寒が走る。


(この世界は、静的じゃない。

 こっちの動きに合わせて……敵も強くなる)


 つまり——

 ただの村の再建では済まない。


 “進化し続ける脅威との戦争”になる。


 ユウタは深く息を吸い、リュミエラに告げた。


「……明日、“本格的な防衛線”を作ります。

 今日の作業だけでは……

 あれは止められない」


「……っ!」


 恐怖の中でも、リュミエラは強く頷いた。


「わかりました……!

 ユウタさん……

 どうか……この村を……!」


 ユウタは静かに剣を握るクロウを見た。


「クロウさん。

 今日から、防衛班の人数を倍にしてください。

 そして……夜の巡回を強化します」


「わかった。

 あれを迎え撃てる態勢を作る!」


 ユウタは赤い瞳を輝かせる進化種を見つめる。


(……次のターンが、勝負だ)


 進化種は、村の方をじっと見つめ——

 やがて森の奥へゆっくりと消えていった。


 それが、嵐の前触れであることは、

 誰の目にも明らかだった。



 夜が明ける。

 村には緊張の空気が張りつめていた。


 ユウタは深い息を吐く。


(……今日から、“文明再建”は第二段階に入る)


 その先には、敵の進化と、生存者の未来がかかっている。

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