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ゾンビで滅んだ異世界を、シヴィライゼーション知識で再建する  作者: マルコ


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第四章 第二話 動く迷宮と“人型拘束体”

 中層の通路を進むにつれ、

 ユウタの胸の奥にある“違和感”は強まっていた。


(……壁の脈動が変わってきた)


 外殻や中層前半は、

 黒と赤の“脈管”が壁を走っていた。

 しかし今は――


「ユウタ、見ろ。」

 クロウが低い声で言う。


「……壁に、穴が空いてやがる。」


 天井から床まで続くような、細長い亀裂。

 その内部は真っ暗で、

 底が見えない。


 ガロンが矢をつまんで投げ込む。


 ポタン……

 その音が、異様に深い場所へ落ちていく。


「……嫌な音だ。

 底がねぇんじゃないか?」

 ガロンが言う。


「底はあります。」

 ユウタは即答した。


「ただ、“生物反応を吸収する構造”です。

 落ちたものを“素材”として取り込む――

 そんな仕組みだと思います。」


 クレアが口元を押さえた。


「じゃあ……

 あそこに落ちたら……?」


「助かりません。」


 クロウが剣を握り直す。


「……気をつけて進むぞ。

 ここからは本当の中層だ。」


◆迷宮が“動き出す”


 さらに進むと、

 ユウタは異変に気づいた。


(……あった。

 魔力線の流れが変わった)


「止まって。」


 三人がブレーキをかける。


「どうした?」

 クロウが問う。


「後ろの通路……“閉じ始めてます”。」


「……は?」


 振り返ると、

 入口側の通路がゆっくり“狭まって”いた。


 壁が肉のように蠢いて膨らみ、

 道を塞ぎ始めている。


「嘘……」

 クレアが震える。


 ガロンが矢を構えるが――


「矢じゃ止まりません。」

 ユウタは首を振る。


「これは“迷宮可変機構”。

 侵入者を一定のルートに誘導する迷路です。」


「どこへ誘導してる?」

 クロウが言う。


 その問いに、

 ユウタは脈動をなぞるように壁へ手をかざし――


「……制御区画です。」


「つまり――」

 ガロンが矢を下ろす。


「遺構の“本丸”が、

 俺たちを呼び込んでるってことか。」


 ユウタは無言で頷いた。


(目的は何だ……

 侵入者の排除?

 それとも――観測?)


◆“音”が聞こえる


 進むにつれ、

 通路の奥から不気味な音が聞こえ始めた。


 カサ……カサ……カサ……


「……虫?」

 クレアが肩を震わせる。


「違う。」

 ユウタは息を呑んだ。

「あれは――“歩行音”。

 しかも複数。」


 クロウは剣を抜く。


「来るぞ。」


 その瞬間――

 通路の暗闇から、

 “人影”が歩いてきた。


「……人?」

 ガロンが困惑する。


 だが違った。


◆“人型拘束体(Prototype-H)”の登場


 それは、確かに人の形をしていた。


 しかし肌は白い石のように硬く、

 眼窩には目がなく、

 胸元には“拘束具”のような金属が食い込んでいる。


 動きは遅い。

 だが足音が重い。


 ド……ド……ド……


 その背中には――

 黒い管が突き刺さり、

 遺構の壁に伸びていた。


 まるで“生産途中の人間型”が

 仮の脚で歩いているような光景だった。


 クレアが青ざめる。


「……あれ、人……なの……?」


 ユウタは小さく首を振る。


「人じゃありません。

 “人の型に作られた器”。」


「器……?」


「はい。

 魔導文明が作った生体兵器の“雛型”です。

 魂も感情もない。

 ただ動くだけの人形。」


 クロウが一歩前に出る。


「距離5m。

 ……敵意は?」


 ユウタは分析する。


(動きは遅い。

 攻撃反応は見られない。

 だけど――)


「敵意なし。

 ただし――“近づいたものへ反応するセンサー”を持ってる。」


 ガロンが矢をつがえる。


「撃つか?」


「まだ。」

 ユウタが制止する。


「拘束体は、攻撃されるまで攻撃しません。

 防衛装置の一種で、

 “侵入者の動きを記録する監視体”だと思われます。」


 クロウが吐き捨てた。


「気味が悪い……」


「でも、避けるだけなら容易です。」


 ユウタが手で動線を示す。


「右側の隙間を通ります。

 拘束体は“範囲外”なら動きません。」


 三人が頷き、

 拘束体の横を静かに通る。


 その瞬間――

 拘束体がわずかに首を傾けた。


 ギギ……


 クレアが悲鳴を抑える。


「ゆ、ユウタさん……!」


「大丈夫。

 逃げる動作はしない。

 観測してるだけです。」


 拘束体の胸の金属が赤く点滅する。


(……記録している。

 外界の“侵入者データ”を)


(遺構は俺たちを“解析”しているんだ)


◆迷宮の奥――制御区画の前兆


 拘束体を抜けると、

 通路が真っ赤に染まり始めた。


 脈動は激しい。

 鼓動は外殻より倍速。


 ドクンッ……ドクンッ……ドクンッ……!


 クレアが耳を塞ぐ。


「心臓みたい……

 ここ、遺構の中……?」


「はい。」

 ユウタは壁へ触れる。

(温度が……上がってる)


 クロウが言う。


「ユウタ。

 この先に“鍵”があるんだな?」


「あります。」


 ガロンが歩を進める。


「じゃあ行こう。

 制御装置を見つけて、止める方法を探す。」


(そうだ……

 止める方法は、絶対にある)


 ユウタは深呼吸し、

 最後の通路へ足を進めた。


◆制御区画の“扉”


 通路の先に、巨大な門があった。


 高さ6m。

 重厚で、表面に古代の文字が刻まれている。


 クレアが震えながら読み上げる。


「こ……これ……

 魔導文明語……?」


「読める?」

 ユウタが問う。


「少しだけ……

 “起動核・制御層”……って読める……」


(間違いない……

 これは制御区画の門だ)


 クロウが剣を構える。


「ユウタ。

 開けられるか?」


「はい。

 護符を使います。」


 ユウタはリュミエラから託された護符を取り出し、

 門の中央へかざす。


 護符が赤く光り、

 門が低く唸るような音を立て始めた。


 ゴォォォ……


 ガロンが言う。


「……開くぞ。」


 やがて扉がゆっくりと左右に開いていく。


 冷たい空気が吹き出し、

 足元に白い霧が広がった。


 その奥に――


「……っ……!」


 クレアが声を失う。


 クロウの眉が跳ねる。


 ガロンが固まる。


 ユウタも息を呑んだ。


◆そこにあったのは、“大量の人型拘束体”


 広大な円形の部屋。


 壁一面に、

 人型拘束体が数十体、並んでいた。


 頭から足まで拘束具で固定され、

 胸部には魔力管が刺さっている。


 そのどれもが――

 “まだ生産途中”という状態だった。


「……これが……

 遺構の……本性……?」


 クレアの声は消え入りそうだった。


 ユウタは喉を鳴らし、

 言葉を絞り出す。


「……これは……

 完全体の前段階(Prototype-H2)

 量産ライン……」


 クロウが拳を震わせて言う。


「ふざけんな……

 こんなもんが動いたら……国が滅ぶどころじゃねぇぞ……!」


(間違いない。

 これは“兵器工場”だ。

 しかも、性能は桁外れに高い)


 部屋の奥――

 巨大な柱が脈動している。


 ドクン……ドクン……ドクン……


(あれが……制御中枢)


「行こう。」

 ユウタは言う。


「制御装置を……止める。」


 三人が頷いた。


 その瞬間――


 ピシ……ッ


 拘束体のひとつが、微かに震えた。


 クロウが剣を構える。


「ユウタ……!」


 ユウタは叫ぶ。


「まだ稼働はしてない!!

 制御区画の“鍵”を抜けば止まる!!

 急げ!!」


 四人は、制御中枢へ向かって走った。


(遺構の起動核……

 必ず止める!!)

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