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ゾンビで滅んだ異世界を、シヴィライゼーション知識で再建する  作者: マルコ


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第三章 第六話 新型ゾンビ襲来 ――外周監視線の初戦闘

遺構が夜空へ黒い渦を広げてから数時間。

 深夜。

 村は寝静まっているようで、誰ひとり眠れていなかった。


 ユウタもまた、薄い布団の上で目を閉じたまま、

 遺構の鼓動を耳の奥で感じていた。


 ドクン……ドクン……


(……近い。

 あれは確実に“何か”を外へ送り出す準備をしている)


 明日からの三日間は、

 前線基地・装備強化・二段塔・教育――

 全てをフル稼働させなければならない。


 だからこそ――

 この“夜”を平穏に越える必要があった。


 しかし。


 平穏の方が、先に壊れた。


◆夜半、見張り塔の鐘が鳴る


 突如、鋭い鐘の音が夜を裂いた。


 ガンガンガンガン!!


「っ!? 来た……!」


 ユウタは跳ね起き、

 装備もそこそこに外へ飛び出す。


「敵襲!! 北東の見張り塔!!」

「二体確認、いや三体……!!」


 見張りの叫びが村に響き渡る。

 すでにクロウが駆けてきていた。


「ユウタ、急ぐぞ!!」


「はい!」


 リュミエラも灯りを持って走ってくる。

 クレアは薬草袋を抱えて震えているが、足は止まらない。


「ガロンは!?」

「先に塔へ向かいました!」


 ユウタたちは北東の見張り塔へ急行した。


◆外周監視線の“外側”に、異形が立っていた


 見張り塔の上で、若い兵が悲鳴のように叫ぶ。


「動きが……早い……!

 普通のゾンビじゃありません!!」


(やはり来たか……!

 遺構の第二段階起動の直後……

 “新型”が来るとしたら今日しかない)


 ユウタは息を呑む。


 月明かりの中、

 村の外側で“三つの影”が揺れていた。


 その姿は、これまでのゾンビとはまるで違う。


◆新型ゾンビ①:汚染種(Contaminated)


 一体目は――

 身体が黒い霧を纏っていた。


「……身体が、溶けてる……?」


 クレアが震える。


 肉は崩れ落ち、骨は露出し、

 しかし歩行は滑らかで、

 まるで体が“液状化”しているようだった。


(これは……汚染地の土と同じ反応……!

 遺構の黒い液――“溶解性”の汚染を取り込んだ個体)


 ユウタは叫ぶ。


「触れたら危険です!

 あの体液は“腐食系”!!

 戦士は接触ダメージあり!!」


◆新型ゾンビ②:高速型(Runner)


 そして二体目。


「は、速い……!?」

 見張りが叫ぶ。


 常人の走る速度どころではない。

 四足獣のように地面を蹴り、

 影が瞬間移動のように滑る。


「ゾンビが、あんな……!」

「避けられねぇぞ、あれ……!!」


 クロウさえ、目を細めて呟いた。


「……速度は俺と同等か、それ以上か……」


(これは遺構が“運動性能”を強化した結果……)


◆新型ゾンビ③:知性持ち(Watcher)


 そして三体目。


「……あれは……何?」


 リュミエラが声を失う。


 その個体は――

 まっすぐ村を見ていた。


 蠢く黒い肉の中に、

 真紅の単眼 がひとつ。


 昨日、遺構内部で見た

 “赤い目”とまったく同じ。


(監視個体……!

 遺構の中枢装置と連動している!!)


 ユウタは背筋が凍る。


「皆、絶対にあれを近づけてはダメです!!」


 クロウが剣を構えた。


「……わかった。

 汚染種、高速型……そして“知性持ち”か。」


 息を吐く。


「三種……いや“適応型兵器”だな。」


 ユウタは叫ぶ。


「クロウさん!!

 絶対に単独で突っ込まないでください!!

 あいつらは互いに“相乗効果”で動きます!!」


「わかってる!!」


◆戦闘開始 ――まずは“情報戦”


 塔の上のガロンが叫ぶ。


「撃ちます!!」


 矢が飛ぶ。

 しかし高速型は紙一重で回避する。


「っ……!

 避けた……!」


(やはり……高速型は“反応速度”が高い!)


 次に汚染種へ矢が刺さる。

 だが、矢は溶けた。


「矢が……!!」


(腐食耐性……!!)


 そして知性持ちは――

 全く動かない。

 ただじっと村を見つめていた。


 その単眼が、

 ユウタを捕らえた。


「……っ!!」


(見られている……!

 遺構の“中核AI”が、この個体越しに村を観測してる!!)


「クロウさん!

 まず汚染種をクロスボウで仕留めます!

 物理攻撃は効きません、腐食が強いので!」


「わかった!!

 バルド! クロスボウを持て!!」


「はい!!」


 村人たちが動き始める。


◆汚染種撃破


 クロスボウの鉄矢が放たれる。

 汚染種は避けられない。


「……!!」


 鉄矢が胴に深く刺さる。

 汚染種の動きが止まり、

 やがて黒い液を滴らせて崩れ落ちた。


「一体……!」


「まだ二体!!」


◆高速型が突っ込んでくる


「来るぞ!!」

 クロウが叫ぶ。


 高速型は地面をえぐりながら迫る。

 だが――

 外周監視線の“縄柵”が、わずかに動きを遅らせた。


(これだ……!

 このための柵! “減速線”!!)


「今だ!!

 バルド、脛!!」


「はいっ!!」


 クロスボウの矢が放たれ、

 高速型の片脚に突き刺さる。


「ギィッ!!」


 バランスを崩したところへ、

 クロウが踏み込む。


「うおおおおお!!」


 剣が、頭蓋へまっすぐ振り下ろされた。


 高速型は倒れる。


「二体……!」


◆残るは“知性持ち”


 ただひとつ残った個体。

 動かないまま、こちらを見ている。


「どうすればいい……?」

「動きが……読めない……」


 クロウが低く言う。


「……あれは戦い慣れてる気配がある。

 俺が突っ込んでも……“誘導”されるだろう。」


(そう。

 あれは“戦うため”ではなく、“観測のため”の個体)


 ユウタは静かに言った。


「触れてはいけません。

 あれは“情報収集個体”です。」


「情報……?」

「遺構が……私たちを見てる……?」


 村人の背筋が震える。


「はい。

 あれを破壊しても、“遺構へ情報が送られた後”になってしまいます。

 だから――」


 ユウタは深く息を吸った。


「炎で焼きます。

 腐食も再生も関係なく、情報も残らない。」


 クロウが頷く。


「火責めだな。

 やれるか?」


「できます。」


 バルドが油壺を持ってくる。


「ユウタさん、これを!!」


「ありがとう!」


 油壺を矢に塗り、

 ガロンが火矢をつがえる。


「いきます!!」


 弦の音。

 火矢が飛ぶ。

 知性持ちの単眼がそれを追う――

 だが動かない。


 火矢が命中し、燃え上がる。


ボッ!!


「ギィイイイイアアアアア!!!!!」


 赤い単眼が激しく輝き――

 次の瞬間、

 体は黒い塵となって崩れた。


 風に揺られ、消えていく。


 ユウタは声を絞り出した。


「……三体、撃破。」


 村人たちは、震えたまま静かに剣を下ろした。


◆戦闘後――ユウタの確信


 静寂が戻る。

 しかし全員が気づいていた。


 これが――

 “始まり”にすぎないことを。


 クロウが真剣な顔で言う。


「ユウタ……

 あの三体、まるで“役割分担”されてた。」


「はい。」


「汚染・速度・知性……

 あれは“軍勢”だ。」


「はい。」


「だが数が少なかった。

 ……偵察か?」


「偵察です。」

 ユウタははっきり言った。


「あの三体は、

 遺構の“第二段階起動の試験個体” でした。」


 村人たちは息を呑む。


「じゃ、じゃあ本番は……?」

「何が来るんだ……?」


「……それを知るために、

 中層へ潜ります。

 遺構の“進化条件”を特定します。」


 リュミエラが震えた声で言った。


「ユウタさん……

 あなたしか……頼れません。」


「大丈夫です。

 勝ち筋は、あります。」


 ユウタは拳を握る。


(文明を上げる。

 遺構を理解する。

 そして――止める)


(そのための内政ターンを、

 今から三日間でやり切る!!)


 その瞬間――

 遺構の上空の黒い渦が、

 より赤みを帯びた光を放った。


 鼓動が――

 さらに速くなる。


 ドクン……ドクン……ドクン……!


(急がなきゃ……!

 本当に、“何か”が孵る!!)


 ユウタの目に決意が宿った。

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