第三章 第四話 緊急会議と“禁忌兵器”の影
遺構から逃げ帰ってきたユウタたちが村に戻ると、
外周監視線の見張りが不安そうに駆け寄ってきた。
「ユウタさん! クロウさん!
……その、怪我は!?」
「ない。だが……」
クロウは振り返り、森の奥を睨む。
「状況は最悪だ。
遺構の内部が、動き始めている。」
見張りたちは青ざめた。
「……あれが……また動くのか……」
「早く皆を集めねぇと……!」
リュミエラの名を呼ぶ間もなく、
村人たちは広場へ集合し始めていた。
どこかで“嫌な脈動”が聞こえたのだろう。
黒い霧の封鎖区域は昨日より濃くなり、
その存在が村人たちの胸を強く締め付けていた。
◆緊急会議
広場の中央。
ユウタ、クロウ、ガロン、クレアが報告を始める。
わずか数分で、村の空気は完全に変わった。
◆ユウタの報告(要点)
・内部に“中央台座”
・黒い脈動球が存在
・球体はひび割れ、黒い液体が漏出
・その液は“石を溶かす”
・球内部に“赤い点(目)”のような光
・遺構全体の振動が強化
リュミエラは手で口元を押さえた。
クレアは震えている。
村人たちは息を呑んだまま動かない。
クロウが重い声で続けた。
「……遺構の中枢は、“何かを孵化”させている。
あれは悪魔の巣そのものだ。」
ざわっ……!!
村に強烈な恐怖の波が走った。
「ひ、孵化って……人食いの化け物か……?」
「じゃ、じゃあ進化種は……やっぱりあれが……」
「まだ確定じゃない。」
ユウタが遮った。
「ただ、“遺構と進化種が連動している”のは間違いないです。」
◆村人の不安が爆発する
「ユウタさん……どうすればいいんだ……?」
「また襲ってくるのか……?」
「鍛冶場だけじゃ……間に合わない……!」
怯えた声が次々に上がる。
そこで、リュミエラが前に出た。
王女としての気高さを纏い、はっきり言い切った。
「恐れないで。
遺構を放置すれば、確かに私たちは滅びます。
でも――
遺構を解析し、止める術を見つけられるのはユウタさんだけです。」
全員の視線がユウタに集まる。
(重い……でも逃げる気はない)
ユウタは胸に手を当て、深く頷いた。
「はい。
次の潜入で“中枢構造”を把握します。
そのために、今日から村全体を“遺構攻略モード”に移行します。」
クロウが口を開く。
「具体的に、何をする?」
⭐【1】装備の強化:中世前期へソフトランディング
「まず、武器と防具を強化します。」
ユウタは鍛冶場を指差した。
「クロウさん、鉄の加工を“武器特化”に切り替えてください。」
「剣か?」
「いえ、“短剣”と“槍頭”を先に作ります。」
「なぜだ?」
「短剣は狭い遺構内部で振り回せます。
槍頭は“距離を取る”ための第一装備。
盾も軽量タイプを優先します。」
クロウはすぐに理解し、笑った。
「……戦場を見てるな。
わかった。今日から鍛冶場は武具鍛造だ。」
⭐【2】探索隊の再編成
「探索隊は、
・前衛:クロウ
・近衛:ガロン
・医療:クレア
・後衛兼指揮:俺
この四人を基本にします。」
ガロンが頷く。
「俺は弓を鍛えておく。
狭い空間でも射てるよう短弓に切り替える。」
「ありがとう。」
⭐【3】遺構前線基地(仮設)の建設
「遺構手前300m地点に、“前線基地”を作ります。
物資置き場、避難スペース、矢倉兼拠点。」
クレアが目を見開く。
「ま、前線基地……!?」
「はい。
遺構と村を往復する動線を短縮できます。
負傷者の処置も可能に。」
クロウがうなる。
「本気で“遺構攻略戦”を始めるんだな……」
「はい。
あれを止めない限り、文明は進めません。」
⭐【4】“汚染対策班”の新設
「昨日の霧の拡大を見る限り、
遺構の汚染は今後も増えます。
そのために、専用の班を設けます。」
農地班のバルドが前に出る。
「やります……!
土壌を失うのは、村にとって命を失うのと同じだ……!」
「ありがとう。」
◆リュミエラの“決断”
話が一段落した頃。
リュミエラが静かに口を開いた。
「ユウタさん。
遺構内部で、赤い光の“目”を見たのでしょう?」
「……はい。」
「それは……“生き物”なのですか?
それとも機械……?」
ユウタはしばし沈黙し、
やがてゆっくりと言った。
「わかりません。
ただ――
あれは“敵”です。
そして……おそらく“兵器”です。」
村人から息を呑む音がした。
「兵器……?」
「はい。
魔導文明時代に作られた、何らかの“処理装置”……
制御を失い、再起動を始めた。」
クロウが低く言った。
「つまり……
“古代文明の暴走”か。」
「その可能性が最も高いです。」
リュミエラは両手を胸の前で重ねた。
「……ユウタさん。
遺構を止められる可能性は……?」
ユウタははっきりと言った。
「あります。
文明レベルを上げて、“制御装置”にアクセスできれば。」
「文明……?」
「はい。
建築、魔術、軍事、数学――
あらゆる“技術点”を上げていけば、
遺構の内部システムを理解できます。」
その言葉に、
村人たちの目に、恐怖の奥に“希望”が灯った。
◆会議の終わりと、決意
「では――
“遺構中層部への潜入”は三日後。」
クロウが頷く。
「装備を整えておく。
鍛冶場は今日からフル稼働だ。」
ガロンも言う。
「矢は百本用意する。」
クレアは拳を握りしめた。
「薬草を大量に調合しておく。
何があっても……あなたたちを助ける。」
リュミエラはユウタの隣に立ち、静かに言った。
「ユウタさん。
どうか……必ず生きて戻ってきて。
あなたがいなければ、この国は滅びます。」
ユウタは深く頷いた。
「戻ります。
……遺構を、必ず止めに行きます。」
その瞬間、
大地が小さく震えた。
――ドクン。
――ドクン。
遺構の“覚醒率”が、またひとつ進んだ。
(急がないと……
本当に“何か”が孵化する)
ユウタは拳を握った。
(文明で、遺構を止める)
(今度の潜入は――
本当の“戦いの始まり”だ)




