第二章 第九話 鍛冶場の建設と、“初代国家の形”
翌朝、村は夜明け前から動き出していた。
昨日の会議で“国家化”が宣言され、
村人たちの目つきはこれまでとまるで違う。
「鍛冶場はどこに作るんだ?」
「水路から近い方が冷却もしやすいぞ」
「俺たちは道を整える! 土をならすんだ!」
活気、希望、緊張――
すべてが混ざりあい、村の空気が一段階“上”へ変わっていた。
(この雰囲気……
まだ小さいけど、“都市”の空気だ)
ユウタは、自分でも驚くほど高揚していた。
◆
◆鍛冶場の場所選び
「鍛冶場はここでどうだ?」
クロウが指さしたのは、村の中央から少し外れた空き地だった。
「ここなら水路が近く、炭焼き小屋も隣に置ける。
火を扱う場所は、井戸から離したい。」
「完璧です。」
ユウタは頷いた。
(鍛冶場は文明の心臓だ。
鉄器と道具、武器の質が上がれば、村全体の効率が跳ね上がる)
リュミエラも視察に来ており、深く頷いた。
「ここなら護衛もしやすいわ。
鍛冶場は村の“軍事と生産”の中心になりますから。」
クロウは腕をまくり、土を掘り始めた。
「基礎は石だ。
火が落ちても延焼しないようにする。」
ガロンも木材を運んできて言う。
「屋根は耐火性の高い“森杉”がいい。
湿気に強いし、割れにくい。」
「了解です!」
若者たちが走り回る。
(自発的に動いてる……
本当に、村が変わった)
胸が熱くなった。
◆
◆ユウタの“指示”が、村の形を変えていく
ユウタは図を描き、次々に指示を出した。
「水路から鍛冶場まで、細い支流を分けます。
冷却用の水を多めに流してください。」
「は、はい!」
「この道は踏み固めて“村の主道”にします。
物の運搬が2倍速くなります。」
「わかった!」
「畑は北と東の二か所でローテーション。
三圃制の外輪を拡張します。」
「任せてくれ!」
指示はどれも専門的だが、
ユウタの説明は誰にでもわかるようになっていた。
(元の世界で、
こんなに“誰かに必要にされる自分”がいたか……?)
そんな感情が一瞬浮かんだが、すぐに打ち消した。
(今は関係ない。
この村を、生かすことだけを考えよう)
◆
◆鍛冶場――“文明の炎”が灯る
昼過ぎ、基礎が完成し、
クロウが試しに火を入れた。
「……どうだ?」
ゴウッ……!!
燃え上がる炎に、村人たちが息を呑んだ。
「すごい……」
「クロウさん、本当に鍛冶屋みたいだ……」
「これで……武器が作れるのか……!」
クロウは汗をぬぐいながら笑った。
「剣や槍はまだ無理だ。
だが“鉄器の修繕”くらいなら今日からできる。」
「それで十分です。
古典文明の第一歩が踏み出せました。」
ユウタが言う。
「こて……ん?」
「文明の……第一歩……?」
村人たちはその言葉の真意がわからなくても、
組み上げられた鍛冶場の熱と匂いを感じていた。
それはわかる。
ここから、村は“国”になるのだと。
◆
◆リュミエラの“宣言”
鍛冶場の完成を見届けると、
リュミエラが村人たちの前に立った。
その姿は昨日までの「村の姫」ではなく――
もう“国の王女”だった。
「皆。
私は、この村を……いえ、この地を、
“新たな王国”へと育て上げることを決意しました。」
ざわぁ……!!
「王国……!?
姫様が……本当に……?」
「もちろん、すぐに広い土地が手に入るわけではありません。
でも、少しずつでいい。
私たちは“生き残るための国”を作る。」
リュミエラの声は震えていない。
強く、美しい声だった。
そして、彼女はユウタの方を見る。
「ユウタさん。
あなたを……この国の“参謀”として任命します。」
「さ、参謀!?」
ユウタは思わず声を上げた。
「当然です。
あなたはこの村を救い、
文明を一段階押し上げた。
あなたほど国づくりの知に秀でた人を、
私は他に知りません。」
村人も口々に頷く。
「ユウタさんが参謀なら……!」
「心強い……!」
「もっと暮らしが良くなる!」
ユウタはしばらく沈黙し――
やがて静かに頭を下げた。
「……やります。
村のために。
リュミエラさんのためにも。」
リュミエラは嬉しそうに微笑んだ。
◆
◆夜――“文明レベルアップ”は完了したかに見えたが……
その夜。
村の見張り台。
クロウと交代で見回りをしていたガロンが、
突然息を呑んだ。
「……なんだ……あれは……?」
森の奥。
遺構のある方向。
そこから、
薄く黒い霧のようなものが立ち上り、
天へ伸びていた。
「おい……クロウ……!!
遺構、また動いてるぞ!!」
遺構から――
不規則な、しかし確かな“脈動”が響いていた。
昨日よりも、
明らかに強い。
◆
その音は、ユウタの寝床にも響いていた。
(また……強くなってる……
遺構の起動が進んでいる)
ユウタは暗闇の中で起き上がり、
静かに拳を握った。
(文明レベルを上げたことで、
敵のフェーズも動いている……?)
Civなら当然のことだ。
こちらが進化すれば――
敵も進化する。
(次のターンは……
本気で“遺構との戦い”が始まる)
外では、黒い霧がゆらゆらと揺れ、
村の方へわずかに伸び始めていた。




