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ゾンビで滅んだ異世界を、シヴィライゼーション知識で再建する  作者: マルコ


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第二章 第六話 外周探索班の編成と、森に眠る“遺構”

 進化種の死体の焼却が終わる頃、太陽が村の上に昇り始めた。

 森の影は濃いままだが、闇の恐怖は少し薄れている。


 ユウタは村の広場に皆を集め、次の指示を出した。


「では今日の午後……

 外周探索班の編成 を行います」


 ざわ……と村人が揺れた。


「外周って、森へ行くってことか……?」

「昨日のあれを見た後だと……」

「怖え……」


 不安は理解できる。

 だが――探索は必要だった。


 ユウタは前に出た。


「昨日倒した進化種の“黒い血”。

 あれは、自然な現象ではありません。

 森の中に……“何かある”。

 放置すれば、もっと強い個体が生まれます。」


 その言葉に、村人たちは息を呑んだ。


 リュミエラが続けて言った。


「ユウタさんの言う通り……今のままでは守るだけで精一杯。

 森の脅威が強くなる前に、原因を探る必要があります」


 クロウが腕を組み、低い声で言った。


「探索班に必要なのは三つの能力だ。

 “歩ける体”、

 “観察力”、

“冷静さ”。

 この三つを満たす者を、三人選ぶ。」


 村人たちがざわついた。


「三人だけ……?」

「少なすぎじゃ……?」


 ユウタは首を横に振った。


「大人数で森に入ると、それだけで敵を引き寄せます。

 “音”と“熱”で感知されるからです。」


「音と熱……?」


 ユウタは丁寧に説明した。


「昨日の進化種……あいつは雑兵より明らかに“嗅覚”と“聴覚”が鋭かった。

 複数人の足音や呼吸は、絶対に気づかれます。」


「じゃあ、少人数の方が安全なのか……」


「はい。

 そして——」


 ユウタは静かに続けた。


「一人は、俺が行きます。」


「「「!!」」」


 その言葉に、村の空気が止まった。


 リュミエラが、一歩前へ踏み出す。


「ユウタさん……!

 危険です! 昨日だって……あなたは前線に立って……!」


「行く必要があります。」

 ユウタは真っすぐに言った。


「見たものを“地形として理解する”力は、

 多分、村の誰よりも俺が持ってます。

 道が複雑でも、迷わない。

 危険度が高い場所も、見ただけで判別できます。」


 クロウがうなずく。


「確かに……お前の地形判断は異常だ。

 昨日も、村の地形を短時間で全部把握していた」


 リュミエラは唇を噛んだが、やがて小さく頷いた。


「……わかりました。

 では……あなたと、クロウと、あと一人。」


 クロウが即答する。


「もちろん俺は行く。

 お前一人じゃ死ぬ。」


「ありがたいです、クロウさん。」



 最後の一人を決めるため、村人たちの顔を見渡す。

 戦力が低すぎては危険。

 かといって若すぎてもダメ。

 冷静さと判断力が必要だ。


(誰がいい……?)


 ユウタが迷っていると、一人の男が一歩前に出た。


「俺を連れていってくれ。

 名前はガロン。元は王都で“狩人”をやってた。」


 痩せているが、目つきが鋭い。

 身のこなしが軽く、足腰が強そうだ。


「森の中の危険は、ある程度は見分けられる。

 ……昨日は怖くて戦えなかったが、逃げるよりは役に立ちたい」


 クロウが小さく頷く。


「ガロンなら問題ない。

 弓の腕も悪くなかったはずだ。」


「よし……探索班は三人。

 俺、クロウ、ガロン。」


 その瞬間、リュミエラが胸の前で手を組んだ。


「どうか……無茶はしないでください……」


「無茶しないために行くんですよ。」


 ユウタは微笑む。


「敵の“成長条件”を調べて、

 こちらが先に文明を伸ばすために。」



 午後。


 三人は装備を整え、村の南森の入口へ向かった。


 クロウは剣と短弓。

 ガロンは弓とナイフ。

 ユウタは……手製の杖と、縄と、石。


(……武器じゃないなこれ)


 しかし、ユウタは知っている。


(俺がやるべきは“戦うこと”じゃなくて、

 “ルートを切り開くこと”だ)


「ユウタ、準備はいいか?」


「はい。クロウさん、何があっても“音を出さない”でください」


「わかってる」


 その時、背後から声がした。


「ユウタさん……!」


 振り返ると、リュミエラが駆け寄ってきた。

 その手には、小さな布袋が握られている。


「これ……食料と、水と……

 万が一の時の“治癒薬”です。

 ポーションほど強力ではありませんが……」


「ありがとうございます。」


 ユウタは深く礼をした。

 彼女は心配そうに言った。


「本当に……気をつけて。

 あなたがいなければ、この村は……希望を失う。」


「大丈夫です。

 戻ります。」


 ユウタは短く答え、

 クロウ、ガロンと共に森の中へ足を踏み入れた。



 森の内部は、昼でも薄暗かった。

 木々の枝が空を覆い、太陽光がほとんど届かない。

 地面には濃い腐葉土が積もり、湿った匂いが鼻を刺激する。


(視界悪い……けど、地形が“やさしい”)


 ユウタは地面の傾斜、枝の落ち方、風の通り道を見る。


(この森、人工的にいじられた跡がある……?)


 自然の森より、ずっと“歩きやすい”配置をしている。

 それは違和感でもあった。


「クロウさん……森の奥に、昔“道”とかありませんでした?」


「道……? いや、そんなものは——」


 クロウが言いかけた時だった。


「……止まれ。」


 ガロンが低い声で呟いた。

 弓を構え、前方の木陰を指す。


 ユウタも目を凝らす。


(……何だ?

 動物か……?)


 だが、影は動かない。

 その代わり、光を反射して“金属”のように光った。


「木……じゃない?」


「いや……あれは……」


 クロウも目を細める。


 三人は慎重に近づいた。


 そして、木陰の正体が露わになった瞬間――


 ユウタは息を呑んだ。


「これ……

 “建物の壁”じゃないか……?」


 そこにあったのは、

 古びた石造りの遺構の一部 だった。


 崩れかけた壁、苔むした石、

 地面に半分埋まった円柱。


 “森の中に、人工構造物”。


 ガロンがかすれた声で言った。


「まさか……この奥に……

 “神代の遺跡”が……?」


 クロウはさらに驚く。


「こんな森の近くに……

 本来なら王都の大学者しか入れないような……

 禁域の遺構が……?」


 ユウタは壁の表面を指でなぞった。

 石の並び方、角度、構造。


(この建築……明らかに現代より“高い文明”。

 それに——)


 壁のひび割れから、

 黒い痕跡 が滲み出ていた。


「……これ……血じゃないか?」


 ユウタは震える声で呟いた。


 クロウが驚愕する。


「まさか……

 遺構そのものが、グールの……?」


「違います。」

 ユウタは首を振った。


「これは……“内部から流れ出た血”です。

 遺構の“中”に、何かがいる。」


 ガロンがつぶやく。


「内部……? こんな古い建物の中に……?」


 ユウタは顔を上げ、低く言った。


「この遺構が……

 進化種の“発生源”だ。」


 その瞬間、

 森が風もなく揺れた気がした。


 まるで、その遺構が――

 ユウタたちの存在を“認識した”かのように。

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