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ゾンビで滅んだ異世界を、シヴィライゼーション知識で再建する  作者: マルコ


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第二章 第四話 夜襲の戦い(タワーディフェンス発動)

 闇の中から、無数の足音が村へ迫ってきた。

 腐肉がこすれる湿った音。

 骨が軋む乾いた音。

 それらが混ざり、森全体が呻くような気配を放つ。


 通路の入口。

 狭いくの字の柵の向こう側で、グールの群れが姿を現した。


「く、来る……!」


「落ち着け! 配置を崩すな!」


 クロウの怒号が闇に響く。



 進化種が前に出てこず、

 “雑兵”のグールが先に侵入してくる。


(やっぱり……群れの“盾役”を雑兵にさせてる)


 ユウタはぞっとしながらも冷静だった。

 これは偶然ではない。

 “進化種は知性を持つ”と見ていい。


(まずはこの雑兵を処理して、

 迎撃場に流し込む……!)


 ユウタは槍を握りしめ、声を張り上げた。


「全員、

 ——通路の“外側”には絶対出るな!

 柵に沿って後退しながら、敵を誘導する!」


「は、はい!!」


 防衛班が一斉に応じる。


 細い通路に並ぶグールたちは、一列になって進むしかない。

 柵に阻まれ、横へは広がれない。


 まさに、ユウタが狙った通りだった。



「槍、前へ! 突け!」


「オラァッ!!」


 防衛班が通路の狭い口から槍を突き出す。

 グールは倒れても動き続け、足を引きずりながら突進してくるが、

 “狭い道”に押し込まれているせいで圧力が弱い。


 後方のグールが押し寄せてくるが、柵に挟まれ横へ動けず、

 全てが一本道に詰まっていく。


「押し返せる……!?」

「昨日までとは全然違うぞ……!」


 防衛班の声にわずかに希望が戻る。


(よし……

 まずは“一次防衛ライン”突破は防げた)



 だが、安心は一瞬だった。


 森の奥。

 進化種が、ゆっくりと姿を見せた。


 その足音は、普通のグールとは違った。

 地面が重く震えるような……

 まるで巨獣のような踏みしめる音。


 赤い瞳が二つ、三つ……いや四つ。


(……まさか、複数体!?)


 ユウタの背筋に冷たい汗が流れる。


 クロウも気づいて歯を食いしばった。


「数が……増えている……!」


「リュミエラさん!!

 女性と老人、子供は“北側の頑丈な倉庫”に避難させてください!!」


「わ、わかった!」


 リュミエラが急いで走り去る。


 進化種が四体。

 雑兵は二十以上。


 村にとっては“滅亡級”の戦力差だ。


(でも……

 俺が作った“誘導ライン”がある)


 ユウタは迎撃場へ走った。



 通路を抜けたグールが、次々と迎撃場へ押し込まれていく。


 落とし溝に足を取られ、

 倒れた瞬間に横から槍が突き刺さる。


「今だッ! 刺せ!!」


「うおおおおっ!!」


 グールの動きは鈍く、次のグールが倒れた死体につまずき動きがさらにもたつく。


 迎撃場の“点の攻撃”が最大効率で働いていた。


(……いける。この村は……

 このシステムが完成すれば、守りきれる!)


 ユウタは胸が熱くなる。



 しかし——

 進化種の動きは別格だった。


 通路の入口まで来ると、

 その巨体は“通路の狭さ”を理解したかのように動きを止めた。


(……こいつ、考えてる)


 普通のグールのように突っ込まず、

 通路の左右を嗅ぎ、

 柵の強度を確認しているようだった。


「まずい……

 柵の弱いところを探している!」


「クロウさん、通路の右側に“強度の弱い柵”は!?」


「……一本ある!!

 昨日作ったばかりの、まだ土が固まっていない柵だ!」


 ユウタの心臓が跳ねた。


(そこだ……!

 狙われたら一撃で破られる……!)



 進化種が通路の右側に回り込み、

 その巨腕を振り上げた。


 木の幹ほどの腕。


 風圧で土煙が上がる。


「やばい……!!」


 ユウタが叫ぶ。


「クロウさん!!

 右側の柵、補強部隊を!!

 間に合わなければ——」


 クロウが怒号を上げた。


「左に誘導しろォ!!

 槍隊、三名! 通路の右端に“囮突き”だ!!」


「おおおおっ!」


 槍が突き出された瞬間、

 進化種がそちらへ注意を向け、進行方向をわずかにずらした。


(食いついた!!)


 だが、進化種の腕のひと振りで槍が折れ、

 兵士が吹き飛ばされた。


「ぎゃっ!!」


「おい!!」


「生きてるか!?」


 兵士は地面を転がりながらも、

 なんとか息はあった。


(まずい……

 “囮”を使い続ければ、犠牲が出る……!)


 進化種は一歩、二歩と通路へ入ってくる。


 狭さが“巨体の武器”に変わる。

 一本道で押し込まれたら、まともに迎撃できない。


(進化種は……迎撃場まで絶対に行かせない)


 ユウタの頭が高速で回転する。


 水。

 溝。

 火種。

 杭。

 通路の角度。

 進化種の脚の太さ。

 体重。


(……やれる)


 ユウタは叫んだ。


「防衛班!!

 “第二通路”を開いて進化種を迎撃場へ誘導する!!」


「第二……通路!?」


「そうだ!!

 通路の左側、柵の隙間を“わざと”開けて、

 そこから一気に“誘導柵”へ流す!!」


 クロウが叫ぶ。


「おい!!

 そんなことしたら雑兵も一気に——」


「雑兵はもう迎撃場で処理できてる!!

 進化種だけ“狭い道”に押し込めれば勝てる!!

 これは……タワーディフェンスの鉄則だ!!」


「たわー……?」


「説明してる暇はないッ!!」


 ユウタの怒号に、クロウが舌打ちしながらも叫ぶ。


「左側!!

 柵を外せ!!

 すぐにだ!!」



 防衛班が急いで左側の小さな柵を外す。

 そこに、わずかな“道”が生まれた。


 進化種の赤い目が、その隙間に向く。


(……来た)


 巨体が方向を変え、

 二足歩行ではありえない重心移動で、

 “第二通路”へ進み始めた。


 その瞬間。


「全員!!

 迎撃場へ後退!!!

 進化種を“ここへ”引きずり込め!!」


 ユウタの声と同時に、村人たちが一斉に走る。



 迎撃場の手前。

 進化種が通路へ入り——


 ズッ……!


 巨体が“落とし溝”に前足を突っ込み、体勢を崩した。


「今だああああッ!!!」


「槍隊、突けぇぇぇ!!」


 地響き。

 咆哮。

 木槍が肉に刺さる音。


 進化種の動きが止まり、

 二体目、三体目が通路に詰まり、倒れ込む。


 狭い通路の“詰まり”が、進化種同士の動きを殺した。


 ユウタが叫ぶ。


「火種、点火!!

 通路を焼け!!!」


「了解ッ!!」


 油を染み込ませた藁束に火がつく。

 炎が第二通路に燃え広がり、進化種の動きをさらに封じる。


「グォォォオオオ!!!」


 巨体がのたうち、

 炎に包まれるたび、動きが鈍っていく。


 クロウが槍を構え、叫んだ。


「トドメェェェ!!!」


「うおおおおお!!」


 槍が何度も突き刺さり——

 赤い目が、ひとつ、またひとつと消えていった。



 数分後。


 迎撃場は熱気と蒸気で満ちていた。

 焦げた肉と腐臭。

 そして、絶望の中にかすかな勝利の匂い。


 進化種四体。


 全部、倒した。


 ユウタは膝に手をつき、息を荒くしながら呟いた。


「……できた……

 ほんとに……倒せた……」


 クロウが背中を叩いた。


「お前……本当に……

 “戦場を作れる男”だったんだな」


 クレアが涙目で笑う。


「怖かったけど……

 本当に守れた……!」


 リュミエラは、泥だらけの姿のままユウタに駆け寄り——


「ユウタさん!!

 本当に……ありがとう……!!」


 彼女の瞳は涙で潤んでいた。


 その声に、胸が熱くなる。


(俺の手で……

 本当に人を救った……?)


 会社では、誰もそんなこと言わなかった。

 誰の人生も変えなかった。


 でも——

 この世界では、できた。


 ユウタはゆっくりと空を見上げた。


(……次のターンも、絶対に生き残らせる)


 それが、この世界での“責任”だ。

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