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ゾンビで滅んだ異世界を、シヴィライゼーション知識で再建する  作者: マルコ


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第二章 第三話 誘導柵と迎撃計画(村のタワーディフェンス化)

 農地班から回された十人が防衛班へ合流し、村の南側は一気に騒がしくなった。


 ユウタは畑から戻るなり、見張り台の下に集まったクロウたちへ声を飛ばす。


「今の柵は“面で守ろう”としてる。

 でも相手は数と不死身で押してくる。面で受けたら破られます」


 クロウが眉をひそめる。


「じゃあどうする?」


「線で誘導して、点で殺す」


 ユウタは地面に棒で村の簡易図を描いた。

 南側の森・村の柵・入口・見張り台・昨夜の進化種出現地点。


「グールは音と匂いに引かれる。

 つまり、“通り道を作れば”勝手にそこに流れます」


「通り道……?」


「はい。

 柵を“まっすぐ伸ばす”んじゃなく、くの字に曲げる。

 ここ、ここ、ここで“狭い道”を形成する」


 ユウタは図に細い通路を描き、最後に広い空間を丸で囲んだ。


「最後のこの丸が“迎撃場”。

 道が狭いから、グールは並べない。

 つまり、少人数でも前から順番に潰せる」


 クロウが目を細める。


「……なるほど。

 戦場を選べってことか」


「そうです。

 こちらが“戦いやすい場所”を作れば、敵の数は意味を失います」


 防衛班の若者が不安そうに言った。


「で、でも……あの赤い目の化け物は?

 あれが先頭に来たら、道なんて壊されるんじゃ……」


 ユウタは頷く。


「進化種は危険。

 だから“迎撃場”の中にもう一つ仕掛けを作る」


 ユウタは迎撃場の中に短い溝を描き、さらにその内側に杭の点を打つ。


「落とし溝と杭罠。

 浅くていい。深さ50センチ、幅1メートル。

 進化種の足を取って“速度を落とす”」


「そんな浅い穴で?」


「足が止まるだけで十分なんです。

 動きが鈍った瞬間に、横から集中刺突。

 “止めて、殴る”のが基本」


 クロウが剣の柄を握り直した。


「……お前、戦術書でも読んでたのか?」


「ゲームです」

 ユウタは素直に言った。

「タワーディフェンスってやつは、

 敵を“通したい道”に通して、

 “倒したい場所”で倒すんです」


 クロウは半分理解した顔で、半分呆れた顔をする。


「相変わらず意味のわからん言葉だが……

 理屈はわかった」



 作業が始まった。


 丸太を地面へ打ち込み、縄で縛り、柵を“わざと”曲げていく。

 直線ではない防衛線が形になり、森から村へ向かう道が一本に収束していく。


「ユウタさん、この角度でいいか!?」

「もう少し内側! 敵が柵に沿って歩くように!」


 彼の声に、村人たちは驚くほど素直に従った。

 “仕事を振られる”ことに慣れているのではなく、

 “この指示なら生き残れる”と肌で感じているからだ。


(指示に“理由”があると、人は動く)


 昔、工場で改善を通すときに無意識でやっていたことが、

 この世界ではそのまま力になっていた。



 迎撃場の設営も進む。


 落とし溝は浅いが広く、足を取られやすい角度に作った。

 杭罠は木槍を斜めに固定し、体重が乗ると“刺さる”形で隠す。

 さらに溝の手前には、乾いた枝と藁を束ねた“火種”を仕込んだ。


「火は最後の保険です」

 ユウタは言った。

「進化種が溝を越えようとしたら、

 ここに火を放って通路を焼く。

 グールは火に弱い」


「……だが、村ごと燃える危険もある」


 クロウの指摘に、ユウタは即答した。


「だから“通路だけ”が燃えるように、

 両側の柵は湿らせておきます。

 水路を作った意味は、こういう時にも効く」


 クロウは苦笑した。


「……すべてが繋がってるのか」


「文明は、連鎖ですから」


 その言葉に、クロウはしばらく黙っていた。



 夕方。


 村の南側に、新しい“導線”が完成した。

 森から村へ向かう細い通路。

 その先に広がる迎撃場。

 さらにその中心に落とし溝と杭罠。

 周囲に見張り台と投槍の足場。


 昨日までの無秩序な柵とは別物だ。

 村が“戦うための形”を獲得し始めていた。


 リュミエラが息を切らしながら現れた。

 彼女も防衛作業に加わっていたらしく、頬に泥がついている。


「ユウタさん……見張りが言っていました。

 森の縁に、影が増えています」


 ユウタは空を見た。


 陽は沈み始めている。

 夜が来る。

 ゾンビのターン。


「……どれくらい?」


「はっきりした数は不明。でも、十体以上は確実だと」


 クロウが低く唸った。

 村の兵士たちも槍を握り直す。


(通常グールの群れに、進化種が混じる)


 最悪の組み合わせ。

 だが——


 ユウタは迎撃場を見渡した。


(……準備はした。

 あとは“この世界の敵が、俺の想定通りに動くか”)


 彼は深く息を吸い、皆に言った。


「今夜は“試験運用”です。

 恐怖で動きが止まったら負ける。

 敵は道に入ったら、必ず正面から来る。

 横に広がらないよう、柵に沿って下がらない。」


 村人の顔に緊張が走る。


 でも、昨日の彼らとは違う。

 恐怖だけではない。

 “戦う準備がある”目だ。


 リュミエラが小さく言った。


「……ユウタさん。

 あなたが来てから、村が“村じゃなくなった”気がします」


「悪い意味で?」


「いい意味で、です」


 彼女はまっすぐユウタを見た。


「ただの避難場所じゃない。

 “国の種”みたいになってきた」


 ユウタは一瞬言葉を失い、

 それから小さく笑った。


「……その種を、絶対枯らしません」



 夜。


 冷えた空気が村を包み、

 森の中から腐臭が流れ込んできた。


 見張り台の鐘が、低く鳴る。


 ――カン……カン……カン……


 村の全員が、武器を握り、迎撃場に配置につく。


 通路の向こう、闇の中で、

 無数の影がゆっくりと蠢いていた。


 そして、その背後に——

 赤い瞳が、ひとつではなく、複数灯る。


 ユウタの喉が乾く。


(……来た)


 彼は槍を構え、

 心の中でターンを切った。

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