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夢の中でも

作者: 尚文産商堂

ただ一目、君に会いたかった。

それだけが望みだった。


いろんな世界がある。

いろんな人がいる。

だから、これをかなえてくれる方法を知っている人も、きっといる。

そう思い続けて早10年。

妻を早くに亡くし、子供らを男で一つで育てあげた。

今度は自分の願いをかなえる番。

そうおもっていろいろと調べていた。


だが、そううまくは見つからない。

とうとう疲れてしまい、眠ってしまっていたようだ。

どれだけ寝たかわからない中、ふわりと何かが掛けられる感覚で目が覚める。

「あら、起こしちゃったかしら」

それは妻だった。

「どうして、ここに……?」

「あなたが強く思ってくれたおかげですよ」

よいしょっと言いながら近くにあった自分のベッドのへりに腰掛ける。

「どれだけ君に会いたかったか」

「ええ、よく知ってます。こうしてまた会えるとは、私も思いませんでしたもの」

「しかし、どうして?」

死んだのは10年も昔、確かに会いたいと思っていていろいろと調べていたが、それでも本当に会えるとは思いもしなかった。

「今はお盆ですもの。あの世とこの世の境目があやふやになる時期ですのよ。だからこうしてその隙間をぬってくることができるの」

言いながら、原理は俺にはわからないが思いが伝わってくれたということのようだ。

「でも、安心したわ。あの子たちも無事に旅立てたみたいですし。ちゃんと育ててくれていたのね」

「当たり前だ、君の子でもあるのだからな。しっかりと育ててやらないと、君に顔向けできない」

「大変だったでしょ?」

「いや、君の子と思いながら育ててやれたんだ」

あら、うれしいわね、という表情で妻は笑ってくれる。

「さて、と」

再びよいしょと言って、膝に手をやりつつ立ち上がる。

「そろそろ行かないとね。まだ会いたい人たちもいるし」

「もういってしまうのか、まだ話したりないのだがな」

「大丈夫よ、一つ道がつながれば、そこは立派な道路になるもの。いつでも会えるわ、夢の中で、ね」

今度はどこに行こうかしら、と一瞬だけ妻がつぶやくと、すぅと姿が消えていく。

手を差し出そうかとも思ったがやめた。

妻が言った、夢の中でいつでも会える、ということを思い出したからだ。


はっと目が覚める。

夢か現か、なにかわからない状態だった。

でもパソコンの前で寝落ちをしていたところは間違いがないようだ。

と、そこで一つ気づく。

身体の上にタオルケットが一枚掛けられていた。

誰も家の中にはいないのに。

誰が掛けたかはわかっている、ともなれば、あの言葉を信じて、また会えるのを楽しみにしておこう。

夢の中で。そうひとりつぶやいた。

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― 新着の感想 ―
夢の中なら、どんな夢でも叶いますから、夢はいつまでも見続けたいですよね
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