表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

お嬢様幼馴染が本物の愛に気づくまで

作者: パミーン

よくある話を書いてしまいました。

ベタですがお付き合いください。


設定はざるです。ご容赦ください。

「ねえ、聞いてくださいな!ついに、ついに宏斗とデートが決まりましたわよ!」


 学校が終わり、帰り道でいつも一緒に帰る幼馴染である北条香奈子がそう僕に告げた。


「そうか、やっと宏斗のやつOKしたんだな。よかったじゃん!これで香奈子の念願が叶ったね」


「ええ、これも全てあなたのおかげですわ、俊矢」


 僕は何事もなかったかのように返事したけど、心の中ではついにこの時が来たのだなと落胆と絶望でいっぱいだった。


 香奈子が見たこともないような笑顔を見せながら、僕はただ彼女を見つめることしかできなかった。


 そう、今僕の初恋はここで終わりを迎えたのだった。





 僕と香奈子が出会ったのは3歳の時だった。僕の家は今もそうだけど母親しかいなくてとても貧しい家庭なんだ。それで貧しい人が集まった長屋に住んでいるんだけど、その隣にあまりにも豪華でデカいお屋敷が建つことになった。


 そのお屋敷の工事が始まった時に祖父に連れられて挨拶に来たのが香奈子だった。なぜ貧乏人の長屋の隣に豪邸が建ったのかというと、香奈子の祖父はノブレスオブリージュという僕にはよく分からない思想を持っていて、僕らの生活の援助をしやすくするために隣に豪邸を建てたんだと。


 そういうことで僕たち貧乏な家庭は香奈子の祖父から毎月援助を受けながら生活をすることができているんだ。


 僕は今高校3年生だけど、高校に行けたのも香奈子の祖父のおかげだ。学費や制服代なども全て出してもらっている。香奈子の祖父には足を向けて寝れないくらいに本当によくしてもらっていて、感謝の気持ちしかない。


 そんな素晴らしい祖父をもつ香奈子はというと、自分の思い通りにならないとどんな手を使ってでも我を通すわがままっ子だった。だから初めての挨拶の時なんか


「あなた、私の下僕になりなさい」


 と言い出して祖父からげんこつを喰らっていたぐらいに言うこともめちゃくちゃだった。


 それからは同い年ということもあって一緒に遊ぶことが日常になるくらいには香奈子と同じ時間を過ごした。ただ遊ぶ時はいつも香奈子のわがままに付き合わされて


「俊矢、私紅茶が飲みたいから家から紅茶セットを持ってきてくださる?」


「俊矢、さっきのあの男の子の態度、腹が立ったから代わりに殴ってきてちょうだい」


 とかもうどうしたらいいか分からないことばっかり言うもんだから本当に僕を困らせること困らせること。特に「代わりに殴ってきて」なんてできるわけないし、相手を傷つけることなんてしたくない。でも言うことを聞かないとビンタを喰らうから相手のところまで行って「殴ったことにして」と話をして口裏を合わせるようなことが沢山あった。


 何が言いたいかというと、要は香奈子とは出会った時から僕は香奈子に振り回されっぱなしってこと。でも振りまわれながらも時々見せる笑顔とか優しい一面とかのギャップで僕はどんどんと香奈子に惹かれていった。





 そうして小学校、中学校と進学し、成長するにつれて僕は香奈子のことが好きだということを自覚した。でもそれで僕の恋が実るかというとそれはとても難しいことだった。僕は貧乏人、香奈子は豪邸で住んでいることからも分かるようにお金持ち。そもそもどう考えたかって香奈子の親には僕のことを認めてもらえないだろう。


 そういう言い訳をしながら今の香奈子との関係が壊れることを怖がって何もしないでいた僕に神様から天罰が下った。


 それは高校の入学式の時だった。入学式の新入生挨拶をした超絶イケメンを見た香奈子がその超絶イケメンに恋をしてしまったんだ。香奈子曰く「一目惚れした」と。


「俊矢、私、あの新入生挨拶をした殿方と恋仲になりたいわ。なんとかしなさい」


 神様は残酷なことをしてくれたもんだ。自分の好きな人の恋を応援させられることになるなんてさ。


 たまたま超絶イケメンと同じクラスになった僕はまず彼のことを知るために友達になることから始めた。彼の名は大橋宏斗。今では親友といってもいいほどに仲が良くなってるんだけど、それは宏斗の見た目がイケメンだけではないからなんだ。


 めちゃくちゃ性格が良くて気遣いもできてクラスのムードメーカー。彼がみんなの仲を繋いでくれるからクラス皆が仲良くなる。そして自分が自分がという香奈子とは違って絶対に自分を持ち上げるようなことはしない。あくまで引き立て役に徹する。こんな完璧なやつ、勝ち目なんてあるわけがないというくらいにできた人間だ。


 そういうことで香奈子のこと云々抜きにして宏斗と仲が良くなった僕は休み時間や昼休みを一緒に過ごすこととなり、高校3年までずっと同じクラスだったこともあって親友となっていた。


 親友ともなると恋愛の話とかもしたりするんだけど、宏斗はどうやらかなりの奥手で恋というものがどんなものか分からないということだった。だから僕は


「学校外で、プライベートで一緒に過ごしたいって思えるような女性ができたらそれは恋をしたってことだと思うよ」


 とアドバイスした。それを聞いた宏斗は納得したようで、


「確かに。じゃあ俺はデートしたいって思える人を探すことにするよ」


 ということで宏斗とデートをする=宏斗が好きになったと解釈することにした。もちろんそれを香奈子に言ったんだけど、


「さすが俊矢!私が宏斗とデートできるように頑張りなさい。それともしデートになった時のために練習しますわよ!」


「いや、そこは香奈子さん、あなたが頑張ってアプローチしないとだめでしょ……」


「そんなの、恥ずかしくてできるわけないじゃない!あなたがなんとかしなさい!」


 なんてやりとりがあって自分が動かないと恋は実らないよって説得することが何度もあった。「自分が動かないと恋は実らない」なんて自分が言えた立場でもなんでもないんだけどね。


 それからは


「宏斗に挨拶したいからなんて挨拶をしたらいいか教えなさい」


「いや、おはよう、だけでいいじゃん」


 とか


「宏斗に一緒にお弁当食べたいから仲を取り持ってちょうだい」


「いいよ、引き合わせるところまでいったら僕はしれっと抜けるからあとは二人でなんとかするんだよ」


「そんな!俊矢がいないと話なんてできるわけないじゃない!一緒にいなさい!」


 とか


「バレンタインにこのチョコレートをあげようと思っているのだけど、どうかしら?」


「いや……、そんなうん百万円するようなチョコなんてもらったら引かれるよ?」


「何を言ってるんですの!宏斗に安物のチョコなんてあげられるわけないじゃない!一緒に買いに行きますわよ!」


 とかとかとか。


 何かにつけては僕を使ってなんとかしようとするもんだし、宏斗も宏斗で奥手だから香奈子相手にどうしたらいいか分かってないしで全然二人の距離が縮まらない。


 縮まらない距離に安堵しつつも、僕の方には恋愛対象として見向きもしてくれないことに心の辛さがあった。いつか香奈子と宏斗はくっつくんだろうなと考えると寝れない日もあった。それでも香奈子が宏斗となんとか恋仲になりたいと頑張っている姿を見ていると、彼女が悲しむ顔を見たくないという気持ちにもなる。


 そんなジレンマをかかえながら高校3年生になり、僕と宏斗と香奈子は同じクラスになった。同じクラスになった途端、宏斗はうまくクラスメイトとの仲を取り持つようになるから香奈子との仲もうまくなりだした。


 香奈子も自然と宏斗と会話できるようになり、僕抜きでも雑談したり、一緒にお昼を食べたりするようになり、一気に二人の距離が縮まったんだ。


 二人の仲が良くなると宏斗からも「最近北条さんが気になってるんだ」とか「北条さんの好きな物って何?」とか僕に相談するようになり、香奈子に興味を持ちだしたことが分かった。


 ああ、もうすぐこの二人はくっつくなという確信があった。そして冒頭に至るというわけ。





 香奈子と宏斗のデートから2カ月が経った。僕は今就職活動中だ。本来であれば僕の通っている高校はエスカレーター式で大学へと進学することができるから、ほとんどの生徒はそのまま大学へ進学するんだけど僕は進学しないことに決めたんだ。


 それはもちろん香奈子のことがあるからだ。デートを終えた後、二人はより親密になったようだ。今は就職活動を理由に二人とは距離を置いてるから正確には分からないけど、このままいけば二人は付き合うことになるだろう。二人は大学進学希望だから構内で二人がいちゃいちゃしてるところを見たくない。


 それに僕がいれば香奈子は普通に接してくるだろうけど、それが僕には辛い。また香奈子と一緒にいることで宏斗にあらぬ誤解を与えてしまうかもしれない。つまり僕は二人から離れた方がいいんだ。


 それでも香奈子の祖父には進学しなさいと言われたし、学費も出してくれると言ってくれたんだけど固辞した。流石にお世話になりっぱなしだと自立できないからね。


 まあそういうことがあって僕は今面接を受けまくっているんだけど全滅している。就職活動がこんな大変だとは思わなかった。


「はあ、今日もまたお祈りメールが届いた。これ就職できんのかな」


 思わず独り言を呟いた放課後の教室。お祈りメールを見て呆然としていたらいつのまにか時間がかなり経っていたようで教室には誰にもいなかった。いや、正確には一人いた。香奈子だった。


「あなた、私の下僕になりなさい」


「は?下僕なんてなりたくないよ。ていうかそれ言っておじいさんにげんこつ喰らったろ?」


「これが私の出した答えですわ。15年近い仲なのに私の言いたいことが分からないなんてやっぱり恋って難しいんですのね」


「答え?ごめん、香奈子が何を言いたいのかさっぱり分からないよ」


 そうすると急に香奈子の頬が朱に染まっていく。


「ちょ、直接言わせようなんて大胆なのかしら。分かりましたわ!わ、私のところに永久就職しなさい!」


 永久就職?ああ、そういうことか!


「もしかして香奈子のおじいさんの会社に就職させてくれようとしているの?それだったら申し訳……」


「違う!なんでここまで言って分からないんですの!?私と付き合いなさいって言ってるんですわ!」


「え?は?えっ……。ええーっ!」


 香奈子の言ったことに理解が追いつかなかった……。ていうか今何て言った?付き合えだって?付き合うってあの付き合うでいいんだよね?


「さあ、返事を聞かせていただこうかしら?」


「ちょっと待ってよ!宏斗はどうしたんだよ?もう付き合えるところまでいったんじゃないの?」


「ええ、お付き合いする寸前まではいきましたわ。でもそれで気づいてしまったの。宏斗とのデートは楽しかったわ。ただそれだけ」


「楽しかっただけってそれで充分なんじゃないの?」


「私がわがまま娘なのは分かっているでしょう?もっとワクワクしたりドキドキしたりとか色んな感情でいっぱいになって充実したー!って思わないと満足できないの。宏斗にはそれがなかったのですわ」


「まさかそんな理由で宏斗と付き合うことをやめたっていうのかい!?」


「それだけじゃないに決まってるでしょ。デートのあと、あなた全く私に関わろうとしなくなったでしょう?私それをとても寂しく思ってしまったの。それでも宏斗があなたの代わりに話をしてくれましたけど、ある時宏斗に言われてしまったのですわ。『北条さんはいつも俊矢の話ばっかりしてるね』って。それで気づいたのですわよ。私、俊矢のことが好きだったんだって。自覚したらもう恥ずかしくて恥ずかしくて。どうやら私はあなたと出会った時からすでに好きになっていたみたいですわ」


「あー、だからさっき下僕になりなさいなんて言ったんだね。でもそれ好きな人に言う言葉じゃなくない?」


「私のものになってほしいという強い願望から出た言葉だったんでしょうね。それで、返事を聞かせていただこうかしら?」


「僕は香奈子のこと充実したー!って思わせることができているの?」


「もちろんですわ!あなたとデートの練習をした時なんか毎回大満足していましたもの」


 そ、そうだったんだ……。僕はただ振り回されていただけだというのに……。


「私を満足させられるのは俊矢、あなたしかいないのです。だからいい加減返事を聞かせていただこうかしら?」


 さっきから返事を聞かせろの圧がすごい……。いや、嬉しいよ?好きな人からの付き合ってなんだから。でも下僕から始まって不意打ちのような好きを伝えられたらびっくりするでしょ?


「そう……、返事がないということはそういうことなのですわね。俊矢は私のことなんて何とも思っていないってことだったということですか……」


「ち、違うよ!僕も香奈子のこと好きだよ!ずっと前から好きだったよ!でもほら宏斗のこともあったし、今いきなり愛の告白なんてされたから理解が追いつかないんだよ」


「ほ、ほんとに!?嘘じゃないですわよね?」


 「うん」と言おうとした瞬間に香奈子が僕に抱きついてきた。僕も驚いて思わず手を回して抱きしめてしまった。


「この2カ月寂しかったんですから……。いっぱいぎゅっと抱きしめてくださいな」


 うわあ、急に可愛くなっちゃった。香奈子のこのギャップが僕には刺さるんだよね。


「就職活動はやめにするかな。進学して香奈子と大学生活楽しむことにしようかな」


「ええ!ぜひそうしなさい!今まで自覚がなかった分を取り戻すわよ!さあ、早速これからデートに行きましょう!」


 どうやら僕はこれからも香奈子に振り回されることになりそうだ。

ギャップ萌えというやつでしょうか。それともツンデレになるのでしょうか?

最後はこういう形になりました。


お読みいただきありがとうございました。

感想をいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
取り返しつかなくなる前に気づいてよかったね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ