5 アリサよりでかいんじゃね?
正直言って、エロゲーを好きな奴は絶対オタクだろう。
オタクなら小太りで、頭にバンダナ、黒縁メガネ、アニメキャラのTシャツ、メーカー不明のジーンズ、安っぽいスニーカー……。
絶対気持ち悪い男ばっかりだと思ってたのに。なんなの……。
待ち合わせ場所の三条木屋町に集合した参加者たちは、普通の感じの男の子ばっかりだった。それもおしゃれで、こざっぱりした。
一部おじさんもいるけど、清潔感あるし……。女子はわたし一人だけか。
「皆さん、スノメロ関西勢交流会参加者の方ですね。そちらのお姉さんも?」
「はい。リサねこ、です」
「えっ。リサねこさん?」と、幹事らしき男の子が言った。
「リサねこさん、女子だったの」「えっ、ひょっとしてアリサコスなの?」などと、なんか参加者が小声で話している。
……なんだよコスって? などと思っていたら、わたしをじっと睨んでいた体の大きな男が「それ、最終章導入部のアリサのコスチュームなのか?」と言った。
「ああ、コスって、コスチュームのことですか?」
「……そうだけど」
「コス、ではないけど、ちょっと狙ってみました」
……ガツンとカマしてやろうと思ったのよ。
わたしの髪は真っ黒で長い。いつもは無造作にワンレンにしている。
今回、思い切って前髪をアリサみたいに切り揃えた。深い紺色の膝丈のワンピースドレスは昨日買った。
つまり「ヴィレッジ・ヴァンガード」での再会シーンを意識した。
これで参加者に打ち解けてもらえたらと思って。でも、初対面の男に、敬語なしでぶっきらぼうに話しかけられたいとは思っていなかった。
「まあ、頑張ったんじゃない?」と体の大きな男が言った。
なんで上から目線なのよ。
気分悪いなー。それに此処は暑い。早く涼しいところに行って、ビール飲みたい。
* * * * *
会場は三条木屋町上るの雑居ビル四階の居酒屋だった。満席だー。
「皆さん、名札は付けましたね。飲み物は行き渡った?
たっつんとトーキチさんはお酒ダメやで。
それでは、スノメロ関西勢交流会を始めたいと思います〜。かんぱ〜い」
そう挨拶したモラベーさんは、スリムなオシャレさんで、シルバーフレームのメガネがよく似合う、可愛い顔の男子だ。わたしよりたぶん歳下だな。
「そしたら、簡単に自己紹介しましょうか。僕は幹事手伝いのAK-89です。深雪派です」と、体が大きくて声の大きな男が言った。
あーもー、なんでこいつ、わたしの左隣なの。
「誰派かも言うの?」と、わたしの正面に座った、深雪のステージ衣装のイラストのTシャツを着た男の子が言った。
……君、オタクなんだよね? 上はアレだけど、なんでボトムがオシャレなの?
なんでそんなにハンサムなの?
「言わな論争できひんやん。あ、ついでに、ゲームから入ったかアニメから入ったかも言ってもらおうか。俺はゲームからやけど。はい次、姉さん」
「……初めまして。リサねこです。……見ての通り、アリサ派です」
「そっくりじゃん」「えらい美人やな」「アリサねこやー、萌えるわー」「でか……」
おい誰だ、乳はアリサよりでかいんじゃねとか小声で言ったのは。
「はいはい。アリサ派は興奮しない。何から入ったんだっけ」
「アニメです」
「リアタイの?」
「リアタイって何?」
「リアルの放映で観たの?」
「……ええ」ほんとは円盤だけど。
「ふーん……。おーいゲーム組は見てくれに騙されんと論破しろよ」
なっ! なんか失礼よね、こいつ。
「ゲームもやりました。アリサエンドが好きなんです。深雪エンドは嫌いです」
「おおっ、アリサ派リサねこ氏から宣戦布告やでー」と煽る声が聞こえた。
「ゲーム七周やった俺とやるか論争」
「AKさん、怖がらせないの。関西勢は女子少ないんだから」とモラベーさんが言った。
「そうですよ。武闘派とか言われて、ただでさえ関東勢から恐れられてるのに」と、わたしの右隣のイケメンが言った。……そう、細マッチョで、Fred Perryの紺のポロシャツと仕立ての良さそうなグレーの細身のボトムスが超似合ってる超イケメン。
〝大事なことなので二回言いました〟ってこういう時に使うのかな。
「次、僕の番ですね。〝テタンジェ〟です。関東勢です。出張のついでに来ました。アリサ派です。入ったのはゲームからです。カナダとニューヨークのオタクの友人と一緒に、スノメロの脚本の英語版を作ってます。これは目処がついていて、次はフランス語版の作成に取り掛かるため、向こうの友達を洗脳中です」
〝おおおー〟という野太い賞賛の声と〝ぐぬぬー〟という怨嗟の声が上がった。
「テタンジェさん、ほんまにリア充のオタクやな」とAKが言った。
おおおー、確かに。出張のついで、っていうところから既にリア充だわ。
そんな人もいるのね、スノメロのクラスタには。で次は……。
「たっつんです。美晴派です。中三の時、アニメにどハマりして、お正月にPC版やっちゃいました」
えっ?「それって、年齢的にダメなんじゃ……」と声に出てしまった。
「えっと、てへ」と言って、たっつんさんは微笑む。
なんだよー、可愛いな現役男子高校生は。
ほのぼのとしていると「この人DKの微笑みで騙されてるぞ」とAKが言った。
「リサねこさん、たっつんのツイ読んだことないんですか。可愛い顔して鬼畜ツイしかしませんよ。市内の女子高生がどれだけ泣かされてるか」とモラベーさん。
「そ、そうなんですか」
「美晴みたいな気の強い子を攻略して、自我崩壊するくらいドロドロの性欲まみれにするのが趣味でーす。てへ」
ど変態かよ。
「てへしつこいよ。僕はトーキチです。たっつんと同じ学校の同級生です。たっつんに洗脳されました。眞理子さん派です」
トーキチさんも可愛いなー。ってか、眞理子さんって二十六歳の設定だよね?
「トーキチは年上好きのむっつりねっとりスケベでーす。志望大学受かったら家庭教師のお姉さんにやらせてもらうそうでーす。ちなみにリサねこさん狙われてます」
「ば、ばか言うなよ」
あはは。……すみません、男子高校生はもっぱら観賞用です。
だって、怖いもん。……すぐ気が変わるから。
「ちなみにこの二人、洛成館高校の生徒だからな。席次も上から数えた方が早い」
AKが耳打ちした。嘘でしょ? 灘高と東大・京大合格率を競う超名門校よ?
「えー、僕はうしがらです。アリサ派です」と次の人。この人はおそらく一番年上だ。めっちゃロマンスグレー。
「僕もアニメから入って、ゲームで沼にはまった人間です。短編SSを書いてます。pixivでリサねこさんが連載されているアリサエンドアフターのファンです。お話できれば嬉しいなと思って参加しました」
えっ。やば。まだちゃんと読んでないんですけど。
その他、総勢二十人。ちなみにわたしの前に座っているキャラクターTシャツのお兄さんは「めんかたです。アリサ派です。ゲームから入りました。今、大学の研究室の同僚供を洗脳中です」とのことだった。この人、研究者なのか。
「最後に幹事のモラベーです。アリサ派です。ゲームから入りました。学生の頃、バイト先の先輩から勧められてプレイしたのがきっかけです。ただし、ジャンルとしてエロゲーが好き、と言うことではなくて、角打先生が手がけた作品が好きです。
夏コミで、考察本を出します。今日はまあ、自分の刺激になればと思って、企画しました。なので、活発な意見交換をしていただけるとありがたいです」
おー、真面目な感じの人だわ。
「ちなみにモラベーは童貞だから、食い散らかしたらダメだよ」とAKが言った。
失礼ねホントに! わたしはAKをにらんだ。ニヤニヤ顔がいやらしい。
にしても、あんなに可愛い顔してモラベーさん童貞かー。実はシャイなのかな。
「普通の人、ばっかりですね」と、思わず声にしてしまった。
「あんたの言う、普通の人って、どういう意味か分からん」
AKはわたしの方を見ずに言った。
「紳士的、常識的な感じ、っていう意味です」
「エロゲーやってるようなオタクは、気持ち悪い奴ばっかりだと思ってたのか?
バンダナ巻いた気持ち悪い小太りの男ばっかり来ると思ってたのか?」
「…………」図星なので、何も答えられなかった。
「まあ……、確かにそういう感じの奴もいるだろうけど、そういう奴らばっかりだと思うのはマスコミとか、中途半端な発信者の作った偏見だよ」
「僕もスノメロのイベントでは色んな人とお会いしましたけど、気持ち悪い人とか、心底嫌な人にあった経験はないですね。まあ、みんな癖は強いですけど」
早々に赤ワインに切り替えていた、テタンジェさんが言った。
「まあ、このコンテンツはエロゲの中でもファンを選ぶからな」
「物語の設定が、かなりリアルに近いですしね」
「異世界とか、魔法とか、超能力とか、俺TUEEEE無双とか、関係ないしな」
「俺つえー無双ってなんですか?」と、わたしは口を挟む。
「……完全無欠、最強無敵のヒーローが主人公の物語ね」
「へぇ……。まあ、晴臣はやたら頭良い以外は普通の男ですしね」
「……どういうところが普通だと思うの」とAKが言った。
「二人の女の間で揺れるところですかねえ」
「それの何処が普通なんだよ。本当に好きな女なんて一人いりゃ充分だろうが」
「でもそれで満足できないのが男の性なんでしょ? そもそもこれ浮気を楽しむゲームじゃないの?」
「深雪に付いた嘘一つで血圧が上がって脂汗流して不整脈が出るような生真面目な男が浮気を楽しめる訳ないだろう」
「それは設定じゃない。現に浮気している男の人っていっぱいいるじゃないの。
それにみんな、女の子全員攻略するんでしょ?
エロゲってそういうものでしょう?」
何故こんなにむきになっているんだろうか。兎に角このAKという男に腹が立つ。
「リサねこさん、ちょっと良いですか」と、右隣のイケメンが言った。
「僕はこの作品にどっぷりはまってますけど、他のエロゲはやったことないですよ」
「えっ、そうなんですか」
「スノメロ・クラスタにはそんな奴多いぞ。俺も角打先生が脚本書いた作品しかやったことないしな」
「えっ、そうなの?」
「…………」
「何よ、そのジト目」言い方を変えたのがお気に召さなかったのか?
「あの脚本家さん、他の作品って、どんなのがあるの?」
「……本当に知らないのか」
「えっ。ご、ごめんなさい」
「出世作はTerraっていう会社から出した『Apple & Pepper Meat』『Sweet & Bacon Potato』『Triangle Bitter Choco』三部作『Sweetie Pie☆Pie』シリーズ。それから、同じ会社の異世界もの『契約は満月の夜半に』。その次がMama Maidっていう会社のSF百合大作『この百合は宇宙を壊す』、その次がAutumnの『Snow Melody』で、今はエロゲ業界卒業して、ライトノベル寄りの推理サスペンスもの書いてるぞ」
「へぇ……。小説家やってるんだ。それに多彩なのね」
「『冴えない探偵の使い方』シリーズ、本当に面白いのでオススメですよ」
「あ、聞いたことあるかもしれないです。エロいんでしょうか?」
「一応全年齢対象で微エロ程度だな。お得意の三角関係要素はあるけれど」
「またピアニストと歌手?」
「いや、監察医と刑事だな。コミカルな文体、皮肉なジョーク、奇想天外な推理とちょっとビターな結末がメインで、三角関係は香り付け程度だな」
「でも、二人とも過去に何かあったような伏線を張ってますよね」
「まあ、角打のやることだから、ちょっとドロっとした展開は今後ありえるけどな」
「……あんまり女の子の泣くシーンは見たくないなあ」
ふっと気持ちが口を突いてしまった。
「『Snow Melody』が好きなのにか?」
「いやスノメロは辛いけど入り込むと目が離せないっていうか……、見届けざるを得ないっていうか……。気持ちがリンクする台詞もあるし」
「……経験でもあるのか?」
イラっ。「どうなんでしょうねえ」と、わたしは態とらしく笑う。
「ま、経験があったって仕方ないけどな。三角関係なんて」
「……まあね」こいつ、ほんとムカつく。
「AKさん、女子にその物言い、普通にセクハラですよ」「ダメ絶対」
テタンジェさんとモラベーさんに助け舟を出された。
「ちょっと雰囲気変えましょうか」
モラベーさんの音頭で席替えをした。あっ、お隣ロマンスグレーの人だ。
「リサねこさん、お元気そうで良かった。最近ツイッターでお見かけしなかったし、SSの更新もなかったので、体調を崩されたのかなとか思っていました」
「ええっと……、ちょっと仕事が忙しくて。……うしがらさんも二次創作小説、書いてらっしゃるんですよね」
「えっ。そうですね。リサねこさんには、何時も読んでもらって、褒めてもらって感謝しています」
「あっ、そうですね。何時も楽しく拝見してます」
やばいよやばいよ。詩音とうしがらさんはSS読み合ってる仲なのか。
やっぱり出たとこ勝負には限界があったな。
「うしがらさんもアニメからだったんですね。アニメお好きなんですか?」
「まあ、テレビっ子でアニメ世代ですから。こどもの頃は永井豪のロボットものが好きでしたし、小学四年生の時に宇宙戦艦ヤ○ト、中学三年生の時に機動戦士ガン○ムとかリアタイで見てましたからねぇ」
うーん。名前しか知らない伝説的アニメだな。
「高校行ってあまり見なくなって、大学行ってバンドにはまって、就職して落ち着いて、結婚して家族が出来て、二人の娘が大きくなってふと気づいたんです。
趣味と呼べるものが殆どないなって。
少し虚しさを感じていたら、出張先でビール飲みながら付けっ放しにしていたテレビから深夜アニメが始まりましてね。それが『魔法少女ま○か☆マ○カ』の第三話だったんですよ。あれは……、衝撃でした。てっきり娘達が小さい頃に見ていた『プ○キュア』の亜流アニメだと舐めてかかってたんですよね」
うん。これも名前しか知らないな。
「ま○マ○にすっかりはまってしまって以来、寝る前に見る深夜アニメ達が僕の趣味になりました。でもま○マ○程の作品には巡り会えなくて……。
そんな時に『Snow Melody』と出会いました。
最初は爽やかな青春ストーリーだと思っていたのに、見事に騙されました」
「あー、そんなふうに考えていた時期がわたしにもありました」
そう言うと、うしがらさんは柔らかく苦笑した。
「原作がエロゲだと知らなかったので、最終回のかなり思い切ったラヴシーンはびっくりしましたねぇ……」
「確かに」あれはびっくりした。「がっつり揉んでましたからねぇ」
「リアタイでは謎の黒い光線が入ってましたけど、円盤は攻めすぎですよね」
「えっ、あっ、そうでしたね。そうでしたそうでした」
〝謎の黒い光線〟って何っ?
「安いノート買ってきて、妻に隠れてPC版やりました。情報が欲しくて検索して、掲示板系のSNSや二次創作小説を読んだり、Twitterでクラスタの呟きを読んだりしてるうちに、気がついたらこの世界にはまってました」
「何故そこまではまったんです?」
「三角関係ものが好きだからかなあー。
昔のトレンディドラマは三角関係ものが多くてね。バブル時代の欲が反映したようなドロドロしたものばっかりでした。でも、スノメモの三角関係は相手を思いやるがために話が拗れるでしょ。その真摯さが素晴らしいって思います」
「さっき話題になってたんですが、うしがらさんは複数の女の子と付き合ったことってありますか?」
「複数の女性と付き合ったことはないですが、奥さんと付き合う前、他にもう一人、強く惹かれていた人がいました」
「そうなんですか」
「僕が当初スノメモに引き込まれた理由はバンドものだと思っていたからなんです。
僕が大学生だった頃は第二次バンドブームでね。サークルでドラムを叩いて適当にヘルプとかしてたんですが、二つ下に物凄く見た目と歌声が好みの女の子がいたんですよ。仄かな憧れがあって、一緒にバンド組みたかったんですが、単に歌うのが好きって感じで……、上手くいかなくてね。
それとは別に、一つ下に歌は上手くないんだけど、独特の世界観の歌詞を書く面白い女の子がいて。その子はギャルバン組んで毎月しっかりライブハウスで演奏しててね。何回か聴きに行くうちにすっかりその一風変わった世界観のファンになってしまったんです。ですが、ある日ライブの打ち上げに着いて行ったら、思いもかけず告白されてしまいまして」
「あらら……。で、どうされました?」
「悩みましたね〜。でも結局、一風変わった世界観の女の子と結婚しました」
「下世話な質問ですけど、選んだ理由は?」
「彼女のことを尊敬しているからですかね。友達としても最高に面白いですし」
「尊敬……、友達……ですか?」
「尊敬できない人とはお互いを愛することはできないし、友達じゃない人とは長く付き合えませんよ。
『Snow Melody』の三人は恋愛では三角関係ですけど、お互いを大切に思って尊敬し合ってるし、親友じゃないですか。
……リサねこさんのSSのテーマもそこにあるんですよね?」
「えっ。ええ、そうです」
「ともかく、そういう音楽を通じた友情と恋愛模様っていう所に、自分の過去を重ねたのかもしれません」
恋人に対する尊敬……、友達……か。
わたしが今まで、全く考えて来なかったこと。考えるのを避けてきたことだ。
それを、自分の正面に置かなければならないってことか……。
やっかいな課題を押し付けたわね、詩音。
「リサねこさん?」
「あっ、すみません。ちょっと妄想の世界に入り込んでました」
「それなら良かったです。ひょっとしたらシニアのおじさんの一人語りにドン引きされたのかと心配してました」
「いえ、そんなことないです。素敵なお話でした。それにわたし、年齢なんか関係ないと思います」
「そう言ってもらえると気持ち的に助かります。何せ、皆さんお若いから」
「えっ、でもわたし、アラサーですよ?」
「うちの上の娘もそうですが?」
「…………」
「ふふふ。お互い様ですね」
「そうですね。わたしも気にしないことにします」
そう言って、うしがらさんはわたしのビアグラスに自分のグラスを軽く合わせた。
それからわたし達は静かにSSのネタを探すと称して、お互いに思っていた『Snow Melody』のストーリー上の謎について語り合った。
これは本当に有意義だった。良い感じで復習できた。
うしがらさんが唯一継続していた趣味は読書だったらしい。
実はわたしもそうだ。
「でも、ドラマになるような流行りの小説を、文庫本が古本になるまで待って買うくらいの情熱しかありませんでした。だから二次創作小説と出会った時は衝撃を受けましたね。こんなことして良いんだ、って思ってね」
「あー、わたしも最初はびっくりしました」
「それで、二次創作の楽しさにはまりました。思いついたらスマホのメモ帳にすぐ打ち込めるんですから。防水すればお風呂でも書けますし。
ほんと便利でお気軽で楽しいです。
まあ、僕はリサねこさんみたいに長い物語は書けないし、アリサや深雪が辛い目に会う話も書けないんですが」
「良いんじゃないですか。作風が被るとわたしも困るし?」
「おっ、なかなか黒い発言ですね」
「うふふふ。女ですから」
などとほのぼの会話していたら、終了の時間になったようだ。
「では皆さん、夏コミで会いましょう」とモラベーさんが閉めてお開きになった。
コミケって東京ビッグサイトだよね。関西の集まりなのにみんな行くのかしら。
「時間が合えば、僕のサークルにも来てくださいね」
「うしがらさんも出るんですか」
「初めてなんですよ。まだ入稿してなくて正直焦ってます。でも今日は楽しかった」
「関東勢主催のオフ会もあるし、ぜひ遠征してきて下さいよ」
テタンジェさんにも声をかけられた。
「……検討します」イケメンに言われたら、考えないとね。
「リサねこさーん」モラベーさんに手招きされた。
「京都勢ですよね。軽く二次会どうですか。日本酒の美味しいお店に行きません?」
「行きます」
待ってましたとばかりに、わたしは返事した。
次回06話は、2024年12月19日19時に更新予定です。