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健太の日記LIVE  作者: 蔓草登上
5/10

あっと驚く料理術 アッと驚く意外性

2021/01/29




  強風



 健太、テレワークにて 真正家へお邪魔する。

真正家の洗濯物は 既に 室内へ干されていた。



「また来た。」

鬼空が 紙の人形ひとがたを作らされているので、健太が来たのが 唯一の息抜きなのである。


「今日は 何しに来たんだよ。」

健太が 一目散に 寿樹の部屋へ行こうとするのを ふさいだ。

「どいてよ、仕事するんだから。」

「お前の会社も ようやくテレワークするようになったか。」

皮肉めいて言う。

「寿樹は?」

「さぁ、部屋に居なかったら 知らん。」



部屋には居なかった。

奥内の掃除でも しているのかもしれない。

仕事が 入っていない日は もっぱら 清掃が神職の仕事だからだ。



健太は 寿樹の部屋のWi-Fiから自分のノートパソコンに繋いで 仕事をやっつけた。

「テレワークって意外と ロスが多いよね、牧野さんに添付してもらわなきゃ 次進めないや。」

その時、障子が開いた。


いつになく 背筋の奇麗な寿樹が 立っていた。


「なんだ、私の部屋で 声が聞こえるとおもいきや 健太来ていたのか。」


普通、女の子の部屋に勝手に入る事は 許されていないが。

僕は、中学の時から ここへお泊りに来ているし、この部屋のインターネットを引いたのも僕がやったこともあって、出入りが自由な域に達している。


「うん、ごめんね。寿樹の姿が見えなかったから 先に仕事させてもらってる。」

寿樹は 怒らずに 直ぐに会話を切り替えた。

「弦賀が忙しくてな 買い物に行けなかったんだ、お昼あるもので 作ってもらいたいのだが お願いしてもよいか?」

「いいよ。」

健太は パソコンを閉じて 立ち上がった。



「ある食材は?」

冷蔵庫には キノコがあった。 肉は無し、冷凍庫にシーフードミックス1袋。

米あり、蕎麦あり、ソーメンあり、パスタあり。

ネギ少量、人参少量、玉ねぎ・ジャガイモ・キャベツあり。

「油は?」

「あるはずだ。」

サラダ油・ごま油・オリーブオイル。

「じゃあ、食材が無いって事だね。」

「重大だ。」

健太が 賞味期限の切れた 食パンを見つけた。

「これ、もったいないな。」

「そういえば あまり食べなかったなぁ。」

「もったいないから 焼いて使いたいな。」

健太は もう一度 油の量を確認して サブ食材を ガサゴソ探し始めた。


寿樹は 黙って 見ていた。

しばらくして健太が

「いつも 食べないメニューを作ってみよう!」

と明るい顔をした。


寿樹が手伝いで トーストのパンを焼いていたら、ニンニクとオリーブのいい香りにつられて来た鬼空の姿があった。

 「なに なに?」

とやって来た。

「鬼空の手伝うところはない、型抜きしてろ。」

「型抜きじゃねーや!」

鬼空が怒る。

「健太が 昼飯作ってくれるんだろ?俺だって 手伝うよ。」

相変らず にぎやかなところが 好きなようだ。

「健太は、簡単だから 直ぐに終わるって 言ってたぞ。」

「昼飯だぞ?」


健太が鬼空を見つけると声を掛けた。

「もう、出来るよ。」

「え!!はえー。」

「ほらな。」

と寿樹が言う。

寿樹も健太の料理に興味があるらしくて、メインが無い食材で どこまで変わった料理が出来るのか 興味深々だったのだ。



寿樹のパンが 焼きあがったら 出来上がりだった。

「これじゃ、弦賀 昼飯に間に合わねーな。」

「弦賀さん どこか 行ったの?」


「用事が出来たって 出掛けて行った。」

「3人なら ちょうどいいや、残り物で何とかなりそうだよ。」

と言って オリーブオイルたっぷりで煮込んだアヒージョをコースターの上に乗せた。


「寿樹の焼いてくれた パンに浸して 食べるんだよ。」

「知ってる アヒージョだろ。」

鬼空は知っていた。


「オイルで食べるのか?」

寿樹は初めてだった。

「そうだよ、中の海老やイカ・キノコも一緒にどうぞ。」

寿樹は感心した。


「凄く早く出来たが、これは 何を入れているのだ?」

「特に…ニンニクと上質なオリーブオイルだけだよ。後はお好みで マッシュルームやらホタテ・鶏肉・貝なんかあるよ。」

「少し ピリ辛…。」

「あ、忘れてた、タカノ爪を入れてある。」

「地ビールが飲みたくなるねぜ。」

「鬼空は 飲み屋に行きすぎだよ。」

真正家の胃袋は 健太が握ったともいうべきだった。



テレビを見ながら 鬼空が言った。

「コロナ患者、施設抜け出し 罰則無しにしたよ。」

「罰金100万円じゃなかったの?」

「ウム…罰則でも いいのになぁ。」

「感染者が 出歩いちゃあ、更に感染拡大につながるのにね。」

「ウチの 宿坊でも 抜け出しがあるらしいから 鍵はかけておくように。」

はい。とみんな 寿樹の命令に従う。


「それにしても、なんで取り消しにしたのかな?」

「国は 自分が出来ない事を 国民に責任を おしふけふのかっへ…」

「食べながら 喋んなくていいよ。」

アヒージョは グツグツなので 熱い。

「そんなこと言っちゃったの?」

「ふん」

まだ、熱いらしい。

「せっかく 罰則で固められると思ったのに。」

「そんなこと 言う 日本人は多いな。」


弦賀さんが 帰って来た。

「何か おいしそうなにおいがしますね。」

「弦賀遅い。」

「え?」

「弦賀さん、パスタでもいいですか?残り物をかたずけていたので。」

「俺ら 残飯整理だったのかよ!」

鬼空が 怒った。


「健太さん 何でも構いませんよ。」

そう言うと 足早に 洗面所へ向かって行った。


寿樹は思う。

この後、パスタを作るとは 一体何を具材にして?と。


健太は パスタをゆで上げると 残ったアヒージョを持って行った。

四角にカットしたキャベツと共に フライパンの上で踊った。

「ペペロンチーノか?」

鬼空が 言う。

「弦賀さん、パスタの味は 何が良いですか?」


「私は パスタと言ったら ナポリタンしか浮かばないど日本人ですね。」

健太は 冷蔵庫にトマトのジュースを取り出すと それをパスタにかけた。

「弦賀さんが ナポリタン派だとは 思わなかった。これで ごまかせるでしょうか?」

水分を 蒸発させて 玉ねぎを加えて甘みを出し、見た目はトマト色のナポリタンに早変わりした。

弦賀さんの目の前に置かれると、隣の寿樹が驚いていた。


「美味しそうですね、さすが健太さん。」

「健太は どこで料理を学んだんだ?」

寿樹が 聞きたくてしょうがないといった感じだ。


「最初の料理は ばあちゃん。母親が他界してから 僕が手伝うようになって、でも そのあとは如月じいに教わったんだよ。料理は 味ではなく ニオイで感じなさいって。」

「如月じいか 伝授したな。」

「匂いって、味見はしないのか?」

「最終的にするけど、最初は 食材の持ち味を損なわない様に 炒めた時のニオイで 何が足りないか 感じるんだ。」

「感じるだって。」

寿樹が鬼空に眼を合わせた。

「俺には 舌しかわからねぇ。」

「ニオイで何が足りないか そこで 料理の味を決めるとは 健太さんは 料理人の道に進んだ方が良かったのではないでしょうか?」


「あはは、それは無理です。僕は 料理がキライなんです。」


皆が一斉に 「あ!?」と言った瞬間だった。









挿絵(By みてみん)

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