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昼下がりのオカマと犬


「ちょっと言わせてもらうわ。あたしはオカマじゃないわよ!


この口調は昔変装して井戸端会議に毎回混じっていたら取れなくなっただけ。


服とかアクセサリーとかは、キラキラしたものが好きだからであって、別に女になりたいだなんてこれっぽっちも思ってないわよ。フリルは好きだけど別にスカートとか履いてないんだから女装とは違うでしょ! 」




「なあ、魔王。空見て誰に向けて喋ってんの? 」




足元で茶色の犬がとある男(?)を見上げて喋った。




「別にどこだっていいでしょ。あと魔王って呼ぶのは禁止よ。この辺りではブラックスー・パーゴージャスって名前使ってるんだから、それで呼んで頂戴。」


「あのさ、その名前、ダサくない? 」


孔雀模様のブラウスや宝石で着飾った男はふんっと澄まし顔を作り、歩き始めた。


犬もそれに続く。




一人と一匹は丘の上の芝生まで歩き、芝生の上に並び座った。男は先程買った幾つか茶色い袋を開いた。


紙製のナプキンを広げ、その上にサンドイッチ、スコーン、ベリージャム瓶を乗せる。


犬の前にもナプキンを広げ、サンドイッチを置いてやる。


「ありがとう。いただきます。」


犬はふわふわの小さな茶色い尻尾を振ってサンドイッチにかぶり付いた。


男の方もサンドイッチを手にとり、静かに食べ始める。




そして袋から、一冊の絵本を取り出し片手でパラパラと捲り始めた。




かつて、この世界には魔王がいた。魔王は戦争を引き起こし、世界を絶望の底へと叩き落とした。だが、そこに一匹の聖獣が現れ魔王を打ち倒した。魔王の手下達は退散し、一部領土を奪い、結界を貼ってそこへ逃げ込んだ。


それが聖獣伝説である。




「だいぶごっそり省かれてんな。色々と。」


サンドイッチを食べ終わり覗き込んだ犬が言った。




「仕方ないわ。歴史ってそういうもんよ。権力者達の都合の良い様に書かれる。あらぁ、フフフ。あんたこんな風に描かれてるわよ。」




男はニヤニヤしながらバザーで買った児童書の挿し絵のあるページを犬に見せた。




再び覗き込んだ犬は顔をしかめる。




「うわぁ、ユニコーンみたいにやってる。茶色のトイプーをどう描いたら白くて角の生えたアフガンハウンドみたいなのになるんだよ。神々しすぎるだろ。」




「これを読んでる子供達に、あんたの姿見せたら絶句するでしょうね。」




「いや、そもそもこれが俺だって信じないだろう。」




「それもそーねぇ。こぉーんなちんちくりんの犬っころが魔王倒しただなんて、てか、そもそもあたし倒されてないし。」




「いやいや、倒しただろ。おい、誰がちんちくりんだって!? 」




「さてと、そろそろ行きますか。」




「聞けよ! 」




片付けた男はさっと立ち上がり歩き出した。




犬も慌ててその後を追った。

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