陥落
私は立ち上がり、生きている者達を殺す為に歩き出す。
視界に入った者は、兵だろうが民であろうが殺していく。
「ルノア、見つけた。」
クロウに声をかけられ振り返ると、彼が大きな布を抱えていた。
その布に手をかけ、ゆっくりと捲る。
そこには、綺麗なままの白骨がある。
「良かった…母さん。」
私は、そのに父さんの頭蓋骨を入れ、また布を被せた。
その布は、クロウに持っていてもらう。
「私は、まだやる事があるから父さん達はお願い。」
「わかった。」
そう言うと、いつもの様に彼は私の後ろをついてくる。
そんな時、私の背に何かが当たる。
「バケモノ!!お母さんを返せ!!!」
顔を涙でぐしゃぐしゃにした少年が、石を手に叫んでいる。
バケモノ…そう、私はもうバケモノなのだ。
血塗れの手を一度見る。
私はバケモノだ。
「そう、私はバケモノ。だから、あんたも殺すわ。」
「ひぃっ!?」
私の刀が少年を斬りつけようとした時、それは別の者によって塞がれてしまう。
「…お前、何やってんだよ…。」
「あんたこそ、何のつもり?」
距離を取り、私の攻撃を防いだダイゴを見る。
「何で…何でこんな事になったんだよ!!殺すのは聖騎士だけの筈だろ!?」
「計画が変わったの。この国の人間は皆殺すわ。」
「こんな子供までかよ!?これじゃあ、あいつらと同じじゃねぇーかよ!!!」
「なら、あんたが止めてみなさいよ。出来るとは思えないけど。」
私がそう挑発すると、ダイゴは少年を突き飛ばして私に斬りかかってくる。
ダイゴの力任せな攻撃は、私には通用しない。
私はダイゴの腹を蹴り、建物に吹っ飛ばす。
「そんな事で止められるの?」
「ごほっ!…舐めるな…!がはっ!?」
起き上がる隙も与えず、今度は胸を蹴りつける。
壁にめり込んだダイゴは、血を吐き苦しみに顔を歪める。
「私は、覚悟しているわ。あんたはどうなの?まだ、私を許そうとしてるでしょ?だから弱いのよ…この偽善者。」
「!!」
心が折れたのか、ダイゴは項垂れて動かない。
私はダイゴに背を向け、隠れてこちらを伺う人間を仕留めに歩く。
「ぐぅっ!?」
右肩に痛みが走り、背後にいるダイゴを蹴り飛ばす。
肩からは生暖かい血が流れ出し、痛みを主張する。
振り返ると、ダイゴの刀に血がついている。
「俺は、お前を殺したくない!」
「ふっ…それが甘いって言うのよ…。」
「だとしても!俺は、お前を殺したくないんだ!!」
私は、本当に彼の心を折る事をしてみせる。
それは、彼の逃した少年を目の前で殺す事だ。
昨日で分かったと思っていた。しかし、それは違った。
隠れていた少年に、魔法を放つ。
少年は、何の抵抗もできないまま、親と同じように凍りついて死んだ。
それを呆然見つめるダイゴの瞳から、光が消えていくのがわかる。
そんな彼の背後を抑え、囁いた。
「さっき私を殺さなかった事を後悔するが良いわ。私は、命が続く限りこの地を踏む人間を殺す。」
「止めろ!?」
「悔しいなら、私を殺しに来なさい。」
そう言って、ダイゴの意識を落す。
倒れた彼を見て小さく謝るが、聞こえていない事など分かっている。
ダイゴはクロウに捨てに行かせ、私は王都の人間を殺していった。
この王都は、のちに《血塗れた鬼女の国》と呼ばれる。
王都に囚われた魔物は全て逃した。
その中には、私についてくると言う者も多くいた。
人間に多くの仲間を殺され、共に囚われた者達が次々と連れていかれて帰ってこない暗い牢獄で、次は自分の番なのではと怯えて過ごしていたらしい。
しかし、そこに現れた私は人間の血を浴びた鬼人。彼等には、私が神様の様に見えたらしい。
勿論、私はそんな存在ではない。
なのでそう言う者には、一度痛い目を見せて、それでもと言う者のみ受け入れた。
私が背負うのは、私が殺めた死者の魂だけでなく、この行き場を無くした魔物達もらしい。
ヘレーネの王都は堕ちた。
しかし、ヘレーネの貴族達は兵を上げて攻めてきた。
当たり前だ。
自分達の王を…民を…そして家族を殺されたのだ。攻めて来ない筈がない。
しかし、私はそんな人間達も容易く屠った。
人間は数こそ多いが、力は最弱のゴブリンより少し上といった程度で、鬼人である私の敵ではない。
数日で戦いは終わり、この虐殺の事は各国に知れ渡る事となった。
他の人間の国である《ナルタ》や《クリスタ》は、激怒し攻め込んできたが、残念ながら返り討ちにしてやった。
もう一つの人間の国や、魔物の国々はただ静観するのみだった。
こうして、ヘレーネは私のものとなった。
人間達は静かになったが、攻め込む機を狙ってはいるようだ…。
私は玉座につき、この王都を…城を…私を殺しに来る何者かを待ち続ける。




