始まった復讐
男に言われるがまま、小道に入り進む。
そして、しばらく進むとそこは行き止まり。誰もいないように見えるが、建物の中にいくつものこちらを伺う視線を感じる。
「何故、お前がここにいる。もう一人はどうした。」
「あら、何のことかしら?」
「惚けるな。お前は、鬼人の村に居ただろう。」
そう言うと、男は左手で私のフードを取った。
白い角と縛っていた銀の髪が晒される。
「よくわかったわね?」
「魔物が、力に合わせて身体が成長するのは知っている。」
「そう、でもあなたも馬鹿ね。わざわざ私の前に出てくるなんて。」
「民を巻き込まない為だ。」
「何もしてない鬼人は殺すけど、同種族は守るのね。この国の騎士団長さんは。」
右腕と左の耳介を失った男を私は嘲笑う。
しかし男は言った。
「…お前も、俺の守る対象だ。」
「…は?」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。いや、今もわからないが…。
男は真面目な顔をしている。
冗談では無いのだと言うことはわかった。しかし、意味がわからない。殺した相手の生き残りが、守る対象とはどう言うことだ??
「あんた…頭可笑しいわよ?」
「いいや、可笑しくない。お前は、何も知らないのか?」
「あんたがやった事は、全て覚えているわ。」
「違う。母親の事だ。」
「母さん?あんた達が、墓を荒らして盗んでいったんでしょ。」
「違う。そう言うことではない。」
なんなんだこの男。何が言いたいのかわからない。
「ルノアは、何も知らないのか。」
訳がわからないと引いていると、クロウが話し出した。
こんな男と話すなんて…と驚いだが、話は私を置き去りに進み出した。
「お前は?」
「私の事はいい。彼女に話す事があるのだろ。」
「あぁ、ルノア…と言ったか?」
「えぇ、そうだけど。」
「単刀直入に言うが、お前の母親はこの国の王女だった方だ。」
「…は?」
何を言っている?
母さんが王女??
「死の間際、あの男は言っていた。『これ以上、妻と娘を苦しめるな』と…お前の姿を見て、まさかと思った。村の外にあった墓を掘り返してみれば、オルビア様の身につけていた装飾品があった。それに、この国の王族のみが受け継いでいる銀の髪をしていた。それに、お前のその瞳も、この国の王族である証の紫だ。」
「…それで?もしそれが真実だとして、それがなんだと言うの?鬼人を殺し墓を荒らして良い理由にはならないわ。」
長々と語られたが、考えてみたらそれがなんだと言うのだ。
「父さんは、母さんを攫ってなんかいないし、殺してすらいない。私が話してあげましょうか?母さんは、国から逃げ出して、死にかけていたところを旅人だった父さんに助けられたのよ。そして、二人は互いに惹かれあって結ばれた。それが母さんから聞いた話。母さんの死因だって、病だったわ。父さんや私は必死で看病した。それでも亡くなったの。それは殺しに入るのかしら?なら、この世界には人殺しだらけね?」
私は、男を捲くし立てる。
これが真実だと、私は知っている。
父さんと母さんは、見ていて目を逸らしたくなるほど愛し合っていた。
そして、私の事も愛してくれていた。
いつも笑って、偶には怒ったり泣いたりして、そんな有り触れた家族だった。
「あんた達はまた、私の家族を侮辱するのね。」
「違う!俺はそんな事が言いたいのではない!!」
「知らないわよ。まぁいいわ。わざわざ来てくれたのだから、ここで死んでもらうわ。死体は、民衆と王の前に置いて上げる。その後、王も殺す。」
「話を、話を聞いてくれ!!」
男は叫ぶが、私の心には響かない。
父さんや村人達を殺し、墓を荒らして行った。それだけで十分だ。
「お前達!逃げろ!!ぐあっ!?」
「騎士長!!」
手をかざし、騎士長の足を氷で動けなくする。すると、隠れていた兵達が出てくる。
しかし、ある事は分かっていたので、それと同時に氷漬けにする。
悲鳴を上げる間もなく、氷の中だ。
そして、五人程氷漬けにすると気配がなくなった。
「じゃあ、最後はあなたね。」
「…ここまで、成長していたとは…。」
「私だって、三年間も遊んでいた訳じゃないわ。」
凍らされた仲間を見た後、私を苦しみながら見つめる。
しかし次の瞬間、何故か彼は悲しいような…しかしそれでいて、救われたような顔をした。
私の手に握られた刀は、そんな男の首を刎ねた。




