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王都手前にて





「ふぅー!スッキリしたぜ!!」

「それは良かったね…。」



兵士を殴り終えたダイゴは、とても清々しい笑顔である。


一方私は、兵士の一人を抱えて溜息をつく。



「ほら、あんたもそいつをさっさと持ちなさい。もう行くわよ。」

「はいよっ。」



今までボコボコにしていた兵士を担いだ。

残りの一人は、クロウが抱えている。


クロウは、この辺りを知っているのか、先導してくれた。

最短で人間の村に着き、人が居ない間に村の入り口に三人を放置してきた。


まぁ、これで死ぬ事はないだろう。




そのまま私達は、王都へ向けて歩いた。

クロウに運んでもらった方が速いのはわかっているが、何となく断ってしまった。


しかし驚いた事に、歩きだと言うのにダイゴが駄々を捏ねない。有難い事なのだが、なんだか意外過ぎる。


その事について尋ねると


「あぁ、おっさんの無茶な修行に比べれば、こんなのなんて事ない。」


だそうだ。

一体、どんな修行だったのだろうか?







そして、何ヶ月かした頃に、王都手前の街まで来た。

この街には旅人も多く、マントにフードの怪しい私達もとくに怪しまれる事はなかった。


私達は、道すがら狩った動物の肉や毛皮を売ったお金で、安い宿をとった。勿論一部屋だけだ。

無駄遣いするような余裕はない。



部屋には、ベッドが一つとテーブルと椅子が1セットずつあるのみだった。

何を思ったのか、クロウは兎も角ダイゴまでがベッドを譲ってきた。

ダイゴなら、自分がと言うかと思ったのだが、確かにここに来るまでも地面に平気で寝ていた事を思い出す。


やはり、環境が変われば人も変わるのだと思った。つまり、感心した。ダイゴに。



「…何だよ。」

「いや、別に。明日槍でも降らないといいなぁ〜って、思っただけ。」

「お前…人の親切を何だと思ってんだよ。」

「神の奇跡。」



そう言って笑うと、クロウが悲しそうに笑っているのが目に入った。

最近気づいたのだけど、どうやらクロウは《神》と言う言葉があまり好きではないように思える。

私も、言わないようにはしているが、つい口から出てしまうことがある。

そういう時彼は、いつも悲しそうに笑っている。



「ごめんなさい。」

「いや、大丈夫だよ。君は何も悪くない。」

「それでも、傷つけてしまったのは事実だわ。」

「お前ら、俺の前でイチャつくなよ。」

「なら、後ろでも向いてなさいよ。」

「お前なぁ…。」



こんなやり取りも、もう何度目だろうか。

何とも穏やかで、心の重りを一時だが忘れてしまう。


復讐が終わったとして、果たしてこんな日常に戻れるのだろうか…。私は、偶に不安になる。言い知れない恐怖に襲われるのだ。



「大丈夫。」

「…ありがとう。」



私の不安を理解してなのかはわからないが、クロウはいつの間にか握りしめていた私の手に、己の手を優しく重ねてくれる。



「はぁ…やってらんねぇー!」



ダイゴはそう言うと、私に譲ったはずのベッドで不貞寝し始めてしまった。


それを呆れて見ていると、クロウは言った。



「鬼人は、生涯に一度しか恋をしない。それが実ればいいが、実らなければ子をなせない。」

「だから、鬼人は数を減らしていったのよね…。でも、ゼロではなかった。」

「彼はまだ生きてる。だから、火がつく前に水で濡らしてやった方がいい。ルノアは、ワタシの愛する人だから。」

「そうね…ん?今なんて言った!?」



聞き間違えかと思い、勢いよくクロウを見る。

すると、普段開かれていない彼の瞳と目があった。

澄んだ空色が、優しい眼差しで私を見つめている。


そこで、聞き間違いではないと理解して、顔に熱が集まる。

きっと、今の私は真っ赤なのだろう。


彼は目を細め、私の頬に片手を添える。



「また、こうして出会えることができて、本当に幸せだ。」



そういうと、目に涙を浮かべるクロウ。

偶に、私にはわからない事を彼は言う。


しかし、それも何故か、私の事なのだと分かる。不快さなんて微塵もない。



「嬉しい…。」



私達は見つめ合い、自然に口づけを交わす。





しかし…。



「…お前らなぁ!いい加減にしろ!!俺もいるんだから他所でやれよ!!!」



と、不貞寝していたダイゴが勢いよく起き上がって抗議してきた。



「あんたも、いい人が出来るといいわね?」

「うるせぇ!!」

「ダイゴは運次第だな。」

「はぁ!?お前喧嘩売ってんのか!!」

「おい!うるせぇーぞ!!!」



隣の部屋から、思い切り壁を殴られて、部屋は静まり返る。



そして、何事も無かったかのようにダイゴがベッドで休み、私とクロウは床で休む事になった。







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