目指す場所
出発して数時間、日が沈み始めていたので野宿の準備にかかった。
食事を済ませ、焚き火を囲んでいるとダイゴが言った。
「それで、俺達は何処に向かってんだ?」
「…は?」
「たから、お前について行ってるけど、何処に向かってんの?」
「…信じられない。あんた、今までそんな事もわからずついてきてたの…。」
あまりの阿呆さに、絶句する。
馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、ここまでとは…。
私が一人額を抑えていると、クロウが教えてくれた。
「ルノアも知っていると思うが、彼の師匠は戦闘狂だ。彼には、戦い方くらいしか教えていない。」
「あぁ、そうだったわね…。」
呆れてしまう。
こいつは本当に、仇を取る気があるのか?
「何だよその顔。」
いかんいかん、どうやら顔に感情が出てしまっていたらしい。
ダイゴが眉根を寄せ、怪訝そうに私を睨んでいた。
「あら、ごめんなさい?あんたの覚悟が疑わしくて、つい顔に出てしまったわ。」
「何!?」
「だってそうでしょ?あんた、自分の村を襲った相手のことなんて、どうせ何もわからないのでしょ?」
「!!それは…。」
ばつの悪そうな顔をして、目を逸らすダイゴ。
私は、一つ溜息をつく。
本当に何なのだろう。イライラする。
「いい?一度しか言わないわよ?」
「あ、あぁ…。」
「私達の村を襲ったのは、人間の国《ヘレーネ王国》の聖騎士よ。先生が調べてくれた所によると、私が腕を切り落としたのはその騎士団の騎士長らしいわ。」
「あの男が…。」
どうやら、顔は覚えているらしい。
それすら怪しかったら、仇を取りに行く前にこいつを殺していたかもしれない。
「それで、私達が向かっているのはそのヘレーネ王国の王都よ。わかった?」
「直接乗り込むのかよ?」
「えぇ、そうよ。バレたらきっと即戦いになるわね。でも、一国を除いた全ての国の人間は、魔物を害獣か何かだと思っているわ。同じ生き物なんて、これっぽっちも思っていない。だから、どうしたって戦いにはなるのよ。私達は魔物なんだから。なら、遠回りするだけ無駄でしょ?」
「まぁ、確かにそうだな。それの方が手っ取り早いか!」
人間なんてそんなものだ。でも、母さんは…母さんだけは違う。父さんの事も私の事も、心から愛してくれた。なのに、母さんと同じ筈の人間に村は消された。皆殺された。
そして、墓を掘り返し母さんを攫った。憎き下等生物。
「おい、大丈夫か?」
「あぁ…ごめんなさい。なんでもないわ。」
「そうか…。」
「…。」
「…。」
沈黙が落ちる。
だが、それもつかの間の事だった。
「…聞こえる?」
「あぁ。だが、まだ遠い。」
「クロウ。」
「三頭の馬がこちらに向かって来ている。」
「そう、なら一旦隠れましょう。ただ通り過ぎるだけなら見逃しましょう。」
私達は、焚き火を消し近くの木の上に身を隠した。
そして、しばらくして三騎の馬に跨った騎士が、馬から降りて松明を持ち、消した焚き火の周りを見ている。
『あの鎧…。』
『村に来た奴らと同じね。』
下を見下ろしながら、小声で会話する。
私達には、気づいていないらしい。
「まだ温かい。」
「近くに隠れているのかもしれねぇーな。」
「だが、魔物とは言い切れないんじゃ…?」
声からして、まだ若い騎士のようだ。村に来た奴らの中には居なかったような気がする。
「いや、俺達の接近に早い段階で気づき、身を隠したのだから魔物だ。」
「ただの野盗という可能性もありますよ。」
「そうですよ。」
「それになんの問題がある?どちらにしろゴミに変わりない。探し出して殺すぞ。」
「うわぁ…物騒ですね。」
「でも確かに、魔物なら殺さないと後々まずい事になるかも。」
バキッ!!
思わず、掴んでいた木を握り潰してしまった。
「なんだ!?」
「この木の上だ!!」
「えっ!?本当に魔物??」
私は、掌には収まらない程の太さの木を折り、人間に向けて投げた。
「うわ!!」
「大丈夫か!!」
「ぎあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!あじが!!あじがぁぁぁぁ!!!!」
一番背の低い騎士の左足に、木が命中したらしい。
倒れて暴れている。
「ゴミに殺されると分かったら、どんな顔をするのかしら?」
「お前、抜け駆けはズルいぞ!」
ダイゴは、拗ねたように文句を言ってくる。
まぁ、当然無視だが。
私はフードを被り木から飛び降り、騎士の前に姿を現した。
ダイゴとクロウも、すぐに降りてきて騎士を囲む形で立った。
「何者だ!!」
「あなたが、ゴミとと言った者です。」
「!!ルート!剣を構えろ!!」
「でもファラが!!」
「死にはしない!ほっておけ!!」
「はいはい。なら、いっちょやりますか。」
倒れて喚いている騎士を抜いた二人が剣を抜く。
「なんだ、来ないのか?偉そうなのは口だけか。」
「…はぁ、信じられない。」
「今更俺達に恐れをなしても、お前らにあとはない!」
本当に信じられない…。
「こんな奴らに、父さんや伯父さん達が殺されたの…。」
「ルノア、君の父と伯父をやったのは騎士長だ。」
「あぁ、あとはこんなもんなのね…でもこんなのに…。」
「最悪にも程があるな。」
ダイゴにまで呆れられるこいつらとは…。哀れだ。
「相手の力量も測れないなんて…ダイゴ、あとはあんたに上げるわ。」
「良いのか?」
「こんなの倒しても仕方ないじゃない。ただの蟻程度を潰しても、何にも面白くないわ。だから、あんたがどれだけ強くなったのか見せて?」
「そういう事なら、よく見とけ!俺の三年間の集大成を!!」
ダイゴは、手を鳴らしながら軽く準備運動をする。
何処と無く、伯父さんを思い出させる行動だと思う。
流石親子だ。
そして、一瞬で騎士の目の前に移動して拳を振りかぶった。
「お前らは皆殺しだ!!恨むなら自分達の愚かさを恨めよな!!」




