三年
時が過ぎるのは、なんて早い事なのだろう…。
私が、ローラン先生の元へ来て、もう三年が経った。
先生の教えてくれる魔法技術は、どれも素晴らしいものだ。
殆ど知識の無かった私が、三年足らずでほぼマスターする事ができたのは、偏に先生のお陰だ。
この三年の間で、私の魔力量はまた増えている。
父さんの墓に入れる為に短く切った髪も、もう元の長さまで伸びた。
身体も成長し、リーチが広がったのも嬉しい事の一つだ。
「ほら、これもしっかり被りなさい。鬼人の角は目立つわ。」
「はい、ありがとうございます。」
「あなたも、だいぶ落ち着いたわね。」
「私は昔から落ち着いてますが?」
「…それは、鬼人の中ではって事な。来た当初は、何処の兵士かと思ったわ。」
先生は、そう言って遠い目をしているが、そうだろうか?私は、十分落ち着いていたと思うのだけど?
「それで、ダイゴの準備は整いましたか?」
「えぇ、ピッカピカにしてあげたわ!あんな汚いのと一緒なんて、考えられないわ!!」
「あちらの師匠、あまり衛生的ではなかったのですね…。」
「あの戦闘狂が、戦い以外に頭を回すなんてありえないからね。」
ゼウス師匠じゃなくてよかった…。
先程、クロウがダイゴを連れてやって来たのだが、その格好がもう…何というか、酷かった。
髪はボサボサ、服は…と言うか、服らしきものは身につけていなかった。強いて言うなら、三年前別れ際に着ていた羽織を腰に巻いていたぐらいだろうか…?
あと、身体を洗っていないのか、ドス黒く体臭が…よろしくなかった…。
なので、そんなダイゴを見た先生が、急いで湯を沸かしダイゴを連行した。
引きずられていく様は、修行をサボり伯父さんに連れて行かれるダイゴにそっくりだった。
とても懐かしい…。
そんなこんなで、半日がかりでダイゴを洗浄していた先生は、やり切った感たっぷりの笑顔である。
「ほら、もう外で待ってるから、あなたも行きなさい。」
「はい。」
私は、先生に促され洞窟の外へ出た。
眩しい日の光で、目を細める。
外には、二つの影。
徐々に目が慣れ、二人がはっきりと見える。
クロウは、相変わらず美しく歳を感じさせない。
ダイゴは、朝見た時とは全く違う好青年になっていた。
癖のある赤混じりの黒髪を一つに結い上げ、服装も私と同じような異国の服にマントをしている。
三年間会わなかっただけなのに、背が私よりも伸びていて、身体つきも全然違う。
「…ダイゴ、久しぶりね。」
「…あ、あぁ、そうだな。」
「クロウから聞いてはいたけど、ちゃんと修行していたみたいで良かったわ。」
「当たり前だろ?仇を取る為なら、あのくらいなんて事ない。」
「日頃からちゃんとやっていれば、少しは楽だったのに、本当に馬鹿ね。」
「うるせぇーよ!…お前、変わらねぇーな。」
ダイゴ如きに緊張してしまっていたが、何とか調子を取り戻した。それはダイゴも同じようで、話すうちにやっとらしさが出てきた気がした。
私は、先生に別れを告げる。
「先生、三年間本当にありがとうございました。先生のお陰で、私は前よりももっと力をつけられました。感謝してもしきれません。」
「いやね、そんな畏まって…でも、本当にそう思うなら、死ぬんじゃないわよ?全てが終わったら、ここに帰って来なさい。」
「!!…はい。」
私は、思わず先生に抱きついた。
先生は、少し個性的だけどとても良いエルフだ。
私の新しい家族…そんな風に思ってしまう。
そっと、先生から体を離す。
「行ってきます。」
「ええ、行ってらっしゃい。あなた達も、しっかりやりなさい。この子にばっかり頼るんじゃないわよ!」
そう言うと、先生は私の頭をフードの上から撫でてくれた。
布ごしでもわかる温かさに、笑みが溢れる。
私は、ダイゴ達の元に駆け寄り、先生に手を振って出発した。




