現実は予測では言い表せない
次の日
「あら、今日は早く起きたのね。おはよう。」
「うん。今日は夜更かししなかったからさ。」
「ほらっ!早起きしたからってゆっくりはしないんだよ!ご飯そこにあるから、ちゃっちゃと食べちゃいな!」
「わかったよ。」
あいもかわらぬ母さんの元気さを感じながら、僕はご飯を口に運ぶ。
やっぱり美味しいなぁ。
「それじゃ、行ってきます。」
「気をつけるんだよ!」
昨日と似たセリフを耳に、僕は自転車を漕ぎ始める。
今日は掛け持ち生徒の募集締め切りの日だ。僕ら3人以外に参加しようとしている人はいるんだろうか…。
少しそこは気になるところだ。きっと、僕たちと同じような生活になると思うし、できれば仲良くしたいと思うし。学校に行けば分かるかな。
僕は昨日よりも緊張して学校へと向かった。
「おはよう。」
「お、今日はお前遅れなかったんだな。」
「そう毎日は送れないよ。」
「おはよー。そうちゃん。今日は早起きしたんだねー。」
「昨日に比べたらね。」
「そういや、掛け持ち生徒ってどんだけいるんだろうな。」
この話を早速切り出したのはつっきーだった。
「僕も考えてたけど、意外と多いんじゃないかな?最近、異世界系の本とか売れてるみたいだし、みんな興味は待つんじゃないかな?」
「私は、逆だと思うなー。異世界に行ってまで学校かよー!って人たち多そうかなーって。」
「どっちもあり得そうだよな。まあ、放課後になれば全部分かるか。そこまではお楽しみってことにしとこうぜ。」
「そうだね。」
少し放課後が待ち遠しくなった。
そして、放課後の午後5時。
申し込み締め切りの時間がやってきた。
ピンポンパンポーン
「掛け持ち生徒の申し込み用紙を提出した生徒に連絡します。今学園内にいる申し込みをした生徒は、今すぐ職員室音無の元に来てください。繰り返します。今学園内にいる、掛け持ち生徒に申し込んだ生徒は、今すぐ職員室音無の元に来てください。」
ピンポンパンポーン
放送が終わり、僕たち3人は職員室へと足を運んだ。
「どんだけ人いるんだろうな。ここまで放送するってことは人多かったのかもな。」
「でも、人多いなら職員室に呼ぶかなー?」
「この時間だから少ないんじゃないかって踏んだのかもしれないしね。」
いろんな憶測が飛び交いながら、僕たちは歩き続ける。
どれがあっているのかは、今からすべてわかるのだ。
そして僕たちは、職員室へと辿り着いた。
コンコン
「失礼します。音無先生はお見えですか?」
「はい。3人とも、掛け持ち生徒の希望者でしたよね。」
「そうでーす。」
「他には誰がいるんですか?」
「はい。あと2人ほど希望者は居るんですけどね。」
どうやら、少ない方に寄っていたようだ。
と、そこへ。
ガラガラッ
「失礼します。掛け持ち生徒希望者の星見ヶ丘恵美です。」
「同じく掛け持ち生徒希望者の穂村曉です。」
「えっ!?えみりんも希望してたんだー!」
「そうね。私もゆっこがいるとは思ってなかったわ。」
「知り合いなのか?恵美って人とは。」
「うん、そうだよー。親同士が仲良くてさー。それで知ってるのー。」
「ゆっこから話はよく聴いてました。つっきーくんと、そうちゃんさん…だったかしら?これからよろしくお願いしますね。」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「ふふっ。そんなにかしこまらなくてもいいんですよ?」
「いや、あんたが畏まってるからだろ。」
「私はこれがデフォなので。」
「デフォでそれなのかよ…」
「ん、んんっ。俺のことを忘れてないか?」
「忘れてはないよ。でもあんまり話したことなくてさ。」
「俺はよく話してたけどな。同じゲーム好きとしてな。」
「勿論。つっきーとはよくゲームで対戦したら情報共有してきたからな。つっきーがいるなら心強い。」
「お世辞もいい加減にしろよ。あか」
どうやら、他に来た2人はゆっことつっきーと面識があるみたい。僕だけどっちも知らないんだよなぁ…。
少し寂しいけど、これから一緒になる仲間だし、2人と仲いいならきっと仲良くなれるよね。
「はい、これで掛け持ち生徒希望者全員が揃いましたね。改めましてこんにちは。ルタッカ・バサランに所属している音無琴子です。皆さんの掛け持ちスクールライフのサポートをさせていただきます。先生としても、サポーターとしても今年一年、よろしくお願いします。」
「…え?先生って理事長の言ってたあのグループの一員なんですか?」
「はい。このことはあまり表には出していませんから。私は、この掛け持ちスクールライフの担当者としてこの学園に派遣されました。勿論、先生としての業務もこなしますけどね。」
皆、驚きが隠せないようだった。
「皆さんには、明日から正式にルチェフ・グラテット学園と序樹花学園との掛け持ち生徒として学校生活を送ってもらいます。明日、朝の8時に職員室の私のところに来てください。明日、実際にルチェフ・グラテット学園に行きますから、そのつもりでいてください。授業の用意等は必要ありません。向こうで用意しますので。」
いきなりのことが続き、みんな口が開かないほどだった。そんななか先生は話を続けた。
「今日皆さんを呼んだのは、このことを伝えるためだけではありません。皆さんに、σ世界について少しお話ししておきたかったからです。今から少し長話になるので、部屋を移動しましょうか。」
「…あっ、はい!わかりました。」
先生の発言に脳の処理が追いつかないまま、僕たち5人は先生と共に職員室を後にした。