決断を下すのは1人では難しい
「ゆっこ、つっきー。」
僕はすぐさま2人の元へと向かって声をかけた。
「どしたのー?そうちゃん。」
「掛け持ち生徒のこと、2人はどう思うかききたくてさ。」
「へぇ。興味あるんだな。掛け持ち生徒。」
「まぁ…気にならなくはないよ。行くか行かないかは悩むけど…2人は?」
「私は…どーしよーかなって。でも、別の世界の学校ってなんか楽しそーだよねー。」
「俺も同じだ。掛け持ち生徒なんてそう聞いたことないしな。かなりレアな体験はできそうだしよ。」
2人とも、僕と同じで悩んでいるようだった。
どちらかというと肯定的な考え方だった。
「んで、どうするよ?この申し込み明日までだけどよ。」
「そーだねー。もう少し考える時間欲しいよねー。」
「うん…。流石に1日しかないと厳しいよね。」
僕たち3人は黙りこくって、僕らしかいない4組の教室で考えていた。
ガラガラっ
突然、ドアが開いた。
「あら、皆さんまだ残っていたんですね。」
入ってきたのは4組の担任の音無先生だった。
「あ、せんせー。この掛け持ち生徒ってせんせー的にはどう思いますかー?」
あって初日なのに、ゆっこは気軽に先生と話している。
「掛け持ち生徒ですか…。私は楽しそうでいいと思いますけどね。どちらかというと経験できることは色々とチャレンジしてましたから。皆さんは参加しようと思っているんですか?」
「そうですね。僕たちみんな興味はあるのでどうしようかなと考えてます。なにせ明日までっていうのがネックで…。」
「確かに決定の日が短いと選びにくいとは思いますが、恐らく理事長は皆さんに直感で選んで欲しいからこそ期限をあえて明日に設定されたんだと思いますよ。」
「直感…ですか?」
「はい。純粋に行きたいと思うかどうか。ルチェフ・グラテット学園で生活してみたいと思うかどうか。そこが一番、理事長にとっても皆さんの決定にとっても大切なことだと私は思いますよ。」
先生の言葉にはとても説得力があった。
これも先生の腕の1つなんだろうな。
「あ、すいません。もうそろそろ職員室に戻ります。完全下校には帰るようにしてくださいね。」
そういった先生は颯爽と職員室へ向かっていった。
「お前ら。先生の言葉、どう思った?」
つっきーが口を開く。
「俺は、その直感を信じるのなら、掛け持ち生徒になってやろうって思った。2人はどうだ?」
「僕も、興味は惹かれたからやってみようかな、って気持ちに寄ったかな。」
「私もそーだねー。楽しそーだしねー。」
「おし、それじゃあ決まりだな。俺たち3人で申し込みに行くぞ。」
先生の言葉に助長されるような形で、僕たち3人は申し込み用紙に記入をして、職員室に持っていった。
「失礼します。音無先生はお見えですか?」
「はい。どうかしましたか?」
「私たち、掛け持ち生徒に申し込もうってことで申し込み用紙を持ってきましたー。」
「わかりました。申し込み用紙、預かりますね。また詳しいことがわかったら連絡しますね。恐らく、明日の放課後か明後日になると思います。」
「わかりました。ありがとうございます。失礼しました。」
申し込み用紙を渡してからの家への帰り道。
僕たち3人は掛け持ち生徒としての生活について考えていた。やっぱり、少し不安はあるけど、みんな楽しみが多そうだった。
「何かあっても、私たち3人で一緒に頑張ろー!」
「そうだな。掛け持ち生徒同士としてな。」
「それ、昔からの仲間として、でもいいと思うけどな。」
「いいんだよ。新しい関係になれとくのも大事さ。」
「どぅちもどっちだよー。」
この3人なら何があっても頑張れる。
そう心の中で思いながら、僕は2人と一緒に歩いていた。