事が速すぎると人は着いていけない
姉妹校の理事長が放った言葉に僕は困惑した。
急に来た姉妹校の理事長が生徒の募集…?
しかもこの学園との掛け持ち?
一体どういうことなんだ…?
他の周りの人の顔色を見ても怪しげに首を傾げている人が多い。
皆、唐突な出来事についていけていないのだ。
そして、理事長は再び口を開いた。
「我がルチェフ・グラテット学園は、今皆さんが暮らしているこの世界とは違う世界に存在している。私は皆さんのいるこちらの世界をα世界、そしてルチェフ・グラテット学園のある世界をσ世界と呼んでいる。σ世界はα世界とは言語も文化も常識も大きく異なっている。実質、皆さんからしたら異世界だと思ってもらって構わない。私はσ世界の学園の理事長をしているのはご紹介にあった通りだが、その裏でルタッカ・バサランという組織に所属している。その組織はσ世界とα世界の交流を深める活動を行なっている。その活動の一環として、我がルチェフ・グラテット学園に通ってくれる生徒をこの中から募集する。詳しい内容、申し込み等はホームルームで配られる資料を参考にしてほしい。上限も設けてはいるが基本希望者は全員できるようにしようと思っている。皆さんの参加を心待ちにしている。以上だ。」
理事長は一礼をして壇上から降りる。
僕には何が何だかわからなかったが、分かったことが2つある。
異世界の学校に行けるチャンスであること。
それと、あの理事長が不思議な人であることだ。
「えー、始業式の話でもあったように、この学園とルチェフ・グラテット学園は姉妹校で、この学園からルチェフ・グラテット学園にも通ってくれる生徒を募集することになりました。今から、その事に関する詳しい資料と申し込み用紙を配ります。」
始業式も終わり、4組に戻ってきた僕たちは、先生から配られる資料に目を通した。
ルチェフ・グラテット学園との
掛け持ち生徒募集に関して
我が序樹花学園と、姉妹校である我が校とは異なる世界に存在しているルチェフ・グラテット学園との掛け持ち生徒を募集する。
募集期限は4月7日の午後5時までとする。
掛け持ち生徒に対しては以下のものが設けられる
・序樹花学園での月最低一週間の授業への参加、及びルチェフ・グラテット学園での月最低一週間の授業への参加。その他の日はどちらの学園で授業を受けても構わない。(尚、4月に関してのみ、ルチェフ・グラテット学園での授業の参加は最低2週間とする。)
・テストや授業に関しては、ほぼ平行した内容を行う事になるため、両方のテストを受ける必要や、授業の補修等を行うといったことはない。但し、教員の関係により一部異なる特殊な内容が取り入れられる場合がある。
・ルチェフ・グラテット学園での生活の際に必要となる物資やサポートの施しを最低限受けることができる。(例 滞在スペース 授業料の免除 食材の調達等)
・掛け持ち生徒は月に一度、専用アンケートに回答してもらう事になる。アンケートのデータは、ルタッカ・バサランが厳重に管理し、今後の活動の参考にする。
・掛け持ち生徒としての契約は1年となる。その期間であればα世界とσ世界を行き来することが出来る。
・掛け持ち生徒以外の生徒を別の世界に連れ込んではならない。尚、別の世界の体験した話をする事、写真を見せる事は許可する。
・その他指示がある場合、若しくは質問がある場合の連絡は全てルタッカ・バサランの担当者とコンタクトを取る事になる
皆さんの掛け持ち生徒への希望、参加を心待ちにしている。
ルチェフ・グラテット学園理事長
「期限が早いですが、よく考えて決めてください。以上でホームルームを終わります」
先生の締めの言葉で、今日の授業は全て終わった。
さて…どうしようかな…。