始まりとは常に刺激に満ちている
「こら、蒼司!もう7時半よ!早く起きて支度しなさいっ!」
「…んんっ。…7時半…?もうそんな時間だったのか。昨日徹夜で課題してたからかまだ寝むい…」
今日は4月6日。僕の通う私立序樹花学園の始業式だ。
母親の節乃に急かされた僕、如月蒼司はゆっくりと一階のリビングへと下っていく。
「全く…。始業式早々遅刻なんて、お母さん許さないんだからね!」
「…分かってるよ。今からでも間に合うから。」
「ほら、服はここに置いとくからね!朝ごはんちゃっちゃと食べちゃいなさい!」
「はいはい。」
相変わらず、朝に聞く母さんの声はうるさいなぁ…なんて思いながら、僕は用意されたトーストを頬張る。
…うん、やっぱり美味しい。
「ごちそうさま。」
そういった僕はすぐさま制服に着替える。
うちの学園の制服はネクタイをつけるのだが、1年間経っても未だネクタイの結び方には慣れずに手こずる。そうこうしているうちにもう時計は8時手前を指していた。
「それじゃ、行ってきます」
「気をつけていくんだよ!」
母さんの声を背にして、僕は自転車のペダルを漕ぎはじめた。空は雲で覆われていたが、春らしい暖かな気温で、自転車で感じる風が心地よかった。
「ギリギリ間に合った…危なかった…はぁ…はぁ…」
普段よりも信号に捕まる回数が多く、遅刻ギリギリになったものの、何とか駐輪場に辿り着いた僕は、自転車を駐車させた。
始業時間数分前ということもあり、人はあまりいなかったが、周りにいる同士達は皆、小走りをしている。
そう、今日は始業式。そして今日からは新しいクラスで授業が始まる。つまり、その確認を急いでしないと遅刻になってしまうのだ。
「なんとしても遅刻は阻止しないと…!」
周りに負けじと僕も急ぎ足で昇降口へと向かう。
「えっと…僕のクラスは…2年4組だな。他の人は…って、そんなのやってられる余裕ないな。行けばわかるし、急がないと。あと1分半で間に合うかこれ…」
自分のクラスを確認し、僕はなけなしの力を振り絞って校内を走る。廊下は走っては行けないが、遅刻に腹は変えられない。
ガラガラッ
「お…おはよぅ…はぁ…はぁ…」
何とか滑り込みで間に合った。扉をあけて入ると同士にチャイムが鳴った。
「はい、早く君も先について。朝礼を始めますよ。」
「あ、すみません…。」
初対面の先生にいきなり注意を喰らいながら、僕は空いている席に着く。
「はい、皆さんおはようございます。今日から2年4組の担任になる、音無琴音です。これから1年間、よろしくお願いします。」
ウォー! うちのクラスの担任は女性だー!
先生すごい美人じゃない…? このクラス勝ち組だな。
クラス中から様々な声が聞こえてくる。
それもそのはず。去年まで序樹花学園には女性の先生が非常勤でしかいなかったのだ。今年の4月初めになって、女性の先生がやって来るととても話題になったほどだ。その先生がまさかうちのクラスの担任になるとは…これはラッキーだ。
「はい、静かに!今から今日の今後の説明をしますのでちゃんと聞いててください。まず初めに…」
先生の話を聞きながら、僕はクラスを見渡す。
やっぱりクラス替えの影響で去年と同じクラスの人は少ないな…。
あ、でもあれは多分ゆっこだな。それと…つっきーもいる。この2人がいるなら、安心だな。
「それでは、体育館に移動します。5分後には始業式が始まるので速やかに移動してください。」
いつの間にか、先生の話は終わっていた。
僕はすぐさまゆっことさらの元に向かった。
「おはよう。ゆっこ、つっきー。今年も同じクラスだね。」
「おはよー、そうちゃん。今年もよろしくねー。」
ゆっここと琴塚優梨子はのほほんと答える。
「お前、昨日何やってたんだよ。初日早々ギリギリってよ。」
「あはは…ごめんごめん」
つっきーこと月沼泰雅はニヤニヤしながら楽しそうに僕をいじってきた。
僕とゆっことつっきーは小学校の時からの仲で、基本的にいつも一緒だった。クラスも別れたことがなかったし、グループになる時もいつもこの三人だった。今年もそうあれることを僕は嬉しく感じていた。
「さっ、とにかくトットと体育館いこーぜ。遅れたら面倒だしよ。」
「うん。そうだね。」
「体育館に、レッツゴー!」
「えー、桜の花も咲き始め、いよいよ春を直に感じられる時期になりました。皆さん、おはようございます。えー、春休みはみなさんどのように過ごされましたか。楽しかった人もいるでしょうし、勉学に苦労した人もいるでしょうし、なかには………」
…校長先生の長い話は起きてられるかどうかの精神勝負だよね。これが後20分も続くと思うと大変だ…。
「校長先生、ありがとうございました。」
やっと終わった。これで始業式はほとんど終わったよね。そう思った矢先のことだった。
「それではここで、我が校の姉妹校である私立ルチェフ・グラテット学園の理事長アムルスパ・デリンジョフより、皆さんに重大なお話があります。」
ザワザワと体育館内にざわつきが生まれる。
校長先生だけでなく、初耳の姉妹校の理事長の話まで聞かないといけないのか…と、憂鬱に思う人が大半だ。
そんな中で理事長は一言、こう発言した。
「君達の中から5名、ここ、私立序樹花学園と我がルチェフ・グラテット学園の生徒としてどちらの学園にも参加する、掛け持ち生徒を募集する!」
甘味爲宿です。
これが初投稿の作品になります。クオリティ的には低いものかもしれませんが、頑張って1年間のこのスクールライフを書き切ろうと思います。
今後よろしくお願いします。