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クズ、受かる

「……んあ? いつの間に寝てたかしら?」


 朝、エリカは目を覚ます。彼女はまだ眠いので頭が全然回らない、それよりも頭痛が酷くて起き上がる気力も湧かずにいた。彼女は自分が抱いているもの(・・)には疑問を持ってはいなかった。しかし、妙に温かく大きいものであった。


「……何よこれ?」


 ようやくその疑問の答えを知るかのように目を開けた。そこにいたのは




()だった。


「きゃあああああ!?」

「べがッ!?」


 エリカは驚いて俺を突き放す。俺はベッドから勢いよく落ち、俺も目を覚ます。それと落ちたせいで頭が痛い、やや小さなたんこぶも出来上がった。


「な、ななななんでザックと一緒に寝てんのよ!」

「知らないのかよ! お前が酔っぱらったからここまで負ぶってやったの!!」

「だとしても一緒に寝ることは無いじゃない!」

「無理に剥がそうとすると首を閉めてくるんだよ! お前の腕でな!」


 この口調から察するに彼女は昨夜の記憶がないらしい、と理解した。それと俺が眠りに就いたのは一時間前なんだぞ。朝は低血糖でただでさえ気分悪いのに、弱り目に祟り目だ。


「ということでこれは不可抗力なんだよ!」

「そ、そのごめんなさい……」

「まったくだ」


 あのレストランで酒を指摘すればこのような事件にはならなかっただろうと後悔してる。それとエリカの絡み癖がホントウザかった。ダロンと同レベルだよ、酒癖の悪さは。


「どうやら朝食は此処の食堂で食えるらしいな」

「あ~、あんまし食べれる気分じゃないわ……」

「それを俺に言うか」


 ともかく俺らは荷物を持って食堂に行くことにした。



「それで何時から合否発表だっけ?」

「確か十時からだ。……そろそろだな」


 エリカの質問にパンを(かじ)りながら答える。俺の合否判定は確定しているけど問題がエリカだ。エリカ自身が受かってくれないと村長の約束を破ることになるからな。やはりパンとシチューの組み合わせは美味い。


「けど、受かったら王都に住めるのよね」

「受かったらの話しだろ。頼むから受かってくれよ」

「あら、私のこと心配してくれるのかしら?」

「そんなんじゃないわ、バカ」


 エリカはニヤニヤと笑みを浮かべながら俺に問う。エリカはただの幼馴染であり、小説などに登場するヒロインというものとは違う。主人公はもちろん俺だ。


「食べ終わったのならさっさと行くわよ」

「ちと休憩しようか」

「ふざけてるんじゃないわ。パパたちに手紙を送って合否発表の結果を送らなきゃ」

「わかったわかった。行けば良いんだろ?」




☆★☆★



 学校に着いた時にはもう合否発表が貼られていた。大勢の人が歓喜の声を挙げたり悲劇の叫びを挙げると極端だった。


「……耳が痛いわね」

「そうだな、お前も後でこういう声を挙げると思うが」

「どっちの意味よ!」

「俺は良い意味で言ったんだがな」

「ぐぬぬぬ!」


 彼女をからかいながらも合否発表から俺らの名前を探す。手から汗が滲み出るがこれは汗ではない、そう湿気だ。そりゃあ湿気と言ったらそれは湿気なのだ。そう思いながらも俺の脚は震えていた。


「あった! 私のあったわ!」

「はしゃぐな、こんなの受かって当然だろ。そうじゃないと俺の幼馴染が務まらんからな」

「照れ隠しかしら、このこの!」


 うわぁ、調子に乗りすぎてウザさがアップしとる。飲酒した後よりかは断然良いがこれもまたウザイ、頬もツンツンされてるし。ちなみに俺のはあったが、あの趣味の悪い財布の嫡子のは無かったぞ、ざまあ。


「ザックザック!」

「どうした右腕を挙げて、降伏か?」

「ちがうわよ、ザックも右腕挙げて」

「こうか?」

「それっ!」


 パチンッと二人はバトンタッチを交わす。俺はこういうのが似合わない方なのだがたまには良いだろう。別に嬉しいからではないからな。


 その後、俺らは合格者受付に並ぶ。ここで制服や教材を受け取るのだ。クラスも此処で発表される模様だ。列はスムーズに進み、俺の番になる。


「ザック・ドーフです」

「ほう、君が……」


 受付のハゲた教師に受験票を見せると教師は隅から隅まで舐めますかのように見てくる。そういう趣向がある人なんだと俺は悟った。


「それではこの教科書と制服を君に。もしサイズが合わなかったら声を掛けてください、すぐにお取替えしますので。この服には様々な防御魔法が付与されていますので大事にしてください」

「わかりました。もう寮に行っては構いませんかね?」

「もちろんです」


 さて、制服にさらに魔法を掛けてやろう。完全究極体である制服を大量生産してそれを売る、素晴らしい案だ。どの魔法をかけるか考えておこう、フフフフフ……


「彼スゴイ顔してるんだけど大丈夫なの?」

「元からああいう顔で」

「は、はぁ・・・」


 変な誤解が生まれたみたいだけど気にしないでおこう。ちなみにクラスはBクラスだ。どういうクラスメイトが居るか後で確かめておこう。利用価値があるかどうかがカギだな。流石にもうエリカとは別クラスだろう。


「見なさい! ザックのクラス一緒よ!」

「何故だああああああ!!」


 やっぱり神なんて居ないじゃないか。そんなに運命は俺とエリカをくっ付けたいのか。……いや待てよ、エリカに頼んで俺に関する良いエピソードを話して貰えば良いのではないか。



「それはないな!」


絶対に秘密全部バラすだろ、コイツ。俺はこの現状に頭を抱えることしか出来なかった。取りあえず村長には手紙でも書いておこう、荷物盗賊に強奪されないと良いのだが……




☆★☆★



 俺らは男女別の寮へ足を進めていた。寮は大量のコンクリートを使用しており、大きさとしては校舎の次にデカい設計だ。当然だろう、此処には在籍している男子学生全員が寝泊りする部屋なのだから。俺の家と比較すると蟻と象の差だ。


「奇遇だわ、まさか一緒だったなんてね」

「ホントにそうだよ、クソが」

「パパも喜ぶわ、ザックと一緒なら安心ってね!」

「そうだな。じゃあ俺は此処だから」

「わかったわ、暇があったら会いましょう」


 暫く会わないから安心しろ。てか、入学式まで顔も見せないつもりだから。 

 内装は外装の殺風景さとは裏腹に木材をふんだんに使用されているお洒落な内装だ。談話室まで備わっているとかヤバいな。


 寮の部屋割りの地図を見ながら階段を上る。どれくらい上ったのだろう、ようやく俺の部屋の階層まで辿り着いた。長い廊下を歩いて一番端っこの自分の部屋へ向かうが自分の隣の部屋らしき金髪の生徒が居た。挨拶をして好感度を上げるのも一つの手なので声を掛けてみることにした。


「君、此処の部屋の人?」

「そうだ。となると君は端っこの部屋か」

「そうだ、俺はザック・フール」

「僕はサージュ・パルトネール。よろしくな」


 俺らは握手を交わした。彼は気さくで話しやすい性格の持ち主だと実感した。


「楽しい学園生活にしようか最低限のな」

「ふふっ、そうだな!お前も僕を楽しませろよ!」


 俺の冗談にもキチンと答えてくれる、面白い奴だ。気に入ったから今日からご飯は彼と食べることに決めた。……何気にエリカ以外の友達はサージュが初めてだな。



 後に、この二人は学園史上最悪の悪友コンビとして有名になる闇金コンビが誕生したのであった。


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