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クズ、買い物に行く

「ふ~、やっと終わったわね」

「そうだな。筆記試験が簡単で良かったな」


 俺とエリカは肩を鳴らして門から出て行く、筆記試験だから難しいだろうと思っていたが予想よりかは簡単だった。てか楽勝、何せ文字の意味や魔法についてとか基本的な所しかでないため読み書きさえできれば良い問題ばかりだった。一番不安なのは闇魔法の件だが気に留めないでおこう、そうじゃないと頭皮に響く。若ハゲには成りたくないからな。



「さあ、お約束を叶えて貰うわよ!」

「……はて、何かなー」

「忘れたふりはいいから!」

「ちっ、行けば良いんだろ? ほら、何処に行くんだ?」


 エリカの奴、覚えてたか。忘れていたらこれ全て着服できたんだけどな、と悪趣味な財布を叩く。時刻は夕方か、腹が減ったな。


「ほらっ、早くしなさい!」

「待てよ、お店は逃げないぜ」

「お店が閉まるかも知れないわよ!」


 にしてもエリカの奴はしゃぎ過ぎだろ、これじゃあ田舎娘丸出しだな。まったく、俺みたいに紳士的に振る舞いたまえエリカ君。


「ママー、何であの人の目汚いの?」

「しっ、見ちゃいけません!」


 ……時に子供の言うことは残酷である。もう俺の心に槍が突き刺さったよ。それはもう、慰謝料取ってやりたい位にはね。それとエリカ、無理やり手を引いて連れていくのやめて欲しい。俺とお前はまだそういう仲じゃないんだからな。



「見なさい、綺麗な服やね! 見ていきましょうよ」

「えー、俺服とか興味無いから。独りで見てどうぞ」

「そんなの嫌よ。だって試着した時の感想言う人が居ないじゃない」

「店員が居るだろ」

「それはお世辞よ。豚に服を着せてもお世辞を言うわ」

「……お前もお前で冷たい時あるよな」

「あら?そうかしら」


 自覚があるのか無いのかどっちだよ。最も前者だったらかなりタチ悪いぞ、どっちも悪いが。俺とエリカはその服屋に入って行く。


「いらっしゃいませ」


 と店員が挨拶を交わすとエリカはそのまま店の奥へ入って行った。俺は店員に注目する。黒髪で短髪の女性の店員でしかも可愛い、まんまストライクゾーンに入っていたので俺は本に書いてあったことを試すことにした。俺だって伊達に籠っていた訳ではないことを見せてやる。



「そうだね、君に合う服が欲しい。何せ、君は綺麗だからね」

「そ、そうですか?」


 ナンパ術その一、相手を褒める。これはセクハラにならない程度なら長所なら褒めまくる、それで相手に俺自身の好印象を与える。ちゃんと本に書いてたから間違いない。


「君に似合う服ならどんな服でも買っちゃうな」

「ふえっ!?」


 ナンパ術その二、経済力をアピールする。やはり女は顔よりも財布を見るというので悪趣味な財布を見せびらかす。趣味が悪そうに見えるがお高いブランド品だからな、これも書いてあった。


「そうだね、今夜ディナーでもいかが? あなたが好きな店に行こう」

「何堂々とナンパしてるのよ!」

「がばっッ!?」


 ナンパ術その三を披露しようとした時に頭に誰かのチョップが当たる。誰かは簡単に予想できるがどうせエリカだろう。こんなことをするのは彼女以外いないと思う。



「もうっ、私の服選びに付き合ってやるんじゃないの!」

「なあ知ってるか? 馬子にも衣裳という言葉があってだな……」

「ふんッ!!」

「ぐべらッ!?」


 またまたビンタを食らう俺。ぶっちゃけ言うと俺の肌には紅葉が染めまくってるんだよね、もう三日に一回は赤く染まってるから折角の俺の顔が台無しになるからぜひ辞めてほしいものだ。

 彼女は二度、強力かつ反動が強い右腕を使ったのでとても痛いらしくピョンピョン跳ねていた。そう、まるでまな板の上の鯉みたいに。ちなみに店員は苦笑いだ。



「ほらっ、どうよ!」


 その後、彼女は俺にお気に入り服を試着して見せた。黒いワンピースで大人っぽさを出すような服なのに無理して着た感がスゴイ出てる。お母さんのを着るようなことになってる。


「わー、すごーい似合ってるよー」

「そうと思ってないでしょ!」


 あまり服装にマッチしてないし、それなら普通の恰好の方が似合ってるわ。エリカはお転婆(てんば)娘なんだからそれを掻き消すとか愚策だろ。それなら白のワンピースに麦わら帽子でも被っとけよと思う。彼女みたいなタイプは清潔さとお転婆さを出すのが良いのだ。


「これはどうかしら?」

「却下だ」


 今度はややセクシーなドレスを着てきた。こんな奴に色っぽさ求めなくていいから、エリカはやや不満があるように思えた。


「ゴスロリの方が良いんじゃね?」

「そ、そんなに小さくないもん!」

「だけどよ、お前に似合う服は此処には無いぞ」

「うぅ……」


 この発言に彼女はショックを受けたらしく、しょぼくれている。……しゃーない、どういうのが似合うのか選んでやるか。ここまでして冷やかしはちょっとな。



「ほらっ、こんなのはいかがかな?」

「これ私に似合うかしら?」

「いいからいいから」


 俺はブラウスとスカートを持っていき、彼女に渡す。ファッション誌も置いてあったから服装も勉強できる。ほぼダロンの趣味で所持していただけで、俺はそこまで服には関心が無いけどな。


 数分後、彼女は試着室から出て見せた。子供っぽさを生かして清潔さも表す、というまさに彼女ピッタリの服だった。 エリカは赤面してモジモジしている。


「ザ、ザックてこういうのが良いんだ……」

「それもあるが似合うのか選んだだけだ。勘違いするんじゃあない」

「な、なによ!」

「ほら、その服買ってやるから」

「ほ、ホント! ウソじゃないのね!」

「媚びを売れるだけ売るのが俺の特徴でね」


 エリカは俺が選んだ服を買った。やや上機嫌でちょっとウザイ、しかし何処か微笑ましくなるものがあった。だけど、色気がある服はコイツには全然似合わないことがわかった。あの店員に着せてやりたかったと心底後悔した。




☆★☆★




「さて、どのメニューにするか……」

「私は決めたわよ、これよ」

「ハンバーグってガキだな。俺はパスタにしよう」


 俺らは買い物が終わった後、レストランで夕食を食べることにした。ちょうど夕食の時間であるため、店はかなり賑わっていた。メニューを決めたので手元のベルを鳴らす。すぐさま店員がやって来る。


「はーい、何に致しましょうか?」

「このハンバーグとパスタよ」

「それと君。痛い痛い!!」


 この小娘め。すぐに足を踏みやがって、そういう趣向は俺嫌いなんだけどさ。店員はメニューを聞くと調理場の方に向かう。


「やっぱり王都はスゴイわね!」

「そうだな、村もここまで大きくして貰いたいものだ」

「そうね、ムリとは思うけど」


 あと百年あってもあの村はあの村だと思う。何せ特産物もないし資材も無い、あるのは魔物だけと貧しい土地だなと改めて実感した。それでもあの村は落ち着くから俺は好きだ。



 二十分後、俺らが頼んだメニューがやって来る。パスタもハンバーグもどれもおいしそうだ。しかし、謎のボトルを除いては。


「何かしら?」

「水が入ったボトルだろ、ほれ食うぞ」

「そうね、いただきます」


 自らが頼んだメニューに手をつける。味はシンプルだが風味が良い、バジルが良い引き立っているからだろうか。麺も柔すぎず硬すぎずとちょうど良い硬さだ。


「美味しいわね!」

「そうだな、俺が食べてきた中で上位にランクインだな」

「そりゃあそうね」

「何か酷いこと言われた気がする」


 コップの中の水が尽きたのでつぎ足そうとボトルの蓋を開けてつぎ足す。エリカのも空だったのでつぎ足すことにした。にしても高級そうなボトルに水を入れてサービスするとか何てお洒落なんだと思った。二人は同時にコップを飲みほした。しかし、この水は色んなところが変だった。


「うっ!? 喉が焼ける……」


 喉が焼けるような感じ、そうお酒だったのだ。しかも度数が高いものだ。


「エリカ、大丈夫か!?」

「……」


 エリカは顔を紅く染まっている、目は虚ろな状態だ。完全に酔ってるぜ、コイツ


「店員さーん!」

「は、はい何でしょう!」

「これ中身お酒だよ、俺とアイツ飲んじゃったよ!」

「も、申し訳ございません! お代は頂きませんので!」

「お、おーい。エリカさーん、聞こえる?」


 俺の応答を聞いてエリカはいきなり立ち始めた。そしてあろうことか俺に抱き着く、これには流石の俺も戸惑った。コイツ、こんなに酒癖悪いのか。


「な、なんだ!?」

「うへへ、あったかーい」

「そんな茶番はいいから帰るぞ、エリカ!」

「うん、わかった!」


 威勢のいいエリカを背負い、店から出て行く。宿に向かうまでの道のりは周りから温かい目が俺に集まる。その目で俺を見るんじゃない、この姿は凄く恥ずかしいんだぞ。……エリカもう寝てるから道路に置いて行こうかな



 そんなことを考えながらも無事に宿に到着した。宿屋のおっちゃんがニヤニヤした顔で見てきたのでこっちも睨み返してやった。ザック好き、とエリカの口からこぼれたが妄言かもしれないのですぐさま忘れた。


 だが、ザックの耳は紅く染まっていた。


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