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クズ、対人戦をする

「今度はここね、さっきの建物と似てるわね」

「そうだな、まあ随分と金がある学校だな。軍所属だから無理ないか」


 次の試験場所である三号館に足を進める。そこも室内鍛錬所となっておるが、魔法をぶっ放す所ではない。主に剣技や近接戦を鍛える鍛錬所だ。魔導師は武器と魔法を同時並行して使わないといけないため、このような施設があるのだ。


 中からは刃と刃を打ち付け合っている音が聞こえる。俺は見ようとするが前の人が邪魔で背伸びをしてもジャンプをしても見れなかった。俺はそこである名案を思い付く。


「おいエリカ」

「何よ?」

「お前、俺を肩車しろ」

「はあッ!?」


 それならば誰かを土台として利用する、何てシンプル且つ活気的な案なのだ。悪いがエリカには犠牲になって貰おう。安心しろ、それ相応に応えられる恩賞はあるつもりだ。


「もし、やってくれたら買える範囲で服を買ってやろう。服、好きだろ?」

「うぐぐぐぐ!」


フハハハハハ、伊達に幼馴染やってないんだよ。貴様の弱点などとうの昔に知っておるわ、小娘。さあどうする、要件を飲むか。飲まないか。


「……わかったわよ! ただし、約束は絶対だからね!」

「約束は守る男だもん」


 交渉成立、彼女は屈み早くしろと俺に訴えていた。俺は彼女の肩にまたがり、彼女に上げろと指示する。二人分の身長により闘技場がよく見えた。眼鏡を掛けた男性試験官が受験生と思われる少年と戦っているのが見えた。

 しかし、ワザと攻撃をせずに避けたり捌いたりしていた。ちっ、野郎かよと興味なさげに試験を眺めていた。


「……股間を押し付けないで貰いたいわね」

「どうした、欲情でもしてるのか?」

「してないわよ!」



 土台がふら付いているのを感じたのでそろそろ彼女の限界だろう。俺は降ろせと指示すると彼女はやっとかという表情で腰を下ろした。疲れのせいで彼女は肩で呼吸をしているように見えるが俺には関係ない。



「で、何が見えたのよ……」

「そりゃあ野郎が受験生と戦っていただけ」

「強かったの?」

「俺から見たらフツーの剣技などゴミです。もう時代遅れです」

「酷い言い様ね!」

「見える攻撃など避けられるだけってダロンが言ってた」


 実際、人間というのは目で物体を認識して避けたりしているので避けるのが簡単だ。しかし見えない攻撃となるとそうはいかない。魔法で感知や長年の勘以外では避けようもないのだ。と俺は師でもあるダロンに教えて貰ったのだ。


「私勝てるかしら……」

「気にすんな、別に勝たなくても良いんだ。要は当てればそれで終わりだ」


 エリカの頭に手を載せてワシャワシャと頭を揉みくちゃにする。これはよく俺に対しダロンがやったことである。神経節になっている時や緊張を解すためには効果的だと言っていた。彼女は髪の毛を揉みくちゃにされ怒っているような仕草をするが若干緊張が解れているような気がした。……てか撫で方はこれ以外しか知らんがな。



「次」

 二十分後、俺は呼ばれた。受験票をあらかじめ設置されているテーブルに置き、自分の名を名乗る。



「ザック・ドーフです。あなたを負かす者と覚えてください」



 俺は余裕の笑みをあげる。しかし、試験官はこの舐めた態度にややイラついていた。ちょっと調子に乗りすぎたと後悔しながらも黒蜘蛛の手腕(ブラック・バウーク)から鋼線をばれないように出して構える。


「どうした?徒手空拳で俺に挑む気か?」

「とんでもない、俺の武器はこの手袋なんでね」

「ふん、来い若造」

「まあ、言われなくてもね」



 指を動かし、鋼線を操り鋼線は試験官を中心に鋼線を組み始める。鋼線を組み終えた後、すぐさま右腕を引く。すると一本の鋼線は試験官に向けて飛んで行く。


「なっ!?」

 試験官は驚いた様な声を上げて横に跳んで避けようとする。

「遅い」

俺は躱そうとした方向を狙い、もう一本飛ばす。


「ぐおッ!!」


 試験官は剣を使い、その鋼線を斬る。鋼線はあっけなく斬られて地面に落ちる。正直言ってこの鋼線は丈夫だと評判だったがこうも斬られると堪えるものがくる。



「鋼線使いですか、面倒ですね」

「試験官殿も面倒ですよ。この鋼線は切れにくのに斬るとか何者ですか?」

「元々、軍に在籍していたのでね」


 今度は鋼線の連続攻撃を仕掛けると、試験官は必死に避けたり剣で斬ったりとしていた。俺の方は魔力を出せば幾らでも鋼線を伸ばせるので自然と試験官の方が不利になる。

 全ての攻撃を躱すことが出来た試験官は息を切らしながら言うのであった。



「では久しぶりに本気を見せましょう」


 今度は試験官自身が攻めてくる。だが、鋼線使い攻めるというのは悪手である。しかし、それをしてきたので俺は目を丸くした。



「軍隊式剣技、悪手な返し(バッド・ザ・リターン)!」

「げげっ!? 軍隊式かよ!」


 国によって軍隊式剣技は剣技が異なる。しかし、軍隊式の剣技というものは実際の戦場でも使われていた技なので極めて強力な剣技でもありどれも完成度が高い。

 ヤバい、こんなの食らったら病院物じゃねえか。しょうがないけど人間には使いたくわないが、使うしかない。


 俺を中心に鋼線をで陣を組んでいたものに、さらに鋼線を加えて強化する。高速で鋼線を編んで防御力を上げていた。試験官の距離は迫って来る。何とかギリギリで完成をして陣を立ち上げる。




黒蜘蛛の万年処ブラック・バウーク・マイハウス!」

「ぬうッ!!」


 糸のように鋼線は一本だと切れてしまうが、数本に束ねると強力な防御力を得るのだ。試験官の剣を防ぎ、鋼線が剣に絡みつく。教官は力任せに鋼線を斬ろうとするがそれは出来なかった。この陣の特徴は攻撃を受けたらすぐに攻撃に転じやすいことだ。


 左腕を上に揚げると鋼線は剣自体をバラバラに切断した。俺はすかさずに蹴りを食らわし、蹴りは人体急所の一つである鳩尾(みぞおち)を捉えた。急所に当たり、悶えている時に試験官の首に鋼線を張る。これ以上動くと首が鋼線により切断される。即ち敗北を示していた。



「……お前の勝利だ」

「ありがとうございました。試験官殿」


試験官に勝ったものは今回、俺が初めてらしく列に並んでいた面子は俺を興味津々に見ていた。が別に嫌なことでは無い、むしろ自分の強さを主張できるので



俺は勝利の笑みを浮かべ、エリカの元へ向かう。

「楽勝だったろ?」

「避けられまくってたわよ!」

「うっせえ!! 軍人だから仕方ないの!」


 俺自身もあそこまで躱せられるとは思いもしなかった。多分あの教官は、軍の中では結構な地位を持った人物だったんだろう。そうでなくては到底、最初の一撃は躱せないはずだ。それにしても受験生に軍隊式を使うとかヤベー奴だわ、絶対に負けず嫌いなタイプだよ。入学しても関わらんでおこう


 入学後に向けて俺は決意するのであった。




☆★☆★





「まさか、あの上位魔道具を所持している者が居るとはな……」

「まったくです。下級魔道具持ちなら今回もいましたが上位とは驚きです」


 薄暗い部屋で先程の戦いを見ていた老人が居た。立派な髭を蓄えており、年はもう百歳は超えているだろう。その受験者である書類をまじまじと読み直していた。


「彼をどうしましょうか? 闇魔法は強力なものでしたし、もしかすると魔王軍からの斥候(せっこう)なのかも知れません」

「うむ、ワシは決めたぞ」


やや薄毛の男性は心配そうに言う。それに対し、老人は言い放つのであった。


「彼を入学させる。そして様子を見よう」

「わかりました。……もしもの時(・・・・・)はどうしましょうか?」

「無論、学校を挙げて彼を処分する」



 薄暗い部屋で二人はそう判断したのであった。

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