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クズ、魔術書を解読する


「さて、魔術書を読破するか」


 校長室から男子寮の自室へと戻った俺はテラーの家から頂いた魔術書を読破しようと、椅子に座る。分厚い本なので読破するのには長時間掛かるため、手元には俺特製のコーヒーが置かれている。(こぼ)してしまう可能性があるので、小さなトレーに載せている。


「うーん、見たことのない種類の魔術書だから少しばかり怖いな。まあ、使える魔法が書かれていたらバリバリ使うけど。できれば商売に関わる系の魔法がいいけど」



 ページをペラリと捲り、目次を見る。目次には、全て闇魔法関連の内容が書かれている。しかも、聞いたことの無い魔法だらけだった。興味と不信感が俺の中で湧いた。


 ……あれ、もしかしてだけどヤバい方の魔術書なのか。これって、国が管轄しないといけない様な魔術書だったりして……。


 国が管理しないといけない様な魔術書は当然ある。世間一般的に出回っているのは国の偉い方が閲覧して基準に引っかからなかったということを国が認め、許可を得た物が殆どだ。

 しかし、現在俺が所持しているのは確実に基準に引っかかって焚書される魔術書だ。これを所持していた者は老若男女問わずに処刑、もしくは無期懲役の刑が施行されることになる。そういう魔術書のことを絶禁魔術書と言う。


「……アハハ、何ていうもん持ってんだよあの紙芝居屋ァ!」


 呆れて乾いた笑い声を飛ばした俺は、その絶禁魔術書を床に叩きつけた。呆れたという感情と今後の不安という感情が混ざり合った結果だろう。俺の頬から冷汗が垂れた。


 おまけに、闇魔法についてびっしり書かれているとか、よくこんなのを所持してたな紙芝居屋の野郎。もしかしてだけど、あの家を家宅捜索してればこういうのが幾つかあるんじゃないのか。あーもう、処理に困るんですけど。


「……最終的には捨てることには変わりようは無いし読破してやるか」


 床に叩きつけた本を拾いあげる。目次の所を捲り、次のページに進んだ。


「えーと、何々。影の世界へと送り込む方法……」


 そこには、影の世界へと送り込む手順について詳しく書かれていた。俺はその闇魔法を行使するための手順を確認した。影の世界という単語は知らなかった。


「汝が我を助け、汝が闇を愛する様に。陽に反意する陰を示して、影の世界へと誘う門へと変貌するであろう」


 俺の足元には黒色の魔法陣出来ているのを確認できた。詠んでいくと、外側から魔法陣の外側の部分が増えていくことが確認できた。マズいと俺は思ったが口を止めることが出来ない。何らかの力が俺を操っている様に思えた。


「我は陽の存在を陰の力を用いてそれを壊すであろう。そして、その陰の力は汝の体を壊していくでしょう。さあ見よ、冥府の世界の一端を。影の世界へと通ずる門シャドウ・エントランス



 突如、部屋の片隅からバチバチと縦二十センチ、横十五センチの小さな石造りの門が現れた。その門の奥は無い。 しかし、魔術書には人が横に何人も進める程の大きさと記載されていた。

 だが、発動する前に俺はちゃんと説明を一通り目を通してあったので、門の大きさに気づいた。読んでいなかったら部屋はぶっ壊れて、俺が絶禁魔術書を読んでいたことが確実にバレてしまっていた。


 あ、危なかった。今後は口に出さずに読むことにしよう、魔力とか一部も出さないで呼んだ筈なのに強制的に発動したからな。今ので国からバレなきちゃいいけど……。

 にしても、この門にはどのような効果があるんだろうか。試しに鉛筆でも差し込んでみるとするか。


 俺は机の引き出しを開けて、鉛筆を取り出した。その鉛筆を持って、小さな門へと差し込んだ。特に異常は起きなかった。



「ん? 何の効果も無いのか、ったくビビらせやがって」


 スッ、と門から鉛筆を引き戻した。その時、俺は気づいた。



「鉛筆が捻じれ曲がっている(・・・・・・・・・)だと……!?」


 そう、鉛筆が捻じれ曲がっていたのだ。しかも、中から木の断片が出ていない。ただただ捻じれ曲がっただけのようだった。もしも生きた人間が、この門の中へ入ったらどうなってしまうのかと創造すると背筋が凍る。


 ……これは良い拷問、もとい尋問になりそうだな。治癒魔法と並行して使えばきっと敵兵士の口を割るだろう。非人道的と思われようが、秘密裏に使えば問題ないのだから大丈夫。きっと指を切り落とすよりかは効率的だろうな。



 門を消して、目次を再確認すると危険な闇魔法ばかりで、俺はどれに手を付ければ良いのかわからないでいた。しかし、その中で使い魔に関するページを発見した。


「なるほど、便利な使い魔のことか。面白そうだな、試してみよう」


 その目次通りのページを開いた。そのページには、使い魔の召喚方法について書かれている。材料は一切要らないようなので、召喚をしてみようと思う。ちなみに、その召喚した者に適正な使い魔が現れる使用になっている。


「汝が我を愛するように、汝が生物を愛するように。我に適合する使い魔を召喚したまえ、召喚ヴィーゾフ・サーヴァント


 部屋の広さに収まる程度の召喚獣を出すため、必要最低限の魔力を放出した。足元の魔法陣とは別の場所から、半径十五センチの魔法陣が構成された。バチバチと、俺が召喚した使い魔が現れた。



「ミギィー!」

「……ムカデか」


 そこから現れたのはムカデ型の使い魔だった。石を裏返せば高確率でいるムカデを大きくさせたものだ。ムカデ特有の長く硬い甲殻が照明に照らされ、黒光りしている。


「俺に適正な使い魔はオオムカデか。蜘蛛の様な戦い方をしてムカデの使い魔、多足類に愛されてるな俺」


 贅沢は言わないけど、狼とかそういう系が良かったぜ。絶対、女子が見たら悲鳴上げるほどの衝撃与えるだろうなぁ。そして男子でも悲鳴上げるよな。


「ミギィー」


 沢山の足を使って、俺の傍へと近寄った。ムカデは俺に甘えるかの様に、俺の膝に頭を擦りつけてきた。その姿は外見と反するほど愛しかった。


 ……案外この使い魔可愛いじゃん。確かに女子受けは悪いけど、敵に攻撃しやすかったり、隠密行動には向いてるな。俺にはちょうど良い使い魔なのかも知れないな。


 俺はムカデの頭を撫でる。ムカデは喜んでいるのか、後ろ部分に生えている触覚の様なものをブンブン振っている。まるで犬のようだと俺は思った。


「そうだな、命名でもしてやるか」

「ミギィー!」

「強くて、呼びやすいのは……」


 使い魔に名付けるための名前を考え込んだ。


「よし、お前の名前はシアンだ」

「ミギギー!」


 ふっ、どうやらお気に召したようだな。さて、使い魔をさらに小型化させて俺の胸ポケットに閉まっておこう。使い魔は基本的に召喚者の傍に置いておくのが普通だからな。けど、使い魔を消す方法は書いてはいないからそうすることしか他ならないけど……。



 俺は新たな仲間を手に入れることが出来た。己自身に合った使い魔を召喚する授業はあるのだが、それは二年生になってからだ。その時にはもう卒業してしまうので、ちょうど良い機会を得られて俺は満足していた。

 流石に、一緒のベットで寝るにはまだ嫌なので、適当な古布を使って裁縫をすることにした。勿論、シアンの寝床作りだ。これから苦楽を共にすることになるであろう使い魔なので、俺は手を抜かずに作る。


 俺が縫い終わるまで、シアンは俺の頭の上で蜷局(とぐろ)を巻いて寝ていた。俺がかまくら型の寝床を作った時には、夕日が沈み、夜へと変わっていた。



「あっ、夕食食べそびれた」


ぜひブクマお願いします。

ちなみに使い魔の名前は毒物のシアン化合物から取りました。

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