クズ、村に到着する
魔物が住んでいる森を抜け、山道から繋がっている街道を通る。この街道は各国の王都へと繋がっており、自分が好きなままの国に行けるようになっている。しかし、徒歩で行くには近くの王国『ロナント王国』でさえも最低一日はかかるが場所を借りると半日で着くが馬車は高いため、いざという時にしか使わないのが殆どだ。この街道には宿場町があるのでそこに泊まるといいのだが。
「もうマジむり、休憩しようや」
「ザック、さっき休憩したじゃない」
「引きこもり生活をしてたから無理ですわ」
「情けないわね!」
「どこぞ筋肉ダルマとは違うんだよ」
俺みたいにエリートのような男は勉学に励まなきゃいけないんだよ。そう、体力とか使う力仕事関係は俺にはお断りだね。そんなの他の筋肉バカにやらせればいいことよ、この世を生き抜くには自分の能力にあった適材適所の仕事をしなければならない。よって俺は鍛える必要なし、QED
「おっ、やっと村が見えてきたぞ。ここいらで休憩」
「……しょうがないわね」
エリカは渋々、俺の提案に乗り俺は近くの岩に腰かける。
「回復魔法かけてくれよ、足がジンジンする。エリカのなんちゃってヒールでもいいから」
俺は駄々をこね始めた。プライドとか良心は無いな、悪いけど。俺は貧窮に生きていても人生の勝ち組というという悟りがあるのでね、そんなものはおかまいなしさ。
「なんちゃってヒールって言われたらやる気が起きないわね」
「エリカ様のヒールは今世一でございます!」
自分が楽をするためなら頭でも土下座でもしてやる、これも生き残る術なのでね。
「ああもう、わかったわ! ヒールすれば良いんでしょ!」
「おおっ! さすがは魔導師見習いだ!」
話わかる娘は好きだ。なんせ騙しやすい。
俺の足に手を当てるとエリカは詠唱を唱え始める。
「汝が我を愛するように、汝が風を愛すように。安らかな風!」
魔法陣が浮かび上がり、緑色の光が俺の足に降り注ぐ。俺の足は徐々に温かくなっていく。心地が良く、いつまでもかけられていたいと思った。
「……終わったわよ。まったく、ヒールなんて疲労回復のために使うなんて論外だわ」
「いちよう疲労も回復するので使い方としては合ってるから」
「そういう話じゃない、私の魔力が勿体ないじゃない!」
人間にも魔力の蓄えている量が決まっており、それを超すような魔力を使用をすると体に圧をかけると死が待ち迎えている。だが、この蓄えというのは個人差による。エリカや俺のような人間は従来の人間よりも断然魔力の蓄えが多いため、魔術としての行使が出来るのだ。
このような人間を魔法使いと呼ばれる。
☆★☆★
「ささっ、ご飯を貰って帰ろう」
「本当に自由人ね、あなた」
「自由が思うがままに生きていて何が悪いのだよ、エリカ君」
村に到着した俺らは彼女の家へと向かう。彼女の父親はこの村の村長で食物の貯蔵を管理している。
ただ、村長は結婚してから彼女の母親に尻を敷かれており父親が母親に歯向かったことなんて俺やエリカですら知らない。しかし、非常に人が良い方々なので困ったときには助けてくれる善意の塊でもある。こういうタイプが俺のような性格のカモになることは黙っていよう。
「あら、久しぶりねザック君。お小遣いをあげるよ」
「ようザック、元気にしてたか! 肉だ食っとけ!」
「ザックちゃん、良い川魚大量に入ったからあげるわ」
「ありがとうございます!」
村人からたくさんの厚意を貰い、俺はそれに営業スマイルを浮かべて答える。コツは毎日行っていたら人々の厚意が薄れていくので、たまに顔を出すくらいがちょうど良いのだ。肩や腕にはそれらが入った籠をぶら下げる。うっは、こんなに多かったら暫くは引きこもり生活出来るぜ。
「よかったわね。人の優しさを知れたかしら悪魔君」
「俺は人間だ。まあ、その中でも偉大なる人間だけどな」
「勘に触る言い方ね!」
普通の家よりも立派な家に到着する。ここが彼女の家であり、おまけに村長の娘であって家が立派だ。そこで掃き掃除をしている一人の女性がいた。
「ママ、ザックが来たわよ!」
「あら~、ザック久しぶりね」
「お久しぶりです。……また一段と美しくなりましたね」
「もう、お世辞が上手いんだから~」
俺の十八番戦術であるお世辞を使うことにより相手を喜ばせる。
「ザックが食料が無いって言うから貰っていって良い?」
「良いわよ、困った時には助け合わないとね」
彼女の母親から許可を得て、食料貯蔵庫を開ける。中には野菜や麦がたくさん仕舞われていた。
「取りあえず大籠一杯分でいいかしら」
「おう、それ以上貰うと腐らしてしまうからな」
「それでもザックは食べるんでしょ」
「当たり前のことを聞くな」
焼けば大丈夫だからな、マジで。
「そうだ、最近の魔物はあんなに獰猛なのかしら」
彼女の母親が掃除用具を仕舞うついでに貯蔵庫に顔を出した。
「分からないわ、森を通った時に安全期で出てこないはずのゴブリンが襲ってきたわ」
「しかしそのゴブリンたちからエリカが助けてくれたんです。いや~、エリカには敵いませんな。一体、どのような教育をして文武両道のエリカを育てたのか僕は気になります」
「あらっ! そうかしら、もう照れちゃうわ」
「それはザッ、んぐぅ!!」
日頃からお世辞をするのも効果的です。俺は真実を喋ってしまわないように彼女の口は封じた。今までのお世辞が崩れてしまうのでね。
「……魔物が謎の活性化が起きています。ただちに村の自衛団を編成し、見回りを強化したほうが良いかと思われます」
「そうね、わかったわ。夫にも伝えてみるわ」
「はい、僕も心優しき村人を誰一人失いたくはありませんのでお願いします」
先程までヘラヘラと笑っていた態度とは一変し、彼女の母親の目を見つめる。腐った魚のような目には微かにこの村を守りたいという信念が表れていた。
魔物に村が襲われ損をするのは俺だってそうだ。厚意を差し出す人間が減っていくばかりでもなく、脅威を恐れて都市の方に避難してしまうと人口が減って村は機能しなくなる。これを何としても防がなければならないからだ。
「じゃあ僕帰りますね。いざという時に僕を呼んでください、すぐさま駆けつけますので」
「それなら遠慮なく呼ぶわね」
「はい、お構いなく!」
ハキハキとした返事で答え、エリカの家を後にする。俺の忠告を彼女の母親は父親に通してくれるだろう。しかし、俺はエリカの家族を見て無意識だが僅かに感じた感情がある。
それは嫉妬の感情、ただそれだけだった。
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