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クズ、公園に行く


 深夜の街は家が寝静まり、街灯しか道を照らさない。道路には馬車も竜車もほぼ走ってはいない、大都市とはいえ夜には弱いのだ。

 しかし、その道を急いで走る女性がいた。女性は息を切らしながらも走り続ける。悲鳴を上げようにも何故だか声を発することが出来ない(・・・・)。家のドアを叩いても誰一人として反応しない、まるで自分だけがこの街から消されている(・・・・・・)ような感覚だった。



「(な、何でどうして誰も気付かないのよ!)」


 女性は街灯にもたれる。


「(それよりもあの男は何よ!! 牛刀を持って追いかけてきたし!)」


「……見つけたよ」

「(ひぃ!?)」


 ぬるりと街灯の裏から現れたコートを着て帽子で顔を隠した男は驚愕した顔の彼女を掴まえた。そして彼女を押し倒し、男性は牛刀を振り上げる。彼女の目には涙が浮かんでいた。


「じゃあ」

「(あっ、あああああああッ!!)」


 牛刀を彼女の脳天めがけて振り降ろした。絶叫すらも叫べられない状況で彼女は即死した。その彼女の遺体をずるずると引きずりながら何処かへ帰って行く。彼女の血の道が道路に延びていった。




★☆★☆




「ザックお願いがある」

「……えっ、俺に!?」

「うん」


 授業が全て終わり、放課後になった時にタシターンが俺に話しかける。前よりかは口を開くようになった彼女だけどまだ一般的には無口だと言えるだろう。しかも、普段は俺から話しかけるのが今までだったのでそれを込みで驚いた。


「行きたい場所があるの」

「どうした休憩するために建築された宿屋か?」

「そ、そんなんじゃない!」

「じゃあ何処?」

「……公園」

「はっ? 公園だと?」


 ちょっと待てよ、幾らタシターン自身が子供っぽい見た目をしてるからといって精神まで子供っていうオチは無いだろうな。悪いがロリは俺の許容範囲じゃない、だって捕まっちまうし。


「……いいから来て」

「わ、わかった」


 俺はタシターンに軽く引っ張られる。どうやら冗談ではないらしい、俺は彼女に連れ去られて行く。



「見てザック、猫」

「あぁ、知ってるさ。そして此処が公園だということにもな」



 俺は今、彼女に連れられて公園にいる。この公園は王都一の広さがある公園として有名だ。六割が子供が遊ぶスペースであり、四割が自然となっている。王都に少しでも緑を残したいという市民の願望が公園を設立させるきっかけとなったのだ。

 猫は木箱の中に入って捨てられていた。多分飼い主はこの猫を気に入らなかったのか知らんが何かしら理由があって捨てられたと俺は推測する。


 まさか子供が遊んでいるスペースに置けば拾ってくれると思うんだけど何故自然の多いスペースに置いたのかが気がかりだ。まだ子猫だし自然の中では生き残れない、飼い主は何を考えていたのだろうか。


「……にゃー」

「ん?今タシターン、にゃーって」

「……言ってない」

「いや言った言った」

「いっ、言ってない」


 猫と遊んでいる内にタシターンの口から猫の鳴き声が出ていた。俺はその声を聞き逃してはいない、俺が指摘すると彼女は顔を染めて言っていないと嘘をついていた。その姿はとても可愛らしいものだ。

 無口そうに見えて動物とか好きなのだな、動物の人形とか与えたら俺の好感度が上がって俺に惚れるな。

こんなに可愛い子が俺に惚れるとかめっちゃ嬉しいことだよな。



「けどタシターンはいつこの猫を見つけたんだ?」

「昨日、公園で読書してたら見つけた。そしてパンを買ってあげた」

「ふーん、名前は?」

「ネコ太郎」

「そうか太郎か、良い名前だな」

「ネコ太郎、適当に名付けたけど……」


 ……ちょっと恥ずかしい。まあ確かに五秒で考えた名前ではあるけど、てか冗談で言ったのか。真面目な顔をして言われたもんだから()に受けたぞ。


「でもザックが言うならそれでいい」

「あのー、それで名前良いの? もうちょっと捻った方が良いんじゃない?」

「けどザックが認めたからいい」

「あっ、そうなんだ」


 やべぇ、今のは相手を褒めるために行いましたとか言える流れじゃねえよ。真実言ったらタシターンショック受けて俺の好感度が下がり、彼女にする道のりが長くなると思う。……ならばここは流れに身を任すしかないな、うん。



「どれどれ俺も触っていいか?」

「別に構わない」

「ではでは」


 俺はネコ太郎を触ろうと手を出す。だが、何かを気に入らなかったのそれとも何かを察知したのか。ネコ太郎は俺の手を爪で一心不乱に引っ掻きまくる。


「いででででッ!!」

「ネコ太郎は、そんなことしちゃダメ」


 俺は手を引っ込めて、タシターンはネコ太郎を持って顔に寄せる。ネコ太郎は甘えた鳴き声を鳴らすだけだった。

 何だよあのネコ、俺の手を引っ掻きやがった。滅茶苦茶痛いしタシターンの時には何もしないとかおかしいだろ。俺は何もしてないのにさ……。


「大丈夫? ヒール必要?」

「いいや要らんわ、それよりも東洋では猫の皮を使って楽器を作ると噂で聞いた。さあ早くその猫をこちらに渡しなさい」

「……ごめんなさい、ネコ太郎は私が(しつ)ける。だから楽器にはしないで」

「ニャー!」

「うおっ!?」


 タシターンが猫の代わりに謝罪している最中にネコ太郎が彼女の手から抜け出して俺の顔を引っ掻いた。そして俺の頬に傷を付けた。



「皮剥いだら今度は肉を炒めてやろう、そして俺がいただいてやろう!」

「……ネコ太郎は私の家族、どうしても殺すのなら私が戦う」

「おい、俺とやろうってか?」

「守るため」

「例え俺は女でも容赦はしないぞ」

「構わない」


 双方を中心に周りは冷たい空気に変化する。ネコ太郎はそんなことを知ってか知らずに大あくびをしている。双方は互いに睨め合う。

 ……あー、こりゃあ無理だな。タシターンの目に猫を守るという強い意志が表れている、こんな目をした奴は俺には殺せない。殺せるには殺せるが、俺がもし彼女を殺したら罪悪感で気分が悪くなるのは確実だし殺人犯として俺捕まっちまうからな。


「……わかったよ、殺さない」

「本当?」

「本当本当、俺はそういう嘘はしないのでね」

「そう、安心した」

「ただし、約束がある」

「約束?」

「猫の爪を切ってやれ、引っ掻かれた時に爪が深く刺さって痛かったからな」

「わかった、寮に戻ったらすぐにする」


 この猫、引っ掻かれると超痛い。しかも爪にはたくさん雑菌が繁殖している可能性があるので、そういう点を改善しないと衛生的にも良くないからな。……本当の狙いは俺に危害が出ない様にするためだがな。


「だけど寮、ペット禁止……」

「バーカ、バレなくきゃ良いんだよ。どうせだいたいの生徒は必ず校則違反してるもんだし」

「うん、わかった」


 俺の考えに納得してくれたかタシターン、まあ俺は校則違反をしている常習犯だしな必然と説得力はあるだろ。まあ一部、国の法律とかを破ってるけど……。


「……子供の声が消えた」

「ん? そうだな、でもこの時間帯はまだ子供の門限ではないが」

あれの時間(・・・・・)

「おい!」



 タシターンはネコ太郎を抱きかかえながら駆けていく、俺もその跡に続いて付いていくことにした。

 彼女が走るぐらいのことだからさぞかし大きな事柄なんだろうな、てか猫を抱えたまま転ぶんじゃないぞ。猫圧死するからな……。って転ぶの早えよ、猫は無事で最悪の事態を回避出来て安心したぜ。


「……ゆっくり行こう、慌てない」

「お、おう」



 ……もしかしてこの子、ドジっ子なのか。逆にそれが良いな、そういう萌えを感じると俺は思うね。わかる同志が居たら話し合いたいものだ。


 俺らはゆっくり向かうことにした。



ぜひブクマお願いします。

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