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クズ、夜襲を掛けられる

「ふぅ、夕飯美味かったな」

「まさか二回目もカレーとはね……」

「やっぱカレーが一番だ!」

「このカレー野郎が、前世カレーなんじゃないの?」

「ザック、あなたも魚でしょ」

「俺食われないで腐っていくのかよ」


 俺らは夕飯を食べ終わり、仲間たちと談笑を交えていた。何故か夕飯もカレーだったのが不思議ではあるが、温かい飯をありつけるだけ良いだろう。もう冷や飯以下の飯とかもう食べたくない。

 焚き火はパチパチと俺らの中心で燃えて、辺りの闇を照らしていた。



「これから何するのかな?」

「あとは寝るだけだしね、何もしないんじゃないかな」

「多分そう」

「ガキ共はさっさと寝てろ、俺はもう寝てあるから」

「寝たっていつ寝たのよ」

「さっき」

「えぇ!? 目開けてたじゃない!」

「あれ目を開けながら寝てたから」


 俺は昔に目を開けながら寝ることが出来た。そしてこの機能は授業で寝るのにも使えるため、非常に便利だ。欠点といえばやはり返事ができないことだろう。


「どうりで静かだと思ったんだよね」

「……ザック、怖い」

「あー、俺怖がられる要素あったか?」

「ありまくりよ、てか何で夜更かしする必要があるのよ」

「良い質問だね、エリカ君」


 何故寝ていたのかはちゃんと理由がある。それはというと夜中に何かが襲って来るかも知れないからだ。これは不確定要素だが念には念を入れるのが俺の鉄則だ。人は俺のことをチキンやら臆病者と呼ぶかも知れないがそんなのはどうでも良い、むしろそれが功を奏するかも知れないのに。


 そして何よりも……


「お前らの顔に落書きするためさ」

「えいっ!」

「フハハハハ! 同じ手は通じないぞ!」


 俺は右からのエリカの平手打ちを避けた。だが、避けるために後ろへ仰け反っていたがバランスを崩して後ろへ倒れる。運が悪く、倒れたところに手のひらサイズの石があった。そして頭を強打した。


「痛ァい!?」

「神様からの罰よ」

「神など信じぬ、これは偶然だ!」


 そうだ、これは偶然そこに石があったのだ。もしくはそうなることを予想していたエリカによる罠だ。そうに違いない。なので賠償金を請求する、たんこぶ出来てるし。

 俺は頭を手で押さえながらも起き上がる。


「仕組まれた罠なので賠償金くれ!」

「ふざけんじゃないわよ!」

「まあまあ落ち着きなよ。ほら深呼吸」

「……ザック、後ろに先生来た」

「婚期を逃して全てを諦めた先生が来た?」



 俺は後ろを振り向く。そこに居たのは鬼の形相をした俺らの担任、ソンノ先生だった。普段のだらしのない態度が一変していて怖かった。


「誰が婚期を逃したおばさんですって!」

「……やはりあなたの様な美しい女性なのに誰一人奪い合わないなんて、もうその男たちの目を疑いますね。あぁ、勿論俺はあなた様の美しさに気付いておりますのでどうか暴力だけはおやめてください」

「けど暴力ならね!」

「あ痛たたたたたッ!?出来立てのたんこぶ押さないでください!」

「これは治療よ!」

「見なさい、あの手のひら返しを。あれがアイツよ」

「……何も言えない」

「僕もだ」

「何も感じなくても良いわ」


 俺に対する治療を終え、俺らは本来の言うべきことを言う。

 たんこぶを力強く押された俺はピクピクと浜辺に打ち上げられた死にかけの魚みたいになっていた。あながち前世が魚なのも間違いないかもしれない。


「それともう寝なさい、変なことしてたら退学だからね」

「……変なこと?」

「そうね、例えば……。エリカ、何顔を染めてるのよ」

「ふえっ!?そそそそ、そんなことないですよ先生!!」

「やーいエリカのスケベ!」

「押すわよ!」

「まあ良いわ。ほら早く寝なさい、ガキはさっさと寝て大きくなるのよ。返事は」

「「「はい!」」」

「はいはい」


 何が大きくなるだ。俺はこの身長が丁度良いんだよ、デカすぎても戦場に行った時に的となる面積が増えるだけだ。これ以上身長が伸びないわけではない。

 けど暴力的な一面があるが生徒を思いやる気持ちがあるのはわかった。先生早く結婚出来ると良いですね、彼氏居ないけど。


 俺らはテントの中へと入って行く、中には寝袋などが敷き詰められている。俺はこんな粗末なテントよりも竜車の車内で寝たい。あっちの方が寝やすそうだし、何よりも装飾品を盗めるからな。


「僕は端で」

「俺右寄りの真ん中」

「左寄りの真ん中」

「なら私は端っこね」


 各々は自分の寝袋へと入って行く、内側のラベルを見ると軍用の寝袋だった。寝心地はまずまずという感じだ。それとエリカの隣は冗談言っただけで危害を加えられるので安心した。


「何だか寝袋に入ったら眠くなったわ……」

「寝とけ寝とけ」

「そうするわ」

「うん、おやすみエリカ」

「おやすみ」

「永遠と寝てろ」


 最初にエリカが寝る。彼女も疲れていたらしい、すぐに熟睡してしまった。


「タシターン、眠れなくても良いのか?」

「んっ、じゃあ寝る」

「おやすみタシターン」

「明日会おうじゃないかタシターンちゃん」

「んぅ、ちゃんは要らない……」


 タシターンも眠りに就いた。表情は硬いが、人のことを気に掛ける優しい娘であることがこの遠足でわかった。


「なあなあザック」

「何だザージュ」

「エリカとはどういう関係なんだ?」

「……エリカとねぇ。簡単に言うと面倒見が良い奴だ。飯とか分けてくれるし」

「そういうことじゃなくて、恋愛感情あるのかなーって」

「恋愛感情だと? 持ったことは無いな、だって昔からいるのに色気も一つも感じないし」

「ふーん、ホントかな」

「マジでそうだから、お前にはそういうの居るのか?」

「……実は僕、許嫁が居てね」

「顔はどうだ」

「僕のタイプかな」


 ニヘヘと笑みがこぼれるザージュ、よほどのタイプだったのだろう。


「スタイルはどうだ」

「スタイルはとても……。って何言わすんだよ!」

「フハハハハ、俺寝取るかも知れないぞ」

「そんなことしたら僕の家の警備隊とコネを使って君を潰す」

「嘘だよ。流石にお前にはやるか、何せともだ……。言わないでおこう」

「ともだ。って何だい。教えてくれよ」

「う、うるせえ! もう寝るから!」

「はいはい」


 寝袋で顔を隠しながら寝たふりをする。十五分後、ザージュの寝息が聞こえる。どうやら寝たらしい、噂が本当になる瞬間が見れたのは初めてだ。

 さてと、あらかじめ持ってきた本でも読むか。内容は普通の奥さんと本屋の主人が恋に落ちる話だ。本屋の主人と夫とのドロドロの関係を見て、愉悦に浸るのが気持ちいい。てか元凶が奥さんなのをお忘れなく。


 俺は本が最低でも見えるように暗視の魔法を掛けて、本を読む。




★☆★☆



 今は何時だろうか、さっきの本も読み終わって二冊目へと移行している。二冊目はくだらないホラー小説だ。内容に関してはテンプレばっかりだ。



 そんな本を読んでいると別のテントから悲鳴が上がった。


「きゃああああああああああ!!」


 どうしたんだろうか、男が夜這いでも仕掛けてきたのだろうか。それなら狭いテントの中でするな、せめて竜車の中でヤれよ。


 俺はテントから出て行く、外には魔物が幾つかのテントを襲撃している最中だった。魔物の種類は狼に似た動物型で、肉に深く噛みつくための鋭い牙や引き裂くための爪を持っているのが容易に想像出来る。


「おいおいマジかよ」


 その悲鳴を聞きつけて何人かの生徒が起きて外に出てきた。そして悲鳴は悲鳴を生みあげるかのように増えていく。俺のテントからもエリカたちが起きて外に出てきた。


「何ようるさいわね」

「魔物が襲ってんだよ、戦闘準備に入っとけ」

「はあっ!? 魔物ォ!?」

「……あの足跡はやっぱり」

「せ、先生は何処だよ」

「普通なら悲鳴を聞きつけて来るはずだけどな、まあ自分の身は自分で守れってことだ」


 魔物と戦うおうとする者もいるが、魔物に噛まれて唱えられる状況ではなかった。訓練もされていない奴らに苦痛に耐えながら唱えられる者は居ないだろう。

 そして、指示を送る生徒も居た。


「テントに入れ! 早く!」


 そう、ジュスティスだった。彼の指示に従い、殆どの生徒はテントへ戻ろうとする。

 ダメだ。こういう状況になったら籠ったら殺される。敵の位置を把握して避けるのが良いのだ。すぐに指示しないと俺以外全滅するぞ。


「テントに戻るな!戦え!石でも棒でも良いから手に持て!」

「ザック! 変なことを言うな! テントの方が安全だ!」

「何を言うこの正義漢(バカおとこ)が! 袋の鼠になるだけだ!」


 俺らのテントの後ろから魔物が飛び出してくる。牙を剥き出しながらタシターンに噛みつこうとする。


「そうはさせないから」


 警戒のため着けていた黒蜘蛛の手腕が彼女を守る盾を構成して魔物から防ぐ。ぶつかった魔物はキャインッと悲鳴を上げて後ろへ仰け反る。間一髪だったな。

 俺の言った通り、他のテントには魔物が集まって襲っていた。


「よっ!」


 鋼線を出して先ほど魔物に引っかけて、切断する。仲間を殺されて気が立ったのか俺めがけて魔物たちが襲ってくる。

 むしろ結構、俺の魔道具は多人数戦が得意でね。せめて昼飯前に来てくれれば肉が調達出来たが。


 指で魔物に鋼線を絡めて、一気に腕を振るう。頭を切断されるものから胴を切断された個体もいた。それでも絡めきれなかった魔物に対して蹴り等の攻撃を加える。俺は基本、ただケンカをするかの様な格闘方をするがそれでも当たれば痛い。


「さあ来い、早くしろよ。早く俺を殺してみせろ!」



 魔物たちは後ろへと退いて行く。それは俺の存在に怖気付いたかのようだった。

 所詮は魔物。人間に勝てると思ったのが間違いだったんだよ、バーカ。死亡者ゼロ名だと良いんだけど。



 一瞬の油断だった。俺の隙を付いて二匹の魔物がエリカの腕に噛みつき、森へと引っ張って行く。俺は瞬時に鋼線を絡めようとするが怖気付いた魔物たちが特攻して来た。


「ふざけんじゃねえぞ魔物風情が!! 俺の邪魔するなあああ!」

「ザック!!」


 一秒でも早く魔物たちにを殺すために、でたらめに鋼線を絡めて切断させる。時折、自分の首に鋼線が掛かりそうになるも二十秒程度で魔物を駆逐した。



 しかし、その時にはエリカの姿は見えなかった。


ぜひブクマお願いします

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