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クズ、散策する

「カレー、美味しかったわね」

「うん、美味しかった」

「まさかザックが料理したとは思えない美味さだったな」

「おいどういうことだよ、ザージュ」

「だって雑じゃん」

「ホントそれ!」

「おいエリカも便乗すんじゃねえ!」

 

 昼食後の自由時間で生徒たちは、遊んだり昼寝をしていたりする。俺らのグループはザージュが持ってきたボールでキャッチボールをしている最中だ。

 ザージュの奴が、ボールまで持ってくるとは流石に思いもしなかった。そのおかげで俺らもこうして遊ぶことが出来るだけどな。


「ザック、手際が良い」

「あいつが料理している姿は一度も見たこと無いから驚いちゃったわ」

「野菜とか水にぶち込んでスープってやりそうなのにな」

「おいおい、そういうのはちゃんと処理するタイプですぅ。エリカとは違って」

「それどういうことよ!」

「お前の部屋グチャグチャじゃん」

「そ、それは!」

「それはもクソもあるかよ、バカが」

「う、うるさい!」

「ぐぎゃッ!?」


 俺の煽りに負けてエリカは持っていたボールを俺の顔面めがけて投げつけた。本当は避けれたのかも知れないボールでも、当たらないとという使命感が(あだ)となった。俺の顔は羞恥心や怒りを感じて無いのに顔が真っ赤に染まっている。

 特に鼻が痛いです。あっ、これ骨折してるかも知れんな。


「ザック、大丈夫?」

「大丈夫じゃないと見えるのなら早く回復魔法ください」

「わかった」


 タシターンは俺の顔に手をかざし、回復魔法を唱え始めた。


「汝が我を愛するように、汝が風を愛すように。安らかな風(ヒール)


 彼女の手から温かみのある緑の光が降り注ぐ、痛みは徐々に感じなくなる。顔色の方もまあマシにはなっただろう。まったくエリカはこの柔らかいボールでこんなケガをさせたな、力強すぎだろ。

 ケガを直して貰ったので俺はゆっくり立ち上がる。



「そうだ。俺用事あるから」

「何だい、その用事とやらは」

「森に行こうと思ってさ」

「森?」

「そう、気になることがあるからな」


 俺は川に行ったときにずっとこちらを見ていた正体が気になって仕方がない。俺の勘だがあの森にはとんでもない化け物がいると想定している。だからこそ俺が行って、その化け物を倒して皆を危険から守るためだ。……本心はそいつから金目の物を剥ぐだけだが。



「ザック独りは心配ね、私たちも行くわ」

「えー、めんどくさいんで来なくて結構です」

「……確かに心配」

「これには僕も一理あるね」

「お、お前ら……!」


 あぁ、何て仲間思いの友達を持ったんだ俺は。まあ、金品とかは全部俺の物だけどな。ここは譲れないわ、悪いけど。


 こうして俺含め四人は森の中に入って行くことになった。




★☆★☆




 森の中は俺の家を思い出せされる様な薄暗さだ。しかも山道が敷かれてないため道に迷いやすいのでむやみに曲がったりはしないでおく。一人でも欠けるとソンノ先生直々のお叱りと捜索命令が出るので、度々(たびたび)確認を取る。これは別にエリカたちのの為ではない、俺自身が損をするからしているだけだ。


「森か、キツネとか出るのかな」

「出るが気配を感じると逃げたりするから見つけづらいんだよな」

「だけど足跡とかあるけど」

「足跡だと?」



 ザージュが指を指した地面には足跡が付けられていた。しかも様子を見るからには最近出来たものだとわかった。このことに対して俺も疑問が浮かんだ。


 おかしい、キツネにしては少し大きい。だとしたら魔物だな、そして狼系統のタイプだ。本来、狼はというのは群れで行動するのが基本である。だとしたら問題を起こして群れから追い出された狼だろう、衰弱して追い出された狼にしては足跡が深いからな。



「早く行きましょ、日が暮れちゃうわ」

「おうそうだな、行くか」

「今夜のご飯気になる」

「タシターンも僕と同じこと考えてたのか。やっぱりカレーだろ」

「またカレー食うのか、髪の毛カレー色に染めろよ」

「じゃあ君は髪の毛を腐った魚みたいな色に染めなよ」

「何だよ腐った魚色って!」

「私も賛成ね」

「……美顔と髪の毛が合わないけど」

「最高にマッチしてるから安心しなよ、そうだねカレーとジャガイモみたいに」


 カレーで例えるのやめろ、それって魚の顔にカツラを着けているとでも言いたいのかよ。ちなみにカレーに合う野菜はタマネギだと俺は思う、タマネギは名脇役だからな。



「カレーに魚はビックリした」

「タシターンちゃん、なかなか良い味出してただろ」

「……ちゃんは要らない」


 タシターンちゃん顔染めてて可愛い、偶にちょっかい掛けて和もう。相手がマジで嫌がってた時は流石にやめる。何故なら俺は紳士だからな。エリカにちょっかい掛けても鉄拳が飛ぶしなぁ……



「てか何処まで行くの?」

「そうだな、俺が魚を捕まえたとこ」

「あなたが珍しく魔法使ったとこね」

「そういうこと」

「ザックが魔法使ったとこ、僕は見たこと無いんだけど……」

「滅多に使わないのよね、多分コイツ他の人にやらせて自分が楽をしたいからよ」

「べ、別にそういうことじゃないですし!」

「ザック、冷や汗出てる」

「やっぱりね」

「ザックさぁ……」


 実を言うと俺が滅多に魔法を使わない理由が二つある、一つ目は神様のおかげで魔法が使えると信じたくないからということ。二つ目は俺の身体に悪影響(・・・)を及ぼすからである。これについては言いたくもないし思い出したくもない。


「此処だ、ほら川が見えるだろ」

「うおっ!? 水質が良い川だな!」

「……ザージュお前、王都育ちだろ」

「そうだけど」

「ほう、さてはお前。王都以外の街や場所には行ったことなかっただろ」



 俺の一言にザージュは一瞬黙り込んだ。しかし、すぐに口を開ける。そしてここからザージュと俺の戦いが始まった。


「何故だい?」

「まずはこの遠足に対する気持ちだ。街で育ったとしても一度はピクニックぐらいはするものだ」

「僕は皆と一緒に遊べるから楽しみにしてたんだ」

「それもあるだろう。だが、もう一つある」

「……もう一つとは?」

「竜車の開け方だ。特殊な鍵だから皆は開けるのに時間が掛かっていた。しかしお前だけ妙に手慣れていたもんな」

「それはたまたまだよ。よくあるじゃないか、適当にやって成功したのが」

「そうだな、じゃあ最後だ。どうしてそんなにお菓子(・・・)を持ってきた」

「遠足だから楽しもうと思ってね」

「いいや違う、ザージュは山の鉄則を知らないんだな」

「山の鉄則?」


 ザージュは首を傾げる、どうやら理解していないのだろう。俺はそれについて説明する。


「山には匂いに敏感な魔物が少なからずいる。そのお菓子に釣られて来るからな、基本は匂いの薄いやつや数を少なめに持ってくる。けどお前が持ってきたのは幾つであるか」

「……十個だ」

「そして菓子とは言え値段はまあまあ高い、そんなのを子供が十個も揃えられると思うか?そしてザージュ、君は王都出身の貴族(・・)だな」

「……」

「ザック!あなたって人は!」


 この答えによりザージュは口をつぐむ。一分後、俺のこの答えにザージュは答えた。



「参ったね、そうだよ。僕が噂の貴族だ」

「なっ!?」

「!?」

「なーに今のは冗談だから。……はあッ!?」

「えっ、ザック気付いてなかったの!?」

「おふざけで鎌にかけようとしただけだよ!!」

「僕の秘密を明かされたと思ったのに、まさか嘘だったなんて……」

「い、今狐につままれている感触よ……」

「う、うん」


 だけどザージュが貴族だということは薄々気付いていたのかも知れない。やっべ、俺すげえ。帰ったら違法カジノに行こう。


「そういや君はそういう人だったね」

「……帰ろうかザージュ。俺疲れた」

「それには賛成だね。まさかこういう結末になるとはね」

「そ、そうね……」

「そうしよう」



俺らは途方に暮れながら宿泊地に帰って行くことにした。


ぜひブクマお願いします。

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