クズ、到着する
太陽が真上に上っていることがわかった。もう昼頃だろう、俺らを乗せた竜車はようやく目的地に到着したみたいだ。俺ら生徒たちは竜車から降りる、皆は思い思いに体を伸ばしたりしている。
俺らが降りた場所としては広い草原であり、少し先には森が見えた。俺はとても懐かしいような気分になった。
「さあ、点呼するから早く並びなさい」
担任によってクラスメートは担任の元へと集まる。ソンノ先生の顔色は朝に比べれば良くなった気がする。竜車の中で寝てきたのであろう、やや寝癖が付いている。女性なんだから整えろよ、身なりさえ整えればマジで美人なんだから。あー勿体ない勿体ない。
「……何か変なこと思ったでしょ」
「いえ、何も!」
考えていることを読むとか怖すぎだろ、この人の前ではそういうのは控えるとしよう。俺は固く決意した。
「えー、点呼しなくても全員いるわね。んじゃあ炊事担当は飯の支度、他は荷台に乗せてあるテントを組み立てなさい」
「「「「「「はい!」」」」」」
各々の担当へ動き始める。俺は炊事担当なので担任の指示を待つことになる。
はあ、どうして俺が炊事なのだ。適当な物ぶち込んだゲテモノ料理が出てきても知らないぞ。
「んじゃあ炊事のお前らは、食材をもう一つの荷台から持ってきなさい」
「「「「「はい!」」」」」
「うぃ」
やる気の無い返事をして荷台へと向かう。荷台には沢山の籠があり、その籠の中には野菜や調味料が入っている。しかし、炊事には欠かせないある物が無いのに俺は気付いた。
「ソンノ先生、籠の中に肉無いです」
「はぁ? ザック、そんなことあるわけ無いでしょ」
「じゃあ見てくださいよ」
俺の言葉通りに先生は荷台の籠を確認する。ソンノ先生は籠をどかしたりせっせと動いている様子が見える。それは何かを察したかのようだった。
「肉が無いじゃない!!」
「ほら言った通り」
そう、肉が無かったのだ。
頑張って俺も探したんですよ、それなのに無いとか骨折り損のくたびれ儲けも良いとこだ。てか籠はあったのか、それとも何処かで落としたかだな。
「……どうしましようか」
「いやいや、俺に聞かれちゃ困ります」
「嫌よ!お肉無しじゃ生きていけないわ!」
「先生安心してください。俺なんかは見たことも無い雑草食っても生きていたんで」
俺は笑いながら答える。うん、しかも最後の晩餐だったけど今も生きてる。人間は何でも食っちまう生物だから案外大丈夫なのだよ。それと極島の地では根っこ食ってるらしい、その国の人と俺は気が合いそうな予感がする。
「何で雑草食ってんのに生きてるのよ!」
「気合です」
「……ちょっと疲れてきたわね。川が近くにあるから肉の代わりに魚でも釣りに行ってきて。そして食料を調達して」
「先生はどうするんですか?」
「私は焚き火の準備しなくちゃいけないの、あとザックなら食べれる食材知ってそう」
うわっ、生徒に食料調達させようとしてる。最低な人だな、けしからん。それと食べれる食材の基準が低くなるんですがそれは。
「あたしも魚釣ってこようか?」
声を掛けてきたのはミールィ・パコールノスチであった。ジュスティスと同じ班員だったはず、彼女も炊事担当なのだろう。
「良かったわね、お友達できて。ほら、行きなさい」
「はーい」
「わかりました!」
俺らは川へと向かう。にしてもソンノ先生、結構適当だな。それよりかは無責任といえば良いのかわからない、ミールィが来たので食えるか食えないかの判断基準が調べられるから良いとするか。……今気付いたけど釣り具ないわ、どうしよう。
★☆★☆
「見てよ、大きくて綺麗な川!」
「そうだな」
俺は不愛想な返事で答える。確かに綺麗で大きい川だが、俺にとっちゃあ川なんて見飽きたぐらい見てる。そこの川に生息している生き物を調べたこともあるし。それよりも川の近くにある森に行ってみたい、高級食材あるかも知れないし。
「さあ、お魚釣ろうか」
「何で」
「……あっ!?」
彼女はそのことに気付いたようだ。おいおい、気付くの遅せえよ。
……こうなったらしょうがない、魔法を使ってやるか。
俺は詠唱をぶつぶつと唱え始めた。足元には青色の魔法陣がうっすらと浮き出ていた。
「汝が我を助け、汝が水を愛するように。水よ吹きだせ水鉄砲」
「うわっ!?」
川の中から多数、水が力強く噴き出してくる。そしてその勢いに巻き込まれて魚が天へと舞い上がり地面に落下していく。普通の水鉄砲は勢いはそこまで強くはなく、三本が限界だった。しかし、俺の水鉄砲は威力が強く数も多いのだ。これに圧倒されてミールィは驚いた。
「スゴイよザック!こーんなに水鉄砲出せるなんてさ!」
「あんまし魔法は使いたくは無いが腹が減ったら仕方がないからな。さっさと魚でも拾っとけ」
「アイアイサー!」
元気よく返事をして持ってきた籠の中に魚を入れていく、地面に落下した時に魚が破裂しない様に手加減するのが大変だった。こういうのを才能というやつなのかはわからんが、俺には必要ないものだ。できれば普通に産まれたかった。
俺は恨めしそうに自分の手を見ていた。
「全部回収したよ!」
「おうそうか、なら戻るぞ。昼飯まだだし」
「なら走ろうよ!」
「はっ?」
俺は呆気にとられた。何故なら頑張って走ったても昼飯の準備はまだまだだし、ましては腹が減るだけだ。そして此処に来るまで結構体力使ったというのに彼女にはまだ体力があることにだ。
何この元気娘、例えると動物で表すと大型犬。何事も考えずに突っ走るようなちょっと頭の悪い系の犬だな、俺はそう確信した。
「サン、ニー、イチ。ドンッ!!」
「そして速いのかよ!?」
彼女は瞬く間に俺から離れていく。それが彼女の全力ダッシュだろう、そうじゃなかったら逆に怖い。これは俺の見解だが、脚力とかの筋肉が固くガッチリと付いてそう。……さて、俺は賢いのでゆっくりと行こう。
俺も宿泊地へと帰って行くのであった。
だが、俺は知っていた。森の中から何かがじっと俺らのことを見ていた奴が居るのことを。
念のために俺は黒蜘蛛の手腕を着けて帰ることにする。何事も起きなければ良いのだが、俺は悪い方で何かが起きる胸騒ぎがした。
「ハハハハッ! 面白いお友達がいっぱい来てるね、じゃあ夜にお出迎えしようか!」
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