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クズ、遅刻との戦い

 ドレス・クリーク魔法学校は二年制の学校である。普通の騎士養成学院や高等魔法学校よりも年月は短いがそのかわりに内容が濃く、実践的な魔法を学べる場である。服装は男子は黒いブレーザーに黒いズボン。女子は黒いプリッツスカートと黒一色で夏は暑そうだ。


 当然、学年が変われば制服にも変化がある。男子の場合は青いネクタイが一年生、赤いネクタイは二年生。女子はネクタイをリボンに変えただけである。教師が在学生の学年を確認するのに困らないようになっている。



 普通の高等魔法学校とドレス・クリーク魔法学校などが含まれる魔導師育成学校との違いは、規模だけではなく金銭や就職先までもが違う。例えば、高等魔法学校の場合は教育費は全て自己負担になっておるが就職先は決められてはいない。しかし、魔導師育成学校は金銭は掛からない分就職先は軍しか決められないのだ。


 今回の魔法使い一斉徴収令には全国の魔法使いが魔導師育成学校に押し寄せ、落第者が全体の六割いたために臨時として高等魔法学校を軍直属の魔導師育成学校に変えたらしい。何故なら国のために尽くさない者は非国民と非難を浴びるからだ。だが、負担や三年制は変えない方針らしいが彼らには頑張ってほしい。



 そして今日が、ドレス・クリーク魔法学校の入学式なのだ。にしても受かった次の日に入学式を始めるなんて早すぎると思う。それとは関係無いがエリカと会っていない、食堂でも見かけていないのですれ違ったのだろうか。……俺にとってどうでも良いが。



「さあ、どれがジョーカーかな?」

「決まってるだろ、この右だ」

「ハズレ~!残念でした!」

「イカサマしただろ、ザージュ! 俺は知ってんだぞ、返せ俺のチョコ!」

「君の運が悪いのがいけないんだ」


 隣の部屋のサージュ・パルトネールとの仲は一緒にゲームや談笑をして一夜を共に過ごした。彼の歴史の話は俺の興味を撫でるものであり、サージュにとって俺の話す動物や薬草などの話が面白かったらしい。こうして俺らは仲を深め合ったのだった。



『これより、入学式を始めるので生徒の一同は体育館に集まってください』


部屋に備え付けられているスピーカーから徴収するアナウンスが流れる。



「ザック、行こうよ」

「冗談はよしてくれ、人が道に溢れているだろうが。もう少し話し合おうぜ」

「そうだね、ゆっくり行こうか」


俺らは談笑を続けるのであった。




☆★☆★




「やべえ、遅刻だ!」

「おいおい、どうしてくれんだよ!」


 俺らは気付いたら入学式が始まる時刻に迫っており、俺らは急いで体育館に向かっている最中だ。しかし、体育館は寮とは反対のほうに建てられていて校舎を遠回りしないと着けないのだ。最短距離で行くとなるとその校舎を突っ切るしかない。さしずめ時間も迫っているため遠回りする暇もない、俺は黒蜘蛛の手腕を着用しザージュに言う。


「ザージュ、この校舎を突っ切るぞ!」

「どうやってだよ!」

「俺から離すんじゃねえぞ!」

「ちょっ!? うわあああああああ!!」


 ザックは魔力を出して鋼線を出す。それを校舎に絡ませて一気に両腕を引く、この武器にはある程度の筋力補正が掛けられているので二人分の体重なら引っ張ることができる。鋼線は勢いよく俺らを校舎の屋根へと飛び乗る。ザージュは悲鳴を上げていたが気絶には至らなかった。

 昔、エリカにこれをしたら気絶してしまったので心配だったが安心した。


「それでさザック」

「どうした?」

「どうやって降りる(・・・)の?」

「……何とかしようかな」

「その何とかって何さ!?」

「舌噛むんじゃねえぞ!」

「うぎゃああああああ!!」


 鋼線を屋根に掛けて一気に飛び降りる。ザージュの悲鳴が耳に響くが鋼線を操作して落下時の衝撃を減らそうと手を動かす。重力には逆らえずに俺らは地面に着地した。

 下手な受け身をするよりかは安全だった。そのおかげで体育館が目の前に見える。



「僕怖かったよ!」

「そうか、貴重な体験だな。ほら、走るぞ!」

「お、置いてかないでくれよ!」



 入学式が始まるギリギリで入ることが出来た。中には新入生と在学生。それとエリカが居た。


「遅かったじゃない!」

「すまない、雑談に花が咲いた」

「あー、ザック絶対に道が混んでるから待とうとしたわね」


(おっしゃ)る通りでございます。行動パターン読んでくるとか恐ろしすぎるだろ。



「ねえねえ、彼女は君の恋人かい?」

「こ、恋人!?」

「ハハハハハッ!!」


エリカは顔を紅く染め、不思議な声のトーンを上げる。流石の俺もこれには笑うが、変な語弊(ごかい)をされると面倒なので弁解することにした。


「違う、断じて違うぞ。ただの幼馴染だ」

「ふーん、そうだ申し遅れたけど僕はザージュ・パルトネールさ。ザージュと呼んでくれ」

「よろしくね、ザージュ」

「こちらこそ」


 辺りを見回すと教師に注意されている生徒がおり、栗色の髪で中々豊満な胸をした女子だ。もし俺が校舎を超えなかったらと思うと冷や汗を掻いた。にしても豊満な胸に髪は栗毛、顔は絶対可愛いはずだ。後でザージュも誘ってナンパでもしよう。



 暫くすると体育館は教師により静寂に包まれる。それは同時に入学式の始まりも意味した。


ぜひブクマお願いします。

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